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コラム

ウェルビーイングを考えるなら心理的安全性を高めて本音で話せる環境を、従業員同士の信頼関係も大切に

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 企業が向き合う新たなテーマである「ウェルビーイング」。従業員のやりがいや達成感、満足感を得られるようにし、企業には従業員が「良好で満たされた状態」になるような施策を打ち出すことが求められています。
 では、どうすれば「良好で満たされた状態」になるのでしょうか。このとき考えるべき点は次の5つです。
図1:ウェルビーイングの5領域

図1:ウェルビーイングの5領域

ポジティブ感情…嬉しい、面白い、楽しい、感動、感激、感謝、希望など
物事への積極的な関わり…時間を忘れて何かに積極的に関わる
他者との良い関係…援助を受ける、与える
人生の意味や意義の自覚…自分は何のために生きているのか、自分ともっと大きなものとの関係を意識する
達成…何かを達成する
 ウェルビーイングを前提とした従業員向けの施策を検討するなら、この5つを見失わないことが大切です。従業員が主体的に動こうとする姿勢や気持ちを育むようにします。多くの企業で今後、具体的な施策の模索が進むことでしょう。
 このとき、施策を支える土台となるのが「従業員同士の信頼関係」です。希薄な信頼関係では、これら5つは成し得ません。信頼関係があれば、周囲を気にせず意見を言えるし、積極的な姿勢で仕事に取り組めるようになります。
 信頼関係の大切さを感じたエピソードがあります。私が代表を務める会社ではインターンシップを実施し、就業体験の場を学生に提供しています。インターンシップに参加した5人の学生と私が話していたときのことです。「何か聞きたいことはありますか?」と私が問いかけると、5人とも黙り込んでしまうのです。しかし、学生と1対1で話すと、これまでとうってかわって話すし、いろいろ聞いてくるんです。
 「自分だけ発言して突出すると、あとで炎上しそうな気がして…」。1人の学生がボソッとこんな本音をこぼしました。最近の若い世代は、SNSに代表されるネット世代。大勢の中では自分を出さないし自身の意見を言いたくないという心理が働いているようです。こうした傾向が年々強くなっているのだと感じました。
 一方、別の2人の学生と私が話したとき、2人ともよく話してくれたことがありました。なぜ、炎上しそうと恐れないのか。2人の間には信頼関係があったわけです。自身の意見を言っても理解してくれる、自身の意見を叩かないと分かっているから、相手に遠慮せず話せたのでしょう。心理的安全性が高い、つまり、集団の中で自分の思いや考えを躊躇せず、安心して言える雰囲気が醸成されていたのです。
 集団でも自分の考えを躊躇わず言える環境がなければ、従業員は「良好で満たされた状態」にはなりません。しかし従業員同士の信頼関係は、企業が仲介すれば構築できるわけではありません。企業にできることと言えば、心理的安全性を高められるオフィスレイアウトや制度づくりなどにとどまるかもしれません。とはいえ例えば、従来の定例会議や打ち合わせのやり方を見直し、密なコミュニケーションを図るための議案づくりや発言機会創出に務めるのも一案です。従業員が自分の意見を言う場を用意することも有効でしょう。
 従業員が「こんな仕事をしたい」「こんな風に事業を成長させたい」「こんな活動を通じて社会貢献したい」などと自発的に考え、行動する機会を創出することも必要です。つまり、上司から「この仕事をやっておいて」と、言われて取り組む仕事にはやりがいも満足感もありません。主体的かつ積極的に取り組む仕事こそ、前向きになれるのです。こうした仕事を繰り返すようになれば、やりがいや満足感はもとより、大きな自信となるはずです。会社の目標と従業員の成長目標を紐づけさえすれば、従業員が仕事を通じて成長することが企業の業績向上にもつながるのです。
 企業の経営者には、従業員の発言やアイデアを許容する姿勢も求められるでしょう。「まずはチャレンジしてみよう。ダメなら他を考えよう」といった、従業員の挑戦を後押しする方針を打ち出すべきです。もっとも、どんなアイデアも許容すべきではありません。ダメならダメ、難しければ難しいと、理由を添えて指摘することも必要です。何でも良いと褒めたたえるだけでは良好な関係を築けません。これは従業員同士でも同様です。自分の発言に対して周囲から何か言われたくないからといって、周囲の意見を受け入れるだけでは本当の信頼は生まれません。
 本音で話し合えるかどうか――。従業員が「良好で満たされた状態」になるには、企業は本音でコミュニケーションを図る素地を少しずつ築き上げるべきです。その結果、「私が取り組んだ」から「私たちが取り組んだ」というチームワークにつながり、大勢が関わる仕事をやり遂げることで、従業員一人ひとりはこれまでにない達成感や喜びを得られるようになるのです。
筆者プロフィール

筆者プロフィール

鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。 デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任
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