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インタビュー

「全員で育てる組織」をつくる──Co-CEO辰巳が語る、若手が挑戦できる会社の条件

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「企業は風土がつくる」と言われるように、現在、企業風土への注目が高まっています。「企業風土の礎」では、経営者と社員、両者の視点で企業風土についてお話を伺います。第2回は、「店舗経営を支える、世界的なインフラを創る」をミッションに掲げ、店舗DXをリードする複数のプロダクトを開発・提供する株式会社カンリーです。メインプロダクトである店舗アカウントの一括管理・分析SaaS「カンリー店舗集客」は、リリースから5年で11万店舗に導入され、集客支援・MEO対策支援で国内シェアNo.1を獲得しています。カンリーの急成長を支える源泉とは何か。代表取締役Co-CEOの辰巳衛氏(※)にお話を伺いました。
※カンリーは共同代表制で経営を行っていますが、今回のインタビューは代表して辰巳氏にご対応いただきました。

1. 「自分で未来を切り拓く人が活躍できる」──カンリーの歩みと変化

──改めて、辰巳さんご自身のこれまでのキャリアを教えてください。

新卒では総合商社に入り、M&Aや事業投資に関わっていました。現地の空港や鉄道など、スケールの大きなインフラ案件にも携わりましたが、もっと手触り感のある価値を届けたいと思うようになって、創業を決意しました。

共同代表の秋山とは、社会人2年目にルームシェアしていた仲です。そこで日常的にビジネスや社会課題について語り合っていたのが、起業のきっかけになりました。

──カンリーではどんなプロダクトを展開しているのですか?

主力は、複数の集客媒体を一括で管理できる「カンリー店舗集客」というSaaSプロダクトです。現在は全国11万店舗以上で導入いただいていて、店舗の集客と情報発信をDXで支えるインフラを目指しています。

──創業当初から現在まで、どのような変化を感じていますか?

一番の変化は、仲間が増えたことですね。創業期は本当に3人とかの世界だったのが、今では多くのメンバーが共に挑戦してくれている。仲間がいることでできることも増えたし、価値も拡張されたと感じています。

代表取締役 Co-CEO 辰巳衛氏

2. チームで動ける会社をつくる──“バリューがすべての起点”という考え方

──貴社では「バリューがすべての起点」と伺いましたが、それはどういう意味ですか?

僕らの組織づくりの根幹にあるのは5つのバリューです。「お客様の理想から入れ」「まずやってみろ」「圧倒的当事者意識」「利他主義でいこう」「正直であれ」。この5つは、僕たち自身が“どういうチームでありたいか”を言語化したものであり、採用・評価・日々のコミュニケーションにまで浸透させています。

──バリューを文化として浸透させるために、工夫をしていることはありますか?

Slackのスタンプや会議室名など、日々のあらゆる場面で自然と目にする仕掛けを入れています。また、毎週金曜に実施している「WINSESSION(ウィンセッション)」で、バリューに基づいた行動や成果をみんなで共有・称賛する文化も醸成しています。

──実際に、バリューが浸透していると感じる場面にはどんなものがありますか?

日々の1on1で「この判断は“お客様の理想から入れ”を意識した結果です」と話が出たり、全社ミーティングで誰かの行動に対して「正直であれ」を体現していたと称賛されたり。そうした日常の中にバリューが生きていると感じます。

──それによって、組織としてどんなメリットが生まれていますか?

迷ったときに立ち返れる“共通の判断軸”があるのはすごく大きいですね。議論で意見が割れても「それって“お客様の理想から入れてる?”」と問えるだけで、前向きな結論が出やすくなります。


3. 「評価は“結果”より“意志”に宿る」──挑戦する人を称賛する仕組み

──評価において、バリュー体現はどう結びついていますか?

僕らは「アウトカムファースト」を掲げていますが、それは「結果がすべて」という意味ではありません。結果だけを見るのではなく、“どういう意志で、どういう思考をして、どう挑んだか”という部分を大事にしたい。バリューは、”そのプロセスをどう設計したか”を見るためのフレームでもあるんです。

──挑戦が評価されることで、組織にはどんな影響が出ていますか?

挑戦する人が損をしない環境が整っていることで、手を挙げる文化が育っていると思ってます。「やってみたい」「任せてほしい」という声が自然と出てくる組織は、やっぱり強いですから。

──挑戦を称賛するための工夫はありますか?

1つは「称賛を全員で共有する」ことです。WINSESSION(ウィンセッション)では、推薦理由をしっかり書いて投票します。「なぜその人が素晴らしかったのか?」を言葉にすることで、称賛が単なる拍手で終わらず、次の挑戦、他の社員の挑戦の後押しになると思ってます。

もう1つは「言葉で称賛する」文化です。Slack上でのスタンプやメンションはもちろん、1on1でも「それすごくいい判断だったね」とフィードバックすることで、自信につながっていく。こうして成長の実感を持てることで、また次の挑戦をしたくなる気がしています。

──失敗した場合はどう扱われるのでしょうか?

たとえ失敗したとしても、バリューに基づいた行動であれば、正しく評価されるべきだと思っています。重要なのは、失敗から何を学んだか。そして、それをどう次に活かすか。こういう姿勢こそが評価されるべきだと考えています。

代表取締役 Co-CEO 辰巳衛氏

4. 若手の抜擢は“余白”をつくることから始まる

──若手メンバーに任せる判断は、どのように行っていますか?

若手に大きな裁量を持たせるには、“余白”をつくることが大事だと思っています。たとえば現在、カスタマーサクセスの部長である藤林は、もともと新卒でカンリーに入り、最初はカスタマーサポートを担当していました。そこから「やりたい」と手を挙げて挑戦し続けることで、今ではチームを率いる立場になっています。

──任せる際に意識していることはありますか?

僕たちは「スキルがあるから任せる」のではなく、「意志があるから任せる」という考え方です。最初から完璧にできる人はいない。でも、やり切る覚悟がある人には、失敗も含めて経験を任せていくべきだと思っています。

──リーダーに必要なのはスキルより意志、ということですか?

そうですね。僕らは「若手=未熟」だとは思っていません。役職は「意志を持って動き続ける人」についてくるものだと考えているからです。経験が浅くても、意志と覚悟があれば、十分にチームを率いることはできます。

──若手抜擢に対する周囲の反応はどうでしたか?

最初は驚かれました。でも、本人のがんばりや実績により自然と信頼が集まり、周囲のメンバーも次々に挑戦してくれるようになって。年齢や経歴に関係なく、実力で評価される環境があると、周囲の意識も変わっていくんだなと、逆に驚かされました。


5. 「現場が主役」の採用──一緒に働きたい人を、現場で決める

──採用における現場メンバーの関与について教えてください。

カンリーでは、採用を現場主導で進めています。なぜなら、「一緒に働きたいと思えるか」を判断するのは、現場が一番だと思っているからです。実際の面接でも、現場メンバーが最終的な意思決定を担うケースが多いです。

──経営陣が最終判断をしないのはなぜですか?

現場が主役であるべきだからです。僕ら経営陣が「この人は優秀だ」と言っても、現場との相性が合わなければ活躍できません。逆に、スキルが多少未完成でも、現場が「この人と働きたい」と思えるなら、活躍の余地は大きい。だから、最終意思決定も現場に委ねています。

──辰巳さん自身は、カルチャーフィットをどう見極めていますか?

カジュアル面談でざっくばらんに話すようにしています。スキルや経歴も大事ですが、価値観がずれていると長く一緒に働けない。バリューに共感できるか、チームで前向きに動けるか。そうした点を対話の中でじっくり見ています。

──採用の成功・失敗をどう評価していますか?

1年後に「この人がいてくれてよかった」と現場から声があがっていれば、成功なのかなと。単に入社してもらうことがゴールではなく、入社後に活躍している状態が採用の“成果”だと思っています。


6. 「変化を受け入れる力」が成長を加速させる

──カンリーでは、どんな人が活躍していますか?

最初から完璧な人はいません。でも、カンリーに入る人たちはみんな“伸びしろ”を持っています。共通しているのは、変化を恐れず、素直に学ぶ姿勢ですね。環境や役割が変わっても、前向きに吸収し続けられる人は、驚くほど早く成長します。

──ポテンシャル採用に対する考え方は?

むしろポテンシャルしか見ていない、と言ってもいいかもしれません(笑)。何ができるかより、どう考え、どう行動するか。成長角度と意志のある人は、いくらでも伸びる。経験やスキルは後からいくらでも積めるので、採用段階ではそこにフォーカスしています。

──新卒でも責任ある仕事を任せる理由は?

挑戦の中にしか本当の学びはないからです。若いうちに裁量のある仕事を経験することで、成功も失敗も全部、自分の血肉になる。それが圧倒的な成長スピードにつながっていくと思っています。


7. 経営の意思決定にもAIを活用──スピードと解像度を高める武器

──カンリーではAI活用も進めていると伺いました。

はい、社内の各所でAIを積極的に取り入れています。特に経営意思決定においては、情報の整理・分析や議論のたたき台づくりに活用することで、意思決定のスピードと解像度が格段に上がりました。

──具体的にはどのように使っているのですか?

一例ですが、資料作成時にChatGPTを使って初稿を生成したり、複数の事業案を比較するフレームをAIに整理してもらったり。人間の視点では気づかないパターンや論点を出してくれるのが、すごく有益ですね。

──社内での活用を推進する際の工夫は?

まずは自分たちが「使い倒す」ことが大事だと思っています。口だけじゃなく、実際にAIを使って価値を出している人がいると、周りも興味を持つんですよね。あと、勉強会やSlackチャンネルを通じてノウハウをシェアする文化も根付いてきました。

──AIと人の役割分担についてどう考えていますか?

AIはあくまで“加速装置”だと思っています。0→1の発想や価値観をつくるのは人間で、その後の情報整理や最適化はAIの領域。互いの強みを活かしていくことが、これからの働き方だと思います。


8. 「カンリーらしさ」とは何か──全員がバリューを体現する組織に

──「カンリーらしさ」とは、どういうものだと捉えていますか?

一言で言うと、「自分で考え、動き、仲間と高め合える人たちが集まっている組織」です。カンリーのメンバーは、誰かの指示を待つのではなく、自ら問いを立てて動き出す人が多い。そして、成果を自分だけのものにせず、チーム全体の成功として捉える。そんなスタンスが“らしさ”につながっていると感じます。

──バリューとはどう結びついていますか?

まさにバリューの体現が「らしさ」そのものです。「まずやってみろ」で行動を起こし、「正直であれ」で率直に向き合い、「利他主義でいこう」で仲間を思いやる。個々のバリューが行動に浸透しているからこそ、組織としての一体感があると思っています。

──バリューを浸透させる中で、難しさを感じる瞬間はありますか?

あります。特に新しく入ったメンバーにとっては「言葉だけでなく、実際にどう行動すればよいか」が分かりにくいこともある。だからこそ、日々の対話やフィードバックを通じて、具体例を交えてすり合わせていくことが重要だと思っています。

──メンバーが“カンリーらしく”育っていくのを感じる瞬間は?

日々のSlackや1on1で、「”お客様の理想から入れ”で考えると、明日までになんとかしたい」など、自分からバリューを引き合いに出してくれる瞬間ですね。言われて動くのではなく、自分の判断基準として自然に使っている。そのとき「ああ、この人はもうカンリーの一員なんだな」と感じます。


9. 最後に──若手にとって“いい会社”とは何か?

──今の若手にとって、本当に“いい会社”とは何だと思いますか?

「自己決定できる環境があるかどうか」がすごく大事だと思っています。何をやるか、どう成長するかを自分で選べる余白があること。そこに自分の意志で飛び込めるかが、働くうえでの充実度を決めると思うんです。

──カンリーはそうした環境になっていますか?

僕自身がそれをつくろうとしてきたし、今は多くのメンバーがそれを体現してくれていると思います。だからこそ、新しく入ってくる人にも「自分の未来を自分で選べる場所なんだ」と感じてほしい。正解がないからこそ、自分の手でつくっていける余地があり、それを楽しんでくれたらいいなと思ってます。

──これから挑戦したい若手へのメッセージをお願いします。

完璧じゃなくていいんです。大事なのは「自分でやってみたい」という気持ち。挑戦の先にしか、成長も充実もありません。そういう“やってみたい”を応援できるチームでありたいです。

代表取締役 Co-CEO 辰巳衛氏

株式会社カンリー
https://biz.can-ly.com/

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