微細藻類ユーグレナ(和名:ミドリムシ)を活用した食品や化粧品、バイオ燃料などの事業を展開する株式会社ユーグレナ。創業者が大学時代に訪れたバングラデシュでの経験を原点に、「ミドリムシで世界を変える」という志を持ち、事業を成長させてきました。なぜ、売上1,000億円という規模を目指すのか。その先に、どのような未来を描いているのか。日本オムニチャネル協会のフェローを務める同社代表取締役社長の出雲充氏に、協会会長の鈴木康弘が、創業の原点から事業成長を支えた挑戦、そして次世代への思いまでを聞きました。
「バングラデシュの子どもたちを救いたい」大学1年生の夏に生まれた志
鈴木: 出雲さんのこれまでの歩みについてお聞かせください。ミドリムシとの出会いには、どのようなきっかけがあったのでしょうか。
出雲: 僕は多摩ニュータウンのごく普通の家庭で育ちました。父はシステムエンジニア、母は専業主婦で、ミドリムシとはまったく縁のない生活でした。転機になったのは大学1年生の夏休みです。それまで海外に行ったことがなく、大学に入ったらパスポートを作って海外に行くことが夢でした。高校生の頃から国連で働きたいと思っていたので、まずは途上国を見ておこうと、初めての渡航先にバングラデシュを選びました。そこで栄養失調に苦しむ子どもたちを目の当たりにし、自分も何かしなければならないと強く感じました。
鈴木: その経験が、栄養問題の解決に向けてミドリムシにたどり着くきっかけになったのですね。
出雲: そうです。ミドリムシは昆布やワカメと同じ藻の仲間で、光合成をする一方、自ら動くという特徴も持っています。ビタミンやミネラル、アミノ酸など多くの栄養素を含み、食料として大きな可能性があります。ただ、栄養が豊富だからこそ、培養中に雑菌などが繁殖しやすく、大量に育てることが非常に難しかったんです。東京大学でも長年研究されていましたが、食用に適した環境での大量培養は容易ではありませんでした。それでも、バングラデシュの子どもたちに栄養を届けたいという思いがあったので、挑戦することにしました。

創業の苦難を乗り越え、売上1,000億円への挑戦
鈴木: そのような思いで2005年にユーグレナ社を創業されましたが、当初はいかがでしたか。
出雲: 最初の3年間は本当に大変でした。事業が大きく変わる転機となったのは、2008年5月に伊藤忠商事が出資してくださったことです。販売を支援してくださり、さまざまな大企業とのつながりも生まれ、多くの方々にミドリムシを知っていただくことができました。
さまざまな企業がミドリムシの研究を自社で一から始めるのではなく、弊社と協業することで新しい事業を生み出そうと考えてくださいました。今でいうオープンイノベーションですね。本当に多くの方々に応援していただき、事業を成長させることができました。
鈴木: 現在は食品やサプリメントなどのヘルスケア事業に加え、バイオ燃料にも取り組んでいます。今後はどのような会社を目指しているのでしょうか。
出雲: 2025年12月期の連結売上高は約504億円となりました。さらに、マレーシアで進めているバイオ燃料事業などを通じて、将来的には売上1,000億円規模を目指したいと考えています。僕がベンチャー経営で最もこだわっているのは、売上規模です。もちろん利益も大切ですが、売上は誰かが価値を感じて、お金を払ってくださった結果です。だからこそ、僕は売上規模が社会に与えるインパクトの大きさにもつながると考えています。
大学発のバイオベンチャーが、1,000億円規模の事業をつくる。誰もやっていないことだからこそ、挑戦したいんです。 ミドリムシを使った食品で人々の健康に貢献し、バイオ燃料で地球環境にも貢献する。そうした取り組みを、社会に大きな影響を与えられる規模まで成長させたいですね。

「夢中になれるものを見つけてほしい」挑戦し続けることの大切さ
鈴木: 出雲さんは今もバングラデシュとの関わりを大切にされていますね。日本と比較して感じることはありますか。
出雲: バングラデシュの若者は本当に明るくて、努力家です。英語を勉強したり、新しい知識を身につけたり、自分が成長できることには何でも挑戦する。国全体にすごいエネルギーがあります。一方、日本は経済成長が鈍化し、若い人たちも少し元気がないように感じます。だからこそ、もっと挑戦してほしいと思っています。
鈴木: 私も日本には、異なる業界や価値観の人が交わる機会が必要だと感じています。日本オムニチャネル協会も、業界の垣根を越えて交流し、新しい発想やイノベーションを生み出す場にしたいという思いで活動しています。
出雲: そういう異業種の人たちが切磋琢磨できる場は大切ですよね。僕自身、これまで多くの方に助けていただきましたし、異なる分野の方から学ぶことも多いです。
鈴木: 最後に、これからの日本を担う若い世代へメッセージをお願いします。
出雲: 僕は、好きなことに熱中して研究したり、働いたりしている人には、AIにも、誰にも勝てないと思っています。自分にとってのミドリムシのような、夢中になれるものを見つけてほしいです。ただ、それは何もしないで待っているだけでは見つかりません。いろいろなことに挑戦して、一生懸命取り組んでみて、初めて自分に合うものが分かるんだと思います。僕自身、大学1年生でバングラデシュに行かなければ、ミドリムシに出会うこともありませんでした。だから若い人には、ぜひ自分が熱中できるものを探して、思い切り挑戦してほしいですね。
関連リンク
一般社団法人日本オムニチャネル協会
https://omniassociation.com/





















