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インタビュー

経営を動かし人を成長させる、DX時代の業務改革の核心【日本オラクル 渋谷由貴×デジタルシフトウェーブ 鈴木康弘 特別対談3】

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渋谷:経営にしっかりとインパクトをもたらすような取り組みだと考えています。売上を上げたり、コストを抑えたりといった効果を生み出すことも、1つの改革の形だと思いますね。さらに、人材の市場価値を高めていく取り組みも、改革の一環だと感じます。企業は従業員の成長なしには大きくなれませんし、従業員一人ひとりの効率や生産性を高めていくことも、これからの時代に欠かせない改革だと思います。

鈴木:AIの登場により、今後は人の働き方が大きく変わるはずです。単純作業はもちろんですが、これまで専門家しか携われなかった専門性の高い業務も、調べたり分析したりといった領域にAIが使われ始め、人の作業領域が浸食されていくのではと思いますね。AI時代で大切なのは、人の役割を再定義すること。これも改革を成し遂げるには重要な取り組みです。

渋谷:従業員を育てるために投資するのと同様に、デジタルにも継続して投資していくことは大切だと思います。ただ、闇雲に投資するのではなく、投資の成果をしっかりと見える形にすることが重要です。どれくらいのリターンが期待できるのかを明確に可視化し、経営層に説明できるようにしておくことが望ましいですね。もし可視化や説明が難しい場合は、その投資のタイミングや方法を再考する必要があるかもしれません。

例えば、これまで人が担当していた作業をデジタル化することで、その方の作業時間や人件費を、他の業務や新しい事業に振り向けられるようになります。こうしたリターンを事前に見積もっておくだけでも十分価値がありますね。投資額に対してどれだけの効果が見込めるかが明確になると、経営判断もしやすくなると思います。「ツールが必要」「デジタル化すべき」と提案するだけでは、経営層も適切に判断することは難しいでしょう。ですので、「なぜこのツールが必要か」と「どれだけの効果が期待できるか」をセットで伝えられるようにすることが、デジタル化を進めるうえで大切だと思います。

鈴木:システム投資は売上の1%、業種によっては2%とよく言われますよね。売上が10兆円の企業なら年間1000億円もシステムに投資できるわけです。しかし、こうした企業は稀で、中堅・中小企業の場合は数百万円から数千万円しかシステム投資できないケースが多いのではないでしょうか。もちろん数百万円さえ捻出するのは難しいという企業も多いはずです。こうした状況でもデジタルを駆使した改革を実現するための方策を考えなければなりません。コストを最小化してリターンを最大化するツール導入を考えることが今後はさらに求められるような気がしますね。

渋谷:コストとあわせて、スピードにも意識を向けることが大切だと思います。「時は金なり」という言葉があるように、時間が経てば経つほど機会ロスにつながり、目に見えない費用が膨らんでしまうことも考えられます。ツール導入を検討する際には、コストやリターンに加えて、どれくらいの期間で導入できるか、どれくらい早く効果が見込めるかといった時間軸もしっかり意識しておくことが重要だと思います。

不要な業務を「捨てる」英断こそが改革には不可欠

鈴木:業務改革を進める際に注意すべきは、「業務改善」にならないよう配慮することです。既存業務の延長線上にある業務改善は、業務改革とは異なります。業務改善は、部門や個人の視点で身近な課題を解決するアプローチであり、既存の延長線上にとどまります。例えば、請求書処理の時間を20%削減するといった取り組みは業務改善に過ぎません。これに対し、業務改革は「請求書業務そのものをなくす仕組みをつくる」「電子決済で全てを自動化する」といった、根本からビジネスを作り替える発想となります。「この取り組みは業務改革なのか業務改善なのか」を常に意識し、改革に向けて取り組むことが大切です。

渋谷:業務改善は、小さな成果を積み重ねるという意味で有効だと思います。ただ、近年の激しい競争環境の中では、改善の延長だけでは市場で勝ち残るのは難しいのではないかと感じます。業務改革とは、未来を見据えたビジネスモデルの再設計であり、こうした取り組みこそがDXの本質ではないかと思います。

鈴木さんは業務改革を推進するには何取り組むべきとお考えでしょうか。

鈴木:まず取り組むべきは、現在の業務を可視化することです。業務の流れをフロー図で示してガラス張りにします。形式的な図にとどまることなく、全社のすべての業務プロセスを俯瞰できるようにします。その上で、「この業務は価値を生み出している」、「この業務は時間がかかりすぎているので見直すべき」などを洗い出し、業務が必要か不要かを明らかにします。

渋谷:日本企業の中には、いまだに業務が「属人化」しているところが少なくないように感じます。特に中堅・中小企業では、長年勤めているベテラン社員の頭の中にしかノウハウがなく、「背中を見て覚えろ」といった文化が残っているケースも見受けられます。しかし、こうした状況では、担当者が退職した瞬間に業務が滞ってしまうこともあり得ます。だからこそ、まずは業務フローを整理し、社内で共通のプロセスを持つことが大切ではないかと思います。

鈴木:私が企業のコンサルティングに入る際も、最初のステップは必ず業務フローを描き出すことから着手しています。その際、担当者本人の視点だけでなく、関連部署や上司、部下の課題もヒアリングして書き込むようにしています。こうすることで、全社的にどの部分がボトルネックになっているかが一目で分かります。その上で課題を整理し、優先順位をつけてどの業務から見直すべきかを検討します。

渋谷:業務を自社だけで整理してしまうと、「この業務は必要か不要か」という判断がどうしても主観的になりがちだと思います。どの業務を残し、どの業務を見直すかを見極めるには、自社の従業員だけでなく、第三者の視点を取り入れることも大切ではないでしょうか。コンサルティング会社に相談するのはもちろん、他社の成功事例を参考にしたり、異なる業界や企業規模の取り組みを学ぶことも有効だと思います。

鈴木:これまで築き上げてきた業務を「捨てる」という決断は非常に難しいと思います。しかし「捨てる」を断行して新たに設計した業務が「改革」のあるべき姿なら、経営者はその未来を手に入れるためにも英断すべきです。「紙にハンコを押す業務を廃止して電子契約に切り替える」という例も、「捨てる」という決断なしには成し得ません。渋谷さんが指摘された通り、ツール導入やデジタル化によってどれだけの効果が見込めるのかを綿密に算出し、投資対効果の高い業務改革をすることが大切です。目的が不明瞭なままDXに取り組んでいる企業こそ「改革」という言葉と真剣に向き合い、覚悟を持って「改革」を成し遂げてほしいと思います。

【関連リンク】
日本オラクル株式会社 NetSuite事業統括
https://www.netsuite.co.jp/

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