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インタビュー

【デジタルで切り拓く企業の未来 vol.1】専門部署設置でDX推進を加速

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多くの企業がDXに舵を切るものの、ゴールへと順調に進むケースは必ずしも多くありません。どんな課題に直面し、どのように乗り越えようとしているのか。店舗を展開するシモジマとスギホールディングスの2社に、デジタル化に取り組む前の課題、具体的な解決策、今後のビジョンを聞きました。

顧客情報の一元化でオムニチャネルを加速、満足度を高めるサービス提供も視野に

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包装紙や紙袋、店舗用品などの卸売販売を展開するシモジマ。国内外に店舗を構えるほか、近年はEC事業に注力し、事業拡大を加速させています。そんな同社がデジタル化に踏み出した経緯と具体的な方策とは。シモジマ DX推進部オムニ推進課 課長の梶塚智司氏に話を聞きました。
写真:シモジマ DX推進部 オムニ推進課 課長 梶塚智司氏

写真:シモジマ DX推進部 オムニ推進課 課長 梶塚智司氏

――デジタル化に取り組む前の課題とは?

梶塚:店舗が保有する顧客情報と、営業部門やECの顧客情報が必ずしも連携していませんでした。これでは誰がいつ、どこでどんな商品を購入したのか、いくら使ったのかを正確に把握できません。顧客情報が事業部や組織ごとに分断しているため、店舗を頻繁に利用する優良顧客を営業部門に引き継ぐといったリレーションも不十分でした。基幹システムで顧客情報を管理するものの、1つの電話番号に複数の企業名、担当者名が紐づく状態で、データを使い倒すための管理・運用体制も課題でした。

――課題をデジタル化でどう解消した?

梶塚:新たにCRMを導入し、顧客情報の一元管理に踏み出しました。まずは、ECサイト「シモジマオンラインショップ」の利用者と、会員カード代わりになるアプリ利用者をCRMで管理し、利用者の購買履歴などを店舗・EC問わず把握できるようにしました。基幹システムが保有する顧客情報とも連携し、最終的には店舗、EC、営業部などを含むすべての顧客情報を完全に統合したいと考えます。これにより、顧客一人ひとりに最適な商品を提案したり、サービスを提供したりする、パーソナライズを前提とした販売体制を構築します。

 なお当社は2021年11月、中期経営計画の中でDX戦略を打ち出しています。2026年3月期までにDXを軸に事業の拡大を進める考えです。当社の強みである多種多様な取り扱い商品を、店舗やEC、営業などの最適なチャネルで提供できるようにしていきます。

――今後の予定、目指すべき姿は?

梶塚:オムニチャネルが加速したときに課題となるのが在庫管理です。各店舗の在庫や即日出荷可能な在庫などをリアルタイムに把握することが求められます。利用者の満足度を高めるためにも、今後はオムニチャネルを前提とした物流網を整備・拡充したいと考えます。

 経理や総務といった管理部門のデータ活用にも目を向けます。管理部門がデータドリブンな組織に移行することで、従業員の生産性や効率性を底上げできると考えます。そのためには管理部門の既存業務を見直すとともに、どんなデータをどう活用すべきか、データの可視化も含めて最適な運用体制を模索していきます。

 店舗やECを利用する顧客の満足度を高める取り組みにも注力します。これからはモノをただ売るだけでは顧客は満足しません。満足度を高めるためのサービスを提供し、CX(顧客体験価値)向上を進めます。店舗やECを利用し、商品を購入し、リピート客として定着する…。こうしたカスタマージャーニーを設計し、店舗やECだけでは満足しない顧客に新たな体験を提供できればと考えます。

そのためには、店舗スタッフなどの従業員が明るく楽しく仕事をできるような環境整備にも取り組むべきと考えます。こうした環境を醸成できれば、売上や利益といった数字は後から必ずついてくる。そう確信しています。

DX戦略本部主導で全社DXを推進、利用者のライフステージに応じたサービス提供まで視野に

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スギ薬局を中心に、調剤、健康相談などのさまざまな事業を展開するスギホールディングス。小売業界のDXが加速する中、どんな体制、どんなビジョンを掲げてDXを成功へと導こうとしているのか。スギホールディングス 取締役 DX戦略本部 本部長 森永和也氏に話を聞きました。
写真:スギホールディングス 取締役 DX戦略本部 本部...

写真:スギホールディングス 取締役 DX戦略本部 本部長 森永和也氏

――デジタル化に取り組む前の課題とは?

森永:当グループは中部エリアをはじめ、関東や関西、北陸エリアに約1500店舗のドラッグストアチェーンを展開します。薬局や訪問看護ステーションを運営するほか、保健指導や訪問調剤、買い物支援などの事業も手掛けます。これらの展開を加速させているため、DXという側面で見ると、店舗や業種ごとにデータが散在している状態でした。どこにどんなデータがあるのかすら不明瞭で、データを活用した施策の立案、実施、評価もままならない状況でした。新型コロナウイルス感染症のまん延を機に多くの小売業がDXへと舵を切り出しましたが、当グループはコロナ以前より、データ活用を含むデジタル施策が急務であると危機感を持っていました。

――課題をデジタル化でどう解消した?

森永:DX推進を加速させるため、2021年3月にDX戦略本部を立ち上げました。業務や物流などのシステムを管理する「システム・物流統括部」をDX戦略本部管轄とし、システム連携を前提としたDXを推進しやすい体制を構築しました。さらには「デジタルマーケティング」「物販DX」「ビューティ・ウェルネスDX」「医療・調剤DX推進」といった4組織を配下に置き、テーマや商材、業態に応じたDXを推進する体制を整備しました。

 DXは大胆な変革、チャレンジを伴います。そのためにはシステムを迅速に開発し、運用しながら改修するといったスピード感が欠かせません。その一方で、店舗運営を支える基幹システムとの連携も当然、想定しなければなりません。そこで、スピード感を持ちつつ基幹システムとの連携を事前に構想するため、基幹システムを管理する「システム・物流統括部」を本部内に統合することにしたのです。

 なお、社長室直下に「行政連携推進」「製・配・販連携推進」「医療連携開発」といった組織も用意。DX戦略本部はこれら組織とも密接に連携し、全社でDXを進められるような体制へと一新しました。

 販促やSNS活用、利用者向けの買い物体験、在宅医療の推進などのテーマでDXを推進します。例えばデータ活用の場合、2019年時点で全事業のデータを一元化する顧客統合データベースを構想。現在は必要なデータを一通り集約し、運用フェーズに入ります。ID-POSから各店の売上履歴を集約するほか、健康相談やカウンセリング記録なども収集し、プライベートDMPとして顧客に応じたサービスや情報発信を提供できるようにします。さらにはMAツールを使い、利用者やチャネル別に適切な情報を発信する体制も整備します。

 スマートフォンを使った新たな買い物体験の提供も目指します。店外ではスマートフォンを使って店舗の品揃えや価格、在庫を確認できるようにするほか、店内ではスマートフォンで買い物を済ませられる環境整備を進めます。店内にビーコンやカメラを設置し、来店者によるセルフスキャン、セルフチェックアウトで買い物を完結するまでの流れを実験し、新たな店舗像を打ち出せればと考えます。

――今後の予定、目指すべき姿は?

森永:DXで目指すのは、店舗業務の省力化です。店舗スタッフの作業が限りなく楽になる環境づくりを進めます。データやスマートフォンを使った施策はもちろん、店内での仕分け作業などを簡略化できるよう、物流も含めた改革を視野に入れます。

 顧客との関係強化も目指します。今後は「One to One」施策の重要性がますます高くなるでしょう。利用者一人ひとりのライフステージに合わせ、どんなサービスを提供すべきか、情報を発信すべきかを考え、LTV向上を前提とした施策を強化します。例えばシニア層なら健康サポート施策、若い世代ならアプリを使ったファン化施策といった具合に、当グループが提供するさまざまな価値を提供できる体制の構築を目指します。

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