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インタビュー

【特別対談:中川哲×鈴木康弘】テクノロジーの価値を最大限に引き出すデジタルアダプションプラットフォーム、「定着化」促すDXソリューション

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誰もが迷いやストレスなくデジタルシステムを使いこなせるようにする「WalkMe」。システムの利用定着を図ることが企業のDXを加速させられると強調します。その意図とは。WalkMe ディレクター ストラテジック エンタープライズ セールス 中川哲氏に思いを聞きました。(聞き手:DXマガジン総編集長 鈴木康弘)

誰でも迷わずシステムを使いこなせるように

鈴木:WalkMeの事業内容やミッションを教えていただけますか。

中川:当社は2011年にイスラエルで創業した会社で、社名でもある「WalkMe」というソリューションを開発、提供しています。これは、企業情報システムにガイダンスやナビゲーションを付与するもので、システムの操作が分からないといった人を想定したソリューションになります。「誰もが迷いやストレスなくデジタルシステムを使いこなせる世界を創ること」をミッションに掲げ、ITリテラシーのレベルに関わらず、誰でも迷わず操作できるシステム環境を構築し、最適な体験でソフトウエア(SaaS)を活用することに注力しています。

鈴木:ITシステムを使い倒すためのソリューション。ユニークな発想ですね。なぜ、こうしたソリューションを提供しようと思いついたのでしょうか。開発の経緯を教えてください。

中川:実は創業者が、母親に銀行のオンラインバンクのやり方を教えてほしいと何度も頼まれたのがきっかけです。電話越しに教えるには、自分も同じ画面を見て説明しなければなりません。しかし、時間をかけどもなかなか伝わらず、何度教えても次回にはまた同じことを教えてほしいと言われてしまう。こんな原体験がきっかけですね。オンラインバンクに限った話ではなく、デジタルを苦手にする人は、操作画面の導線から外れてしまうことがよくあります。今後、デジタルが普及したら、デジタルを使い倒すため「デジタルアダプション」は絶対必要になる。そんな思いで開発したのが「WalkMe」です。

鈴木:ガイダンスやナビゲーションを付与するとは、具体的にどんなイメージでしょうか。

中川:“カーナビ”をイメージしていただくと分かりやすいと思います。ドライバーはカーナビに目的地さえ登録すれば、知らない道でも指示通り進めば目的地に必ず着けますよね。この考え方を企業情報システムの世界に持ち込んだのが「WalkMe」です。

 システム画面で、「ここをクリックして」や「ここにデータを入れて」などのポップアップを表示するガイダンス機能を備えます。操作方法を説明するチュートリアル用のボタンを追加したり、入力すべきボタンや入力欄以外をグレーアウトして視認性をより高めたりといったことも可能です。

図1:ポップアップを入力先や入力内容をガイダンスする

図1:ポップアップを入力先や入力内容をガイダンスする

 入力した情報やデータが正しいかをチェックするエンゲージメント機能も特徴の1つです。ガイダンスの指示に従って登録したデータに誤りはないか、抜け漏れはないか、型や形式は指定通りのものかなどをチェックします。例えばCRMツールに社名を登録するとき、「株式会社」が前株か後株かを覚えていない。そんなときは正しい社名情報を調べられるWebサービスと「WalkMe」を連携することで、入力ミスを防げます。
図2:入力したデータが正しい形式かなどをチェックする

図2:入力したデータが正しい形式かなどをチェックする

 さらにユニークな使い方として、システムのUIをボットとの会話のみに限定し、ボットからの質問に答えた会話内容を「WalkMe」が識別してシステムに登録するといったこともできます。例えば「担当者名は」「日付は」「金額は」などの質問に答えさえすれば、「WalkMe」がCRMツールに案件管理に必要な情報を登録してくれるというわけです。

鈴木:なるほど。非常に興味深いソリューションですね。ここまで丁寧に操作方法を教えてくれれば、ITリテラシーに関係なく、絶対操作に迷わないでしょうね。ちなみに、システムのどの場所にポップアップを表示させるか、どのデータをチェックするかなどをユーザー側で自由に決められるのでしょうか。

中川:はい。「WalkMe」はユーザーが設定変更できるエディター機能を備えています。ポップアップを自在に設定できるほか、ポップアップの表示色やテキストの“トンマナ”を揃えるといったこともユーザー側で指定できます。エディター機能はノーコードで扱えるため、エンジニアでなくても使えるのが特徴です。

 加えて当社では、ユーザーがどこで操作につまずいているのか、どこで離脱したのかといった情報をAIで分析して、途中で離脱しそうな操作や場所を抽出し、そこを手厚くナビゲートするといったことにも取り組んでいます。ユーザーもダッシュボード画面でこうした情報を把握できるため、エディター機能でナビゲートの改善に取り組めます。

図3:ダッシュボードでWalkMeの利用状況を確認できる

図3:ダッシュボードでWalkMeの利用状況を確認できる

鈴木:「WalkMe」はどんなシステムにも取り付けられるのでしょうか。

中川:Webベースのシステムであれば使えます。主要なSaaSはもとより、Webブラウザを使ったオンプレミス型システムでも実装は可能です。「WalkMe」はWebブラウザに常駐し、HTMLコードから入力項目やボタンの場所や意味を理解し、ポップアップなどを表示させる仕組みとなっています。

鈴木:SaaSがアップデートしてボタンの位置などが大きく変更した場合、ポップアップを表示させる位置をすべて再配置しないといけないのでしょうか。

中川:すべて再配置する必要はありません。当社が用意するテストツールを使えば、位置を変更しなければならないポップアップを洗い出せます。従来のまま使えるもの、再配置すべきものに振り分けて設定し直すことが可能です。

 また、WebブラウザではなくOSに搭載可能な「WalkMe」の提供も開始しました。最大の特徴は、複数のシステムをシームレスに使えるようにできる点です。1つの業務を完了させるのに、複数のシステムを横断して行うケースは珍しくないと思います。その場合、各システムがサイロ化されていてシステムドリブンなので、人がシステムに合わせに行かないといけない状態です。「WalkMe」上であれば、自社がイニシアティブを持って業務ドリブンへとデザインすることができるようになります。「WalkMe」が作業手順に従って必要なシステムを自動で呼び出してくれるので、ユーザーは「次に何のシステムに何を入力すればいいのか…」などと迷わずに作業を終えることが可能です。

鈴木:せっかく導入したシステムを使いこなせず、システムを導入する側と利用する側の「期待」と「現実」のギャップに苦しんでいる企業って少なくないですよね。こうした企業に最適なソリューションですね。

中川:従業員のITリテラシーの幅が広い企業に向いていると思います。また、自社の関係会社に同じシステムを使ってもらいたいというケースにも向いています。例えば保険代理店や自動車ディーラーなどです。海外では、離職率の高い業界、業種で使われるケースも多いですね。

鈴木:従業員数が多い大企業はもちろんですが、ITのサポートに手が回らない中小企業でも活用できるソリューションかもしれませんね。

中川:確かに企業規模や業種を問わないソリューションだと思います。大半の業務でシステムが使われるようになった今、従業員のITリテラシー向上が求められるようになっています。しかし、従業員教育やシステムの導入研修、マニュアル制作まで十分手が回らないという声は多い。こうした手間を省けるようになるのが「WalkMe」のメリットだと考えています。

 「WalkMe」は現在、グローバルで2000社が導入しています。国内に限ると、日本法人を設立して3年目ですが、70社ほどの企業が導入しています。

next〈 2 / 2 〉:DXの成功は、システムの利用「定着化」がカギ

DXの成功は、システムの利用「定着化」がカギ

鈴木:最近はDXを進める企業も徐々にだが増えていると感じます。しかし、「ITを導入すればいい」と考える経営者は今なおいます。DXで大切なのは、導入したITを使ってどう変革を成し遂げるか。DXの「X」、つまり変革に目を向ける経営者が少ないのが実状です。

中川:同感です。顧客と話す中で、ITを導入したことで変革を成し得たと勘違いする人は多いですね。ITは変革を起こすための手段にすぎません。変革を起こすのは人です。であるなら、人がITを使って変革することにどれだけ手厚く寄り添えるか。ここに目を向けるべきだと当社は考えます。人をサポートすることでDXを加速させられる。「WalkMe」は、企業のDX推進を支援するキーソリューションだと捉えています。

鈴木:中川さんのご指摘は非常に刺さりますね。私も常々、DXの成功を左右するのは「人」であると言い続けています。変革を達成するには従業員がITを使い倒せるようになる土壌が必要で、この土壌を地道に耕し続けているのが御社のような気がします。

中川:ありがとうございます。「WalkMe」は企業のシステムにおいて、「Digital Adoption Platform(デジタルアダプションプラットフォーム)」というレイヤーに位置づくものだと考えます。つまり、デジタルを「定着」させるための基盤です。これまでの企業情報システムは機能ばかり重視し、ユーザーである従業員の使い勝手や操作性をあまり重視してこなかった。最近になってようやくUIやUXの必要性が叫ばれるようになりましたが、それでもカスタマイズによってUIをテコ入れする程度です。これでは全従業員のシステム「定着」は不十分です。

 そこで当社は、システム定着化の部分を分離させた「Digital Adoption Platform」を導入すべきと提唱し続けています。これにより企業は、デジタルを前提とした業務が可能になり、効率化や生産性を高められるようになります。デジタルを前提とした組織構築も可能になります。この体制こそ、DXを加速させるためには必要なのではないでしょうか。

鈴木:企業は今後、DXで変革し続けるなら定着も図り続けなければなりません。このとき、御社の「Digital Adoption Platform」の考え方は非常に馴染むと思いますね。今以上にその重要性が増してくると感じます。

EX向上に取り組む企業に「WalkMe」の価値を訴求

鈴木:「WalkMe」をどんな企業に使ってもらいたいなど、希望やビジョンはありますか。

中川:「WalkMe」はよくも悪くも利用者の質を問うサービスなのかなと感じています。例えば「WalkMe」を導入して満足する経営者には、「WalkMe」の価値は伝わってないでしょう。導入したかどうかではなく、現場に浸透し、具体的な効果を感じ取った経営者こそ価値が分かるものだと考えます。

 最近の言葉で言えば「EX」(Employee Experience)、つまり従業員体験に目を向け、取り組み出している企業にこそ「WalkMe」を使っていただきたいですね。従業員の満足度をどう高めるか。初めて触るシステムでも簡単に業務の目的に応じた操作を行うことが可能です。どのようにEXが向上していくのかを時系列で計測することもできるので、EXに真剣に向き合う経営者には「WalkMe」の価値がきっと伝わるでしょう。

鈴木:「EX」は最近よく聞きますね。しかし、その取り組みはまさにこれからという感じです。EX向上の機運が高まったとき、いよいよシステムの使い勝手や操作性にメスを入れる企業が増えるかもしれませんね。こうした企業に「WalkMe」の価値が伝わるといいですね。

中川:ありがとうございます。そのためにも当社は「WalkMe」や「Digital Adoption Platform」の考え方をきちんと訴求しなければいけないと感じています。

 特に最近は、マニュアルの代替や従業員向けのトレーニング支援サービスのような、「WalkMe」に近しいソリューションが他社より登場し始めています。これらとの違いを明確化するのも当社の役割です。

鈴木:確かにそれは必要ですね。では、具体的に他社ソリューションと何が違うのですか。

中川:中長的な考えを持って最適化でき、最終的な成果のための課題解決策を提示できる点だと考えます。「WalkMe」に似ていると言われる類似ソリューションの導入目的は、即効性のあるコスト削減なのが一般的です。しかし「WalkMe」は先ほど申し上げた通り、DX推進を支援するキーソリューションであり、DXを成功へ導く“ラストワンピース”に他なりません。マニュアルを作成する手間を省けるというのはもちろんメリットの1つですが、システムを定着化させることでどれだけDXを加速できるのか、どれだけ投資を回収できるのかといった高い視座を持ち合わせているのが「WalkMe」の考え方です。

鈴木:「WalkMe」はシステムの使い勝手を改善するだけにあらず、ですね。企業は今後、常に変わり続けることが求められるでしょう。そのような中で「定着化」を目指さなければDXも失速しかねません。DXに本気で取り組むなら、「WalkMe」や「Digital Adoption Platform」の考え方こそ必要なのでしょうね。本日は貴重なご意見、ありがとうございました。

中川:こちらこそありがとうございました。

WalkMeがDXをテーマにした主催イベントを7/26に開催、DXマガジン総編集長 鈴木康弘も登壇!

 WalkMeは2022年7月26日、オンラインイベント「DX for Success forum ~ユーザー体験の変革で投資対効果を最大化~」を開催します。大企業の経営者や部長、マネージャーを対象に、ソフトウエアへの投資価値を高めるのに必要なユーザーエクスペリエンス改善や生産性・効率性向上のポイントを紹介します。投資対効果の最大化に取り組む先進企業が登壇し、事例を交えながら最大化する取り組みを考察します。

 なお、基調講演にはDXマガジン総編集長の鈴木康弘が登壇。DXの現状を考察するとともに、DX推進のために必要なポイントなどを紹介します。そのほか、事例セッションやゲスト講演など、複数のセッションを実施します。

開催概要
テーマ
DX for Success forum
~ユーザー体験の変革で投資対効果を最大化~
日時
2022年7月26日(火)
14:00~16:00
開催形式 オンライン&オンデマンド
主催
WalkMe株式会社
(メディア協力:東洋経済新報社)
WalkMe株式会社
https://walkme.co.jp/
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