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インタビュー

DX成功のために求められるITエンジニアのスキルを見極めよ~IT転職サイトの運営会社代表が語る~

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「ITエンジニアを積極採用してDXを推進する」。こんな企業が増えつつあるが、ITエンジニアの採用戦略はそう容易くない。今後のDX時代を見据えたとき、企業はどんなスキルや経験のあるITエンジニアを採用すればよいのでしょうか。ITエンジニア向けの転職サイトを運営するpaiza代表取締役社長の片山良平氏に、ITエンジニアに求めるスキルについて話を聞きました。

キーワードは「アジャイル開発」と「内製化」

 優秀なITエンジニアを採用したい…。DXが叫ばれるようになったのを機に、多くの企業がITエンジニアの採用を強化しています。DXを推進した経験はもとより、ITを駆使した業務改革やWebサービス立ち上げなどを経験した人材を積極的に採用し、自社のDXを加速させようとする機運が高まっています。  こうした流れの中、企業が求めるITエンジニアのスキルは変わりつつあると、paiza代表取締役社長の片山良平氏は指摘します。「当社が3年前に実施した独自調査では、プロジェクトマネージャを採用する動きが目立った。開発の経験はあるものの当人は手を動かすことなく、開発は外注する。こうしたプロジェクトを主導できる経験やスキルに主眼が置かれていた」と言います。自動車メーカーや家電メーカーなどが、“自分で手を動かす”開発者を直接採用するケースは少なかったそうです。  現在の求められるスキルは、3年前の動きを踏まえて変化しています。片山氏は「プロジェクトマネージャを採用し、自社内でIT戦略を立てられるようになった。次のステップとして、社内でシステムを開発する、“自分で手を動かす”人材を採用しようという動きがここ1年顕著である。外注しつつ、システムによっては内製化する体制を整備する企業が急に増えてきた。特に自社でWebサービスを展開する企業で目立つ」と言います。
写真:paiza 代表取締役社長/CEO 片山良平氏

写真:paiza 代表取締役社長/CEO 片山良平氏

 一方、ITエンジニアの社内における立ち位置が変わったことが採用強化に拍車をかけていると片山氏は分析します。「ITエンジニアの役割といえば、これまではIT導入でコストをどれだけ削減できるのかがフォーカスされがちだった。しかし現在、ITエンジニアは営業担当者の役割に近しい業務領域をカバーし、ビジネスの最前線を担う役割に変わりつつある。ITエンジニアは“コストセンター”から“プロフィットセンター”へ。ここ10年のトレンドの1つだ」と指摘します。  では、どんなシステムを内製化するための人材が求められているのか。答えの1つとなるのが、不確実性の高い市場向けのWebサービスを開発できるかどうかです。「十分な要件定義書を作成できるシステム開発は、従来通り外注すればよい。実際に市場に提供するまで反応を読めず、ニーズと乖離しているかも分からないシステムは、ニーズを事前に汲み取った要件定義書の作成は困難。こうした不確実性の高いシステムこそ内製化すべきだ。ニーズや使い勝手に応じて短サイクルで改修するアジャイル開発でシステムプログラムできる人材が求められている」(片山氏)と言います。まずはシンプルな機能でも動作し、対象が限定的な市場だったとしても早急にシステムを市場に送り出し、市場の反応を見ながら機能を追加して強化するシステムが求められています。「大事なのはスピード。いかに早く、開発したWebサービスなどを市場に提供できるかを最優先に考えるべき。要件定義を固めたり、外注したりしてるようでは遅い。小さい開発を社内で積み重ねられるか。現在のITエンジニアには、こうした時勢に対応するスキルや経験が求められる」と片山氏は指摘します。

求職者のプログラムスキルを6段階で可視化

 とはいえ、ITエンジニアのスキルや経験はさまざま。自社が求めるスキルや経験と、転職希望者のそれが合致せず、採用後に双方のニーズが乖離していることに気付くケースは少なくないようです。例えば、「新規事業の柱となるWebサービスの構築を主導できると思って採用した人が、実は開発プロジェクトを統括した経験しかなく、Webサービスをプログラムするスキルを持っていなかった」などです。職務経歴書や採用面接時のヒアリングだけでは把握しきれなかったギャップが、採用後に顕在化するケースがあるようです。  そこで、こうしたギャップを解消できるようにするのが、paizaのITエンジニア向け転職サイト「paiza」(https://paiza.jp/)です。最大の特徴は、転職サイトに登録するITエンジニアのスキルを6段階のレベルで可視化する点。レベルに応じて、どんな業務をできるのかといった具体的な指標が設けられているため、企業が求めるスキル・経験との乖離を最小化することができます。「プログラムというスキルを適正に評価する仕組みづくりに主眼を置いた。具体的には求職者にプログラムを書いてもらい、開発力を相対的に評価する仕組みを設けた」(片山氏)は言います。上位2%の求職者が評価されるSランクから、A、B、C、D、Eまでの6ランクがあり、出題されるスキルチェック問題の解答の正確度や解答までの時間などをもとにスコアリングします。ランクごとの問題を用意し、総問題数は400問を超えます。
図1:「paiza」には、ITエンジニア向けの転職支援...

図1:「paiza」には、ITエンジニア向けの転職支援やプログラム言語の習得支援サービスなどがある

 転職サイトへの登録希望者は、スキルチェックをWebサイト上で実施可能です。スタートするとカウントダウンが開始し、例えば「通信料を計算してください」といった問題に対し、登録希望者は記述する言語を選択してプログラムを入力します。入力後、記述した内容をアップロードすると、正しく動作するプログラムであるかが判定され、その場でランクが付与されます。
図2:スキルチェック時に出題される問題の例

図2:スキルチェック時に出題される問題の例

図3:問題ごとに正答率や平均解答時間、平均スコアなどが...

図3:問題ごとに正答率や平均解答時間、平均スコアなどが示される

 「paiza」ではランクと求人情報を紐づけているため、「一定のスキルを有する求職者しか特定の求人には応募できない。ITエンジニアを採用したい企業にとっては、必要十分すぎるスキルを持つIT人材を採用してしまうリスクを回避できる。もちろん実力の足りないITエンジニアを採用することもない」(片山氏)と言います。
図4:求人情報一覧画面。求人ごとにランクが示されている

図4:求人情報一覧画面。求人ごとにランクが示されている

 「paiza」を立ち上げた背景として片山氏は、日本では他の職種同様の採用過程をITエンジニアにも当てはめているのが問題だと指摘します。「経歴を話す面接だけでITエンジニアを採用するのは間違いだ。技術的なスキルや経験を正確に把握するなら、プログラムを実際に書いてもらうのが手っ取り早い。他の職種同様の採用過程をITエンジニアに当てはめ続けるようでは、日本のITエンジニアのレベル低下につながりかねない。海外、特に米国シリコンバレーのスタートアップ企業の面接では、求職者に具体的な課題を提示し、どんなプログラムを書いて解決するのかを議論するケースが多い。技術的な対応力を試している。日本の採用もこうあるべきだ」と強調します。  「paiza」に登録するITエンジニア数は約40万人。「ここ1年で10万人も増えた。ITエンジニアのプログラム言語習得を支援する学習サービスの利用者も含めた数だが、新型コロナウイルス感染症の拡大を機に求職者の動きも活発化している。一方の企業側も、コロナの影響で採用を抑える業種があるものの、『DX』を理由にここ1年で引き合いが増えている」(片山氏)と言います。

経営者主導でITエンジニアチームを整備せよ

 ITエンジニアの採用戦略を成功させるためには、経営者の危機意識が大事だと片山氏は指摘します。「多くの企業がITエンジニアを採用してDXを加速したいと考えている。しかし一方で、危機意識が希薄な経営者が多いのも事実。デジタルシフトにより今後、既存事業が成り立たなくなるという危機感を持たなければ、ITエンジニアの採用も中途半端に終わりかねない。これまでのビジネスモデルが破壊されるという前提でITエンジニアチームを整備してほしい」と言います。自社の業界でビジネスモデルが破壊されたときの対策を考えてない経営者が多いことを片山氏は危惧します。  そのためには、経営者が率先して行動に出ることが大切だと片山氏は続けます。「周囲の企業や他業種の先行事例を積極的に調べるべき。直接話を聞きに行ってもよい。部下に情報収集を頼むのではなく、話を直接聞いて危機感を自ら抱くことが大切だ。経営者の行動が従業員の危機感を誘発することにもつながる」と言います。  一方、社内のシステム開発体制について、まずはプロジェクトを統括するCTOやプロジェクトマネージャといった管理職を、次にアジャイル開発でスピード感を持ってシステムをプログラムできるITエンジニアを採用。といった採用戦略を打ち出すのが好ましいと片山氏は指摘します。「徐々に開発体制を整備することで新たな課題も見えるようになる。例えばシステムをアジャイル開発できるようになったら、UIを改善するためにUIデザイナーを補強、チームが巨大化したら各自のパフォーマンスを最大化するためのピープルマネジメントを統括する人材を登用などといった具合だ。これは、システム開発を外注依存してきた多くの企業が、内製化に舵を切る際に辿った道。同様の手順を踏んだ先駆者は多いだけに、必ずしも困難な道ではない」と言います。  中でも一人目のCTOを採用するにあたり、経営者の手腕が試されると言います。「経営者の本気度が相手に伝わる。経営者も勉強しなければCTO候補者を口説けない。危機感や熱意、さらには自社の将来性、DXによる新規事業の可能性などを伝えられなければ優秀なCTOを採用できない」(片山氏)と指摘します。CTO候補者が楽しいと思える業務か、劇的に変わる魅力があるかなどを話せるかもポイントです。

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