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データ活用による物流の未来:YKK APのトラック予約サービス導入の意義

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YKK AP株式会社は、物流界での重要な課題、いわゆる「2024年問題」に焦点を当て、全国の製造・物流30拠点全てに新しいトラック予約受付サービス「MOVO Berth(ムーボ・バース)」を導入した。この取り組みは、データ駆動型の物流効率化を目指すもので、荷待ち時間の大幅削減を実現すると期待されている。本記事では、このトラック予約サービス導入の背景や効果、今後の展望などを詳しく解説していく。

物流業界は現在、深刻な人手不足や長時間労働といった多くの課題に直面している。特に、2024年5月から施行される時間外労働の上限規制は、トラックドライバーの働き方を大きく変える要因となり、輸送能力にも影響を与えると見込まれている。このような運送業界の変革に対して、政府は改正物流関連2法を制定し、一定規模以上の事業者に対して物流効率化を義務付けている。YKK APも、様々な形態やサイズ、重量を持つ製品を取り扱っており、その物流オペレーションの効率化は容易なことではない。2016年度から新型輸送パレットの開発を始め、2019年度には国土交通省が推進する「ホワイト物流」運動に参加し、ユニットロード化や独自システムの開発に取り組んできた。しかし、このままでは法的要請に応えられず、更なる効率化が求められる事態となっている。

このような背景の中、YKK APは物流の効率化を一層加速するために、Hacobuの「MOVO Berth」を採用することを決定した。このシステムを通じて、蓄積されたデータを活用し、荷待ち時間の削減や荷役時間の最適化を実現することを目指す。具体的に、2024年1月に試験導入を開始し、同年2月から全国30拠点への導入を進め、2024年9月に全ての拠点での導入を完了した。導入に伴って全社規模での業務フローの統一が図られ、初期段階から効率化を実現。特に、協力パートナーとの予約運用が徹底されており、月間の予約数は2万を超え、予約率は驚異の96%に達している。

長時間の荷待ちや荷役時間は、トラックドライバーにとっては大きなストレスであったが、「MOVO Berth」の導入によりこれが大きく改善された。例えば、先行導入した東北製造所では、1台あたりの平均荷待ち時間が導入前と比較して43%短縮されている。また、従来手作業で行っていた荷待ち・荷役時間の管理がデータ化されたことによって、毎月43.4時間の業務削減を実現し、これは1人あたりの業務時間にして27.1%の削減に相当する。これにより、トラックドライバーの負担が軽減されるとともに、全体としての物流プロセスが効率化され、企業の生産性向上にも貢献している。

YKK APは今後も、MOVO Berthを活用して蓄積されたデータを用い、さまざまな改善を進めていく予定だ。具体的には、時間帯別の入出荷量分析による人員配置の最適化や、車両滞在時間データを基にした構内レイアウトの見直しが挙げられる。さらに、2024年8月にはHacobuが立ち上げた「物流ビッグデータラボ」にも参画し、蓄積された物流ビッグデータを企業間で共有・分析する仕組みを構築することで、異業種間での共同輸配送の可能性を模索していく方針だ。これにより、社会全体の物流効率が向上し、持続可能な物流システムの構築が期待されている。

YKK APのトラック予約サービス「MOVO Berth」の導入は、今後の物流業界におけるデータ駆動型の効率化の象徴となり得る。この取り組みを通じて、同社は社会課題の解決や業界全体の発展にも寄与することを目指し、持続可能な物流を実現するための第一歩を踏み出した。今後のさらなる改良と展開に期待が寄せられている。

執筆:香田雄大

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