サイボウズは、長崎県西海市が持続可能な自治体運営を目指し、同社が提供するノーコード・ローコードツール「kintone(キントーン)」と生成AIを活用した取り組みを開始し、議会答弁書の作成補助や画像の文字起こしといった業務に生成AIを導入して全庁的に利用していることを明らかにしました。西海市では、この取り組みによって年間2,000時間を超える業務削減を実現しています。
西海市は、2050年までの二酸化炭素排出実質ゼロや自治体運営の持続可能性に向けた業務改善を進めてきましたが、答弁書作成のように特定分野に特化した回答を必要とする業務では、一般用途向けの生成AIだけでは十分に対応しきれない課題がありました。そこで、西海クリエイティブカンパニーが提供する自治体向けAIサービス「ばりぐっどくん」を導入するにあたり、操作性や安全性の確保を目的として「kintone」を基盤として活用することを決定しました。これにより、過去の議事録などの公開情報をAIが学習し、精度の高いアウトプットを実現しつつ、LGWAN-ASPを経由したアクセスを可能にすることで自治体としての安全性も確保しています。
現在は両備システムズが提供する「R-Cloud Proxy for kintone」を利用してkintoneにアクセスしながら、「ばりぐっどくん」を通じて議会答弁書の作成や画像の文字起こし、翻訳、要約など幅広い業務で生成AIを活用しています。議会答弁書の作成では、kintone上で質問内容を入力してボタンを押すだけで過去の議事録をもとにAIが答弁案を提示します。また、AIによる回答内容をkintone上で編集でき、コメント欄を使って関係部署とディスカッションしながら精度を高めることも可能です。こうした生成AI活用は、全庁アンケートで57%の職員が2か月でログインし、年間2,072時間の業務削減効果が得られていることが判明しています。職員のおよそ9割が有効性を感じているとの回答もあり、業務内容や役職を問わず利活用が進んでいる状況です。
西海市さいかい力創造部情報推進課DX推進班の熊本英哲氏は、行政課題や住民ニーズが多様化する中で、人材不足が深刻化している状況に対処するには生成AIやITツールの活用が重要だと語っています。生成AIに対するセキュリティ面の懸念についても、kintoneがLGWAN-ASPを利用することで自治体でも安心して導入できると説明しています。今後は、ITの専門知識がなくても誰でも簡単に業務改善アプリを開発できるkintoneの特長を生かし、さらに生成AIを組み合わせてDXを推進することで、持続可能な自治体運営を目指していく方針です。
レポート/DXマガジン編集部折川