気候変動への対応は喫緊の課題であり、2024年は記録上最も世界平均気温の高い年になることが確定的とされています。2024年11月にバクーで開催されたCOP29では、初めてデジタル技術を主題とする日が設けられ、AIの功罪が議論されました。生成AIの普及はデータセンターの電力消費を急増させる一方で、AIは早期警戒や衛星画像解析などで適応策に革新的な価値をもたらす可能性も示しました。こうした議論を踏まえ、本稿ではCOP29現地報告の内容を基に、AIが気候変動対策にもたらす課題と日本の強みを整理します。
まず留意すべきは、AI普及が電力消費の増大につながる点です。大型のAIモデルの学習・推論には巨大な計算リソースが必要であり、生成AIの普及でデータセンターの電力需要が急増しています。国際エネルギー機関(IEA)は2026年のデータセンター電力消費が2022年比で最大2.3倍になるとの試算を示しており、これを放置すれば発電の増加に伴い化石燃料消費と温室効果ガス排出が増える恐れがあります。COP29でもこの点は議題となり、AI導入と脱炭素の両立が重要な論点になりました。
一方でAIは「認識・解析・予測・最適化」という機能を通じて気候変動対策に貢献します。認識では衛星やセンサーから得たデータで現象を把握し、解析で大量データから傾向や脆弱性を抽出、予測で洪水や感染症リスクを推定、最適化で限られた資源配分を効率化します。特に適応策の分野で、AIは都市インフラの強化や農業の気候適応などに直結する有用なツールになり得ます。
COP29で強調された適応ソリューションの中心に、早期警戒システムと衛星画像利用があります。早期警戒システムはゲリラ豪雨や洪水の予測・警報により被害を低減しますが、「Early Warnings for All」の理念が示す通り、最貧国の人々を含め全ての人にアクセス可能な体制構築が課題です。モバイル通信は世界人口の96%をカバーしていますが、約31億人はモバイル環境にアクセスできない現状があり、こうした人々への通知手段やデータ不足地域での予測精度向上が必要です。
衛星画像と高性能センシングは広域かつ継続的な環境モニタリングを可能にします。衛星画像解析は土地被覆の変化や森林減少、大気質の変化を把握するうえで強力であり、深層学習との親和性も高いです。さらに航空機やドローン、地上センサーと組み合わせることで解像度と更新頻度を補い、感染症媒介蚊の発生地特定など多様な適応用途にも応用できます。
日本は多発する自然災害への対応経験や高性能センシング技術、地上観測ネットワークの蓄積といった強みを持っています。これらをAIやIoTと組み合わせることで、導入コストを抑えつつ信頼性の高い適応ソリューションを開発・輸出できるポテンシャルがあります。特にデータの蓄積と現場適用でのノウハウは、インフラ未成熟地域への展開で競争力になります。
同時に、AIの気候負荷を下げるための技術的な取り組みや政策支援が不可欠です。省エネ型AIの活用、半導体技術の開発、再生可能エネルギーの活用とワークロード最適化といった対策を進めることが求められます。また、データ共有や国際協力、オープンイノベーションの枠組みを整備することで日本の技術と経験を結集し、持続可能な適応ソリューションの普及を後押しできます。
COP29の議論は、AIが気候変動対策において大きな可能性を秘める一方で、運用による電力消費増などのリスクも併せ持つことを示しました。日本は適応分野でのリーダーとなるために、技術開発と国際連携を強化し、実装可能なソリューションをに展開することが期待されます。
詳しくは「株式会社三菱総合研究所」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部小松






















