中小企業庁(経済産業省所管)は、2025年9月9日付で、最低賃金の大幅引上げを受けて「中小・小規模企業・事業者向け支援策」を公表しました。この記事では、その概要と狙い、現場での対応ポイントを整理します。
背景と目的
2025年度(令和7年度)において、全国の最低賃金が過去最大の「全国加重平均66円引き上げ」となる見通しが示されており、これに伴い企業側、特に中小・小規模事業者にとっては人件費負担の増加が懸念されています。 このため、政府は「ただ賃金を上げるだけ」で終わらせず、「賃金引上げを支える環境整備」として、価格転嫁の仕組みづくり、補助金・税制の拡充、生産性向上を促す支援などを包括的に打ち出しました。
支援策の主な柱
公表された支援策は、大きく以下の3つの柱から成り立っています。
- 価格転嫁・取引適正化の強化
引上げによるコスト増を企業が無理なく吸収できるよう、取引慣行の是正、下請取引の適正化支援などを促進します。たとえば、改正下請法(取適法)などを通じて発注側企業に対し価格設定・支払条件の改善を働きかけるとされています。 - 補助金・税制などによる支援の拡充
賃上げに必要な資金を確保しやすくするため、販路開拓支援や「賃上げ促進税制」、さらに中小・小規模事業者向けの「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「省力化投資補助金(一般型)」の要件緩和・審査優遇などが盛り込まれています。 - 生産性向上と賃上げ機能の強化
賃上げを持続可能なものにするため、生産性向上に資する設備投資やデジタル化等を促す支援が強化されます。「最低賃金引上げ特例」などの加点措置も導入され、対象企業への優遇が図られています。
現場のポイントと対応すべきこと
中小・小規模企業においては、以下のような対応が重要となります。
- コスト増の分析:人件費が上がることで採算にどの程度影響するか、価格転嫁・取引条件の見直しを早める必要があります。
- 支援制度の活用準備:補助金・助成金・税制による支援を受けるため、設備投資やデジタル化、賃上げ計画の整備を進めることが有効です。特に、補助金の審査で加点対象となる条件(例:改定後の地域別最低賃金未満の従業員が一定比率以上)を満たせるか確認することが望まれます。
- 発注側企業との交渉・関係づくり:取引先に価格転嫁や支払条件の改善等を要請できるよう、交渉準備や周知・説明を行うことが効果的です。
- 生産性アップの視点:単に賃金を上げるだけではなく、設備・IT・業務プロセスの改善を通じて、賃金上昇を支えうる体制を構築することが中長期的な鍵です。
今後の課題と見通し
支援策が整備されたとはいえ、実際に中小・小規模事業者がその恩恵を十分に受けるためには、情報の浸透と制度活用のハードル低下が課題です。制度の周知、相談窓口の整備、申請支援などが継続的に必要とされます。 また、価格転嫁が困難な業界・業種もあり、単純に“賃上げ=負担増”という構図を変えるためには、産業構造やビジネスモデルの転換も視野に入れる必要があります。
【まとめ】
政府が今回発表した支援策は、最低賃金の引上げを“負担”と感じさせず、“賃上げを可能とする環境づくり”に重きを置いており、中小・小規模企業・事業者にとっては大きな支援となり得ます。しかし、実効性を持たせるには、各事業者が早期に自社の状況を整理し、対応を始めることが重要となります。制度を“知る”だけでなく“活かす”体制づくりが、今まさに求められています。






















