内閣府が公表した日本経済リポートは、賃金上昇がZ世代を含む若年層と大企業で相対的に大きい一方、中高年や中小企業では上昇率のばらつきが拡大していると分析しました。少子化の進行下で、企業が若年層の賃金を引き上げ人材確保を図る動きが反映されています。20〜30代はおおむね賃金が上がった一方、40〜50代は伸びが鈍く、特に高所得層で上昇幅が大きい傾向が示されました。日本の就業者の七割を占める中小企業では、賃上げの可否が二極化する傾向があるとしています。国内総生産に占める個人消費の比重を踏まえ、裾野広い賃上げを実現する取り組みの重要性が強調されました。解として、労働者の能力開発とM&Aを通じた生産性向上が不可欠と位置づけられています。
報告書は、能力水準と労働生産性の乖離にも言及します。経済協力開発機構の成人能力調査で日本はフィンランドに次ぐ二位である一方、時間当たり労働生産性は主要七カ国で最下位にとどまります。要因の一つとして、リスキリングを巡る企業と労働者のニーズのずれを挙げています。企業が求める能力開発は協調性や協働力が六割弱、職種特有の実践的スキルが四割弱を占め、長期雇用を前提とする企業内スキルを重視する姿がうかがえます。対して労働者は語学力や専門的なIT知識など汎用性の高いスキルを望む傾向が強いとされます。この不一致が続く限り、学び直しの成果が生産性向上に結びつきにくく、賃金の継続的な上昇にもつながりにくいと整理しています。両者の意思疎通を高め、育成項目の整合を図る必要性が示されました。
さらに、企業のM&Aが生産性に与える影響を検証し、2010〜2022年度に合併した企業とそうでない企業の比較で、非製造業は合併後に営業利益率や労働生産性、総資産利益率が上昇したと分析しています。製造業は工場の統廃合などの効果が表れるまで時間を要するとの見立ても示されました。中小企業の賃上げ二極化に対しては、統合による規模の経済や業務標準化、経営資源の再配分が有効に働く可能性が示唆されています。M&Aを通じた生産性向上や賃上げの促進に向け、買収先の企業価値評価の基準整備や、統合プロセスに関する知見共有などを官民で進めるべきだと提起しました。政府は価格転嫁を促してきたものの、物価上昇に見合う賃上げは十分に広がっていない現状も踏まえ、個人と企業がスキル向上やM&Aなどで主体的に生産性を高める取り組みが、日本全体の賃上げにつながると結論づけています。
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