2025年度の国内旅館・ホテル市場は事業者売上高ベースで6.5兆円に到達する見通しとなり、過去最高を更新する可能性が高まりました。対象は全国の旅館・ホテル約3800社で、2026年2月末までの実績と見込みに基づく集計です。前年度の6兆652億円を上回り、4年連続の増加が見込まれます。円安を追い風にしたインバウンドの拡大や国内の観光・出張需要の回復が市場を押し上げました。さらに、ライブやスポーツなどの大規模イベント開催も集客を後押ししました。大都市圏や著名観光地では需給逼迫を背景に客室単価の高止まりが続いています。


企業動向では、前年度からの増収企業が全体の32.4%に達しました。東京や大阪、京都などで宿泊需要が顕著に伸び、大阪・関西万博を契機に近畿圏での増収割合が高くなりました。宿泊料金の上昇は滋賀県大津市など周辺エリアにも波及し、広い範囲で恩恵が見られました。沖縄県でもテーマパークの新規開業やリゾート需要の回復が寄与し、中長期滞在や高付加価値志向の取り込みで単価と稼働率が改善しました。運営面では素泊まりプランやオールインクルーシブの導入が進み、体験価値を重視したパッケージが客単価の引き上げに寄与した事例がみられます。市場拡大と商品設計の変化が、収益機会の広がりを示しました。
一方で、減収企業は2年連続で1割超となりました。地方の観光地や交通アクセスに弱点を抱える施設では、インバウンド取り込みが限定的で稼働率が伸び悩みました。需要の弱さから値上げに慎重となり、人件費などのコスト上昇を価格に転嫁しにくい状況が続きました。慢性的な人手不足による受け入れ制約や、大手チェーンの新規開業ラッシュに伴う競争激化も逆風となりました。結果として、立地や事業規模による収益機会の格差が明確になっています。設備投資余力の差が今後の競争力の差に直結する構図がうかがえます。
財務面では、債務超過企業の割合が28.6%と依然高水準にあります。2019年度の24.8%から3.8ポイント上昇し、構造的な負債圧力が続いています。コロナ禍の2021年度には宿泊需要急減で資金繰りが悪化し、多くの事業者が借り入れに依存した結果、債務超過は一時40%台まで拡大しました。その後は改善基調にあるものの、中小事業者を中心に借入依存は残存しています。足元では大手を中心に新設やリニューアルが進む一方、資金余力の乏しい小規模事業者や立地面で不利な施設では老朽設備の改修が遅れ、競争力低下が懸念されます。市場拡大下でも財務の二極化が鮮明です。
先行きでは、円安基調が強まり訪日需要は2026年度も高水準を維持する可能性があります。訪日客数と旅行消費額はいずれも過去最高水準にあり、旅館・ホテル業界には追い風が続いています。他方で、米国およびイスラエルによるイランへの攻撃以降、原油価格の急騰により航空運賃の上昇や運航制限が生じ、欧州発の需要減少が懸念されます。国内では物価上昇を背景に選別消費が進む見方が多く、立地や地域の魅力、ターゲットに即した商品設計が収益を左右する重要要素になります。需要は堅調でも、需要拡大が直ちに収益拡大につながらない局面が到来し、価格戦略や投資、オペレーションの巧拙が差を生むことが見込まれます。省人化投資を含む設備投資と、それを回収できる財務基盤の整備が競争力の鍵となります。
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