メジャーリーグで大活躍を続ける大谷翔平選手。二刀流として投打で圧巻のパフォーマンスを発揮し続けています。そのパフォーマンスは、勝ち星や奪三振率、さらには打率や本塁打数といった指標以外でも証明されています。日本のプロ野球ではあまり聞かない、メジャーリーグならではの指標をもとに大谷翔平選手の能力をチェックしてみましょう。
大谷翔平選手の活躍は日本はもとより、米国でもスポーツニュースなどで大きく取り上げられています。メジャーリーグに精通する解説者が、フリーエージェント後の移籍金額を予想したり、二刀流の活躍を分析したりしています。
そんな解説者の多くが、具体的な指標を使って選手を分析しています。野球選手を評価する指標と言えば、打者なら打率や打点、本塁打数、投手なら勝ち星や勝率、奪三振率が一般的です。しかしメジャーリーグでは、これら以外に数多くの指標が使われています。こうした指標を用いて選手の能力を評価する手法を「セイバーメトリクス」と呼びます。統計学を使い、選手の能力を客観的な指標に基づき可視化するのが特徴です。
例えば「打点」。打点の多い選手が優秀かというと、必ずしもそうとは限りません。満塁の場面で打席に入る機会が多いなど、選手の能力以外の要素に大きく左右されるからです。「勝ち星」も同じです。10点取られても味方が11点取れば投手に勝ち星がつくかもしれません。0点に抑えても味方の援護がなければ負け投手になってしまいます。
打点や勝ち星などの一般的な指標は、必ずしも選手の本当の能力を示しているとは言い難いのです。そこでメジャーリーグではセイバーメトリクスを使い、選手の能力を客観的に評価することが根付いているのです。
2011年に公開された「マネーボール」という映画をご存じでしょうか。補強資金の乏しい球団の再建を描いた実話で、ブラット・ピットがチームのGM(ゼネラル・マネージャー)を演じて人気を博しました。この映画の中で、選手を評価する指標としてセイバーメトリクスが使われていました。
例えば、打者の打率よりも出塁率を評価する点です。打率の高い選手は高年俸になりやすいことから、資金難の球団では獲得は難しい。そこで、四死球も含めた出塁率をもとに選手を評価したのです。こうして、打率は低いが出塁率の高い選手をピックアップし、獲得に動いたのです。
では、セイバーメトリクスで用いる指標にはどんなものがあるのでしょうか。日本でもよく聞くようになった「OPS」も打者を評価する指標の1つです。
「OPS」は打者の出塁率と長打率を足した値です。メジャーリーグでは選手を評価する指標として、打率よりも重視されつつあります。OPSは一般的に「1」を超えると、打者はトップ中のトップと言えます。ちなみに大谷翔平選手の場合、4月28日時点のOPSは「0.868」です。大谷翔平選手の同僚であるマイク・トラウト選手の場合、OPSは「0.963」です。
そのほか、1打席で相手投手に何球を投げさせたのか、つまり被投球数を示す「P/PA」、守備で失点をどれだけなくしたのか、つまり守備の貢献度を示す「UZR」なども、選手を評価する指標として使われています。
投手を評価する指標として有名なのが「QS」です。これは、先発投手が6イニング以上を投げ、かつ自責点を3点以内に抑えたときにカウントされます。QSが多いほど、先発投手として結果を残していると言えるわけです。ちなみに大谷翔平選手の場合、4月28日時点のQSは「4」です(先発登板回数は6)。QS数を先発登板回数で割った「QS率」も指標として使われます。大谷翔平選手のQS率は、4月28日時点で66.7です。
そのほか、「WHIP」も投手を評価するメジャーな指標です。これは、投手が1イニングあたりに許した安打数、四死球数を指します。つまり、1イニングで何人のランナーを出したのかを示す指標です。一般的には「1」前後の値になり、「1」を下回ると評価が高くなります。大谷翔平選手の場合、4月28日時点のWHIPは「0.82」です。
日本のプロ野球やスポーツニュースではあまり聞きなれない指標ばかりですが、メジャーリーグの選手はセイバーメトリクスによって、より客観的に評価されています。その指標においても大谷翔平選手は優れた結果を残しているわけです。二刀流というインパクトだけでなく、打者と投手それぞれで客観的に評価されているのです。
セイバーメトリクスにはこれら以外にも数多くの指標があります。気になる人はチェックし、セイバーメトリクスで選手の能力を評価してみてはいかがでしょうか。
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