2024年の調査結果によると、大企業においてソフトウェアの提供方式であるSaaS(Software as a Service)の導入率は74.1%に達しています。この数値は前年の2023年からほぼ同じ水準を維持していますが、一方で、企業が「十分に使いこなせていない」と感じている割合が増加していることが示されています。具体的には、60.7%の企業がSaaSを導入したものの、十分に活用していないと回答しており、昨年に比べてこの数字は1.9%増加しました。
この調査では、「かなりある」との回答が3.0%増加しており、SaaSサービスの導入が進む中で、企業がその活用に苦慮している実態が浮き彫りとなっています。SaaSを導入したものの、実際には「従業員が意図した通りに使ってくれない」「定着せずに想定通り使えていない」といった声が挙がっています。これらの課題が業務の効率化を妨げ、結果的にビジネスの成長を阻害している可能性があります。
さらに、SaaSの導入先としては「Web会議システム」が54.0%を占めており、続いて「人事労務・タレントマネジメント」が52.7%となっています。多くの企業がリモートワークやデジタルコミュニケーションを重視していることがうかがえますが、それに伴いソフトウェアの利用に際しての教育やサポートも重要な要素となっています。利用状況が不十分である理由として「複雑なシステムの分かりにくさ」が最も多く挙げられており、これが導入効果を低下させる要因と考えられています。
また、「マニュアルの作成・修正ができる従業員不足」といった理由も挙げられ、企業内での知識共有や継続的な教育がまだ不十分であることを示唆しています。これらの課題への対応として、「サービスごとのマニュアル作成」や「勉強会・研修会の開催」などの対策を実施する企業が多く見られました。
今後も企業がSaaSを活用していくためには、従業員のスキル向上を図るための施策が求められます。効果的なトレーニングやプロセス改善を通じて、従業員がSaaSを最大限に活用できる環境を整えることが、企業全体のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させる鍵となるでしょう。
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執筆:熊谷仁樹