省人化が進む飲食業界で、トリドールホールディングスは2025年9月から「心的資本経営」を本格始動します。従業員の幸福を起点に内発的動機を引き出し、AIで可視化したデータを基に唯一無二の顧客体験を創る、新たな人的投資の実践です。
DX視点で読み解く「ハピカン繁盛サイクル」と具体施策
トリドールHDの「心的資本経営」は、従業員の“ハピネス(幸福)”と顧客の“カンドウ(感動)”を同等の経営資本として捉える思想です。従業員が心から働ける環境を整えることで内発的動機が育ち、その行動が顧客の感動体験を生み、店舗の支持と業績向上につながるという好循環「ハピカン繁盛サイクル」を掲げています。省人化が進む業界トレンドに逆らい、人の温もりを差別化要素に据える戦略は、長期的なブランド価値の蓄積を狙ったものです。
具体施策として、店長制度を刷新する「ハピカンオフィサー」制度を導入します。オペレーション業務の一部を他メンバーに移管し、オフィサーは従業員の内発性を引き出すリーダーシップに注力します。報酬制度も改められ、ハピカン繁盛サイクルの実践度に応じて最大年収2,000万円の報酬を得られる仕組みを整備します。丸亀製麺では「ハピカンキャプテン」を2025年11月導入に向け研修を進め、2028年までに300名の育成を目指します。
従業員の生活支援として「家族食堂制度」も開始します。所属ブランドの店舗で従業員の15歳以下の子どもが無償で食事を楽しめる制度を2025年12月から段階的に導入し、家庭とのつながりを企業として支えます。こうした施策は従業員の安心感や帰属意識を高め、職場での内発性を高める狙いがあります。
また、DXの活用も柱です。音声対話型AIを使った独自指標「ハピネススコア」を導入し、従業員の心の状態を可視化します。既に顧客の「感動スコア」との相関分析を進め、初期分析ではハピネススコアの高い店舗ほど感動スコアや業績貢献が高い傾向が確認されています。データサイエンスにより因果関係を明らかにし、実務へ落とし込むことで、人への投資の効果を高める設計です。
トリドールホールディングスの新たな取り組みは、従業員の「実力」に加えて「心」に寄り添った評価をAIで実現した点に特徴があります。従業員の実力や幸福度を数値化して評価する仕組みは、日本でもいよいよジョブ型の働き方へと移行している流れを示しているように感じます。グローバルフードカンパニーとして成長を続けるトリドールホールディングスの今後の展開に、引き続き注目していきたいと思います。
詳しくは「トリドールホールディングス」の公式ページまで。
レポート/DXマガジン編集部 權






















