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政府肝入りのスマートシティ構想、ガイドブック公開で自治体のDX加速

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都市や地域が抱えるさまざまな課題解決の手段として注目される「スマートシティ」。政府は現在、Society5.0を具現化するショーケースとしてスマートシティの取り組みを後押ししています。そんな中、内閣府などは2021年4月9日、「スマートシティガイドブック」を発表。地方公共団体や公民連携の協議会など向けに、スマートシティの意義や必要性、進め方などをまとめた資料を公開しました。具体的にどう取り組めばよいのか。ガイドブックの概要を紹介します。

スマートシティ、3つの理念と5つの原則

 ガイドブックではまず、スマートシティに取り組む上での3つの基本理念と、5つの基本原則をまとめています。
3つの基本理念
市民(利用者)中心主義 “Well-Beingの向上”に向け、市民目線を意識し、市民自らの主体的な取り組みを重視
ビジョン/課題フォーカス 「新技術」ありきではなく、「課題の解決、ビジョンの実現」を重視
分野間/都市間連携の重視 複合的な課題や広域的な課題への対応等を図るため、分野を超えたデータ連携、自治体を越えた広域連携を重視
5つの基本原則
公平性、包摂性の確保 すべての市民が等しくサービスを享受し、あらゆる主体が参画可能なスマートシティの実現
プライバシーの確保 パーソナルデータの利活用を進めるにあたり、市民のプライバシーの確保を徹底
運営面、資金面での持続可能性の確保 地域に根ざした持続的なスマートシティの実現に向け、運営面、資金面での持続可能性を確保
セキュリティ、レジリエンシーの確保 プライバシー保護や災害等の緊急事態への備えとしてセキュリティ、レジリエンシーを確保
相互運用性/オープン性/透明性の確保 都市OSにおける相互運用機能、オープンなデータ流通環境、意思決定プロセス等における透明性などを確保
これらを踏まえ、都市内および都市間でのデータ活用を促進する環境を構築します。エネルギー、災害、健康、見守り、教育、移動、取り引きなど、社会生活のさまざまな場面でデータを前提としたサービスを創出できるようにします。
図1:サービス提供によりさまざまな社会課題を解決するイメージ

図1:サービス提供によりさまざまな社会課題を解決するイメージ

対象エリアや目的に応じて異なるスマートシティの類型

 スマートシティは、市区町村をまるごと対象エリアにする「行政主導型」と、特定のエリアを対象にする「エリアマネジメント型」に大別されます。市民の生活の質を向上させることが主な目的である前者に対し、後者は特定エリアの価値向上、エリア内の事業者の活動をサポートするサービス提供などの目的も加わります。  前者の事例には、福島県会津若松市の「スマートシティ会津若松」、後者の事例には、東京都の「大手町・丸の内・有楽町地区スマートシティ」があります。
図2:スマートシティ会津若松と大手町・丸の内・有楽町地...

図2:スマートシティ会津若松と大手町・丸の内・有楽町地区スマートシティの概要

5つに分かれるスマートシティの進め方

 ガイドブックでは、地方自治体などがスマートシティに取り組む際の手順も記しています。具体的な手順と内容は以下の通りです。
図3:スマートシティの進め方(例)

図3:スマートシティの進め方(例)

 例えば初動段階は、本格的に検討する準備段階という位置付けで、庁内の推進体制を整えるとともに、地域の関係者との対話を通じた機運の醸成に努めるようにします。地元の経済界や地域住民団体、地元大学などと会話したり、庁内に部局を横断するプロジェクトチームを構築したりし、ステークホルダーとともに準備を進めます。
図4:例えば福島県磐梯町は初期段階として専門部署を設置

図4:例えば福島県磐梯町は初期段階として専門部署を設置

 準備段階では、地域の目指す方向性、課題、強みなどを分析します。地域の関係者や市民のニーズを収集し、スマートシティとして打ち出すビジョンを地域で共有します。関係者への十分なヒアリングするとともに、関係者間でビジョンを共有・認識するようにします。
図5:例えば石川県加賀市は準備段階として基本理念を宣言した

図5:例えば石川県加賀市は準備段階として基本理念を宣言した

 計画(戦略)策定段階では、主体的にプロジェクトに参画する公民学などの推進主体と具体的な計画(戦略)を策定します。推進主体となるコンソーシアムを組成したり、ビジョンを実現するための具体的な道筋を描いた計画(戦略)を策定したりします。
計画(戦略)に記載すべき主な事項(国土交通省スマートシティモデル事業における主な記載事項)
目標 都市の将来像をふまえた、都市の課題と整合した目標
課題 地域が抱える課題について記載
KPI 目標および課題と整合し、地域の価値・収益向上効果が明らかになるような目標値、達成年度
取り組み内容 取り組みの全体像、取り組み内容、特徴
ロードマップ 調査、計画、実証、実装までのスケジュール
役割分担 関係者の合意形成および役割分担、推進体制を記載
持続可能な取り組み 初期投資から維持管理・運営までを見据え、公民の適切な費用負担、資金計画や投資回収期間
データ利活用方針 活用するデータ、データプラットフォームの整備および活用方針
 実証・実装~定着・発展段階では、システム導入やサービスの実証実験などを通じ、社会的受容性を高める実装を進めます。実装後も長期にわたる取り組みを通じて根付かせるようにします。サービス実装後もモニタリングするなどして改善に努め、社会の変化に対応した新サービスの導入を進めるなどして継続的に取り組むことが求められます。
図6:例えば長野県伊那市は実証・実装としてドローンを使...

図6:例えば長野県伊那市は実証・実装としてドローンを使った配送サービスに着手

 ガイドブックでは、機能的かつ機動的な推進主体を構築することの必要性にも触れています。異なる組織の論理や、利害を有する公民などが参画し、利害を調整しながら実行力を強化することが必要です。利害調整には、合理的で適正な意思決定をするためのガバナンス(組織規約など)を明確化しておくことも必要としています。
図7:栃木県宇都宮市の場合、「Uスマート推進協議会」が...

図7:栃木県宇都宮市の場合、「Uスマート推進協議会」が推進主体となって取り組む

 また、官民のさまざまなデータを流通・利活用するためんは「保護」と「利活用」のバランスが重要です。各種ガイドラインを参考にし、データの取り扱いルールやリスクなどを検討するほか、ルールを市民や企業に告知して理解してもらう取り組みも重要であるとしています。
図8:千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」では、データ...

図8:千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」では、データ倫理委員会を設置してガバナンスを強化する

スマートシティの中核となる都市OS(データ連携基盤)

 スマートシティでは官民のさまざまなデータを連携し、それらを使ったサービスを提供できるようにすることが前提となります。そのため、どこからどんなデータを集めるか、といったデータを収集・管理するための仕組みが重要です。ガイドブックには、データ連携基盤となる都市OSの主な該当と導入時の留意点にも触れています。  都市OSは都市間の相互連携を想定した共通の土台となり、新サービスを低コスト短期間で提供できること、都市間連携によりマーケット規模を拡大できること、分野間連携により新サービスの創出や既存サービスを深化できることを、ガイドラインでは要件として掲げています。  とりわけ、防災や防犯、交通などといった用途別にデータ収集基盤を用意するサイロ型ではなく、これらを一元的に収集・管理する基盤であることを求めています。センサーやカメラ、行政データなどを収集するためのAPIを用意し、基本機能やセキュリティ機能を備える都市OS(データ連携基盤)に集約できるようにします。  蓄積したデータもAPIを使って各種アプリケーション(サービス)に提供できるようにします。これにより、新たな用途、ニーズが生じたときもAPIを使って必要なデータを容易に取り出してサービスを創出できるようにします。
図9:都市OS(データ連携基盤)の利用イメージ

図9:都市OS(データ連携基盤)の利用イメージ

 なおガイドブックでは、20~30年先を見据え、都市OSは拡張が容易だったり、特定のベンダーに依存するベンダーロックインを排除したりすることに注意するよう記されています。収集すべきデータも勝手に集まるものではなく、積極的に取得する姿勢を示すことにも触れています。必要なデータがなければ、どんなデータが必要なのかを認識し、マッチングなどを実施してデータを探す取り組みも必要であるとしています。

プロジェクトを評価するKPIを設定

 ガイドブックでは、適切な指標を設定し、その指標を見える化する取り組みにも注意するよう記しています。取り組みの進捗を可視化し、市民に説明できる体制にも目を向けます。  目標に対応したKGI、各テーマの目標に対するKPI、取り組みの効果を示すアウトカム指標、取り組みの活動量を示すアウトプット指標を設定することが必要です。こうした定量的なKPI評価を用いることで、今後の計画の更新やプロジェクトを改善できるようにします。

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