日本オムニチャネル協会は2025年2月28日、年次カンファレンス「オムニチャネルDay」を開催しました。ここではタイミー代表取締役の小川嶺氏と日本オムニチャネル協会会長の鈴木康弘氏によるセッションの様子を紹介します。「人手不足時代のスポットワークの用い方」というテーマで、人材の活用方法や新たな働き方について議論しました。
人手不足解消の切り札となる「タイミー」の強み
タイミーが提供するサービス「タイミー」は2018年8月にリリース。わずか7年で1000万人以上が登録するプラットフォームに成長しています。現在では企業16万社が導入し、物流、小売、飲食をはじめとするさまざまな業界で利用されています。小川氏はタイミーの強みについて、「単なるITサービスではない。現場の課題を理解し、それを解決するための仕組みを実装しているのが特徴だ」と声高に訴えます。さらに「タイミーは単なるマッチングプラットフォームではなく、企業ごとの課題を分析し、それを解決するためのパートナーであることを目指す」(小川氏)といった理想も掲げます。

「タイミー」は、スポットワークによる働き手を容易に確保できるのが特徴です。スポットワークとは従来のアルバイトや派遣とは異なり、企業が必要な時間だけ労働者を雇用できる仕組みを指し、特に人手不足が深刻な業界での活用が進んでいます。例えば、スーパーマーケットの惣菜コーナーでは、毎日タイミーを活用して唐揚げの調理や品出しを行っているといいます。また、ネットスーパーのピッキング作業では、マニュアルを活用することで誰でも業務がこなせる仕組みを整え、効率的な労働力確保に成功しています。「ドラッグストア業界では資格者の業務と非資格者の業務を切り分けるのにスポットワークを活用する。正社員の残業時間削減に寄与する他、資格者にしかできない業務に集中できるようになる。商品陳列などの業務を資格者が担うといった慣習から脱却できる」(小川氏)とスポットワーク導入による効果を説明します。
一方、少子高齢化により日本の労働市場は確実に縮小しています。2050年には日本の人口が1億人を切ると予測される中で、企業は限られた人材をいかに活用するかが問われています。高齢者の労働参加も解決策の1つとなりますが、「タイミー」ではすでに60歳以上のユーザーが増加し、現在では50万人以上が登録しているといいます。定年退職後に新たなやりがいを求めて働く人々が増えており、元銀行員が飲食業で接客を楽しんでいるという事例も登場しているといいます。
副業の広がりもスポットワークの成長を後押ししています。現在、企業の6割が副業を許可しているものの、実際に副業をしている人はまだ少ないのが現状です。しかし、「タイミーによる即時マッチングサービスがあることで副業のハードルを下げられる。多くの人が気軽に新しい仕事を体験できる」(小川氏)と指摘。セッションで対談した鈴木氏も、「副業の第一歩は今後、『タイミー』という選択肢がスタンダードになるかもしれない。さまざまな仕事を気軽に体験できるのは人生を豊かにする。働き方が問われる今だからこそ、『タイミー』の果たす役割は大きい」と述べました。

企業側にとっても、スポットワークの導入は新しい人材確保の手段となります。特に、従来の採用プロセスでは分からなかった労働者の適性を、実際の業務を通じて見極められる点は大きなメリットです。派遣と異なり、スポットワークでは気に入った労働者をそのまま雇用することが可能で、より適した人材を確保しやすくなります。「面接では分からないことも、実際に働いてみれば一目瞭然。企業側も労働者側も納得できる採用が可能になる」(小川氏)と、「タイミー」が採用戦略の一助になるとメリットを指摘します。
小川氏は今後について、現在1000万人の登録者数を3000万人にまで拡大する目標に掲げます。そのため、「業界ごとのカスタマイズ機能を強化し、より多くの企業が利用しやすい環境を整える。労働市場全体の流動性向上を支援していきたい」(小川氏)と意気込みます。さらに、日本のスポットワークの成功モデルを基に、少子高齢化が進むアジア市場への展開も視野に入れます。「スポットワークのプラットフォーマーとして世界で上場しているのは当社だけ。現在の強みを武器に、グローバルでも市場を獲得したい」(小川氏)と述べました。

最後に、企業がスポットワークを導入する利点を改めて強調。「企業は業務の見直しと人材確保の手段としてスポットワークを積極的に活用すべきだ。一方の個人は新たな経験を積む場としてスポットワークという選択肢を考慮すべきだ。こうした新たなトレンドを把握、活用することが企業の成長を後押しする」(小川氏)と述べました。人手不足という課題に対して、単なる労働力の補填ではなく、企業と個人双方がメリットを享受できる新たな雇用の形が求められています。スポットワークは、その可能性を広げる重要な鍵となるでしょう。
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