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これからの情報システム部門はイノベーションを牽引する存在へ【オムニチャネルDay2025レポート】

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日本オムニチャネル協会は2025年2月28日、年次カンファレンス「オムニチャネルDay」を開催しました。ここでは、星野リゾート 情報システムグループ グループディレクター 久本英司氏と、モデレータを務めた日本オムニチャネル協会 林雅也氏が登壇したセッションの様子を紹介します。「情報システム部の革新と挑戦の時代」というテーマで、これからの情報システム部門のあるべき姿を議論しました。

セッションでは、久本氏と情報システム部門の現在に至るまでの経緯などが紹介されました。久本氏が入社した2002年当時、星野リゾートは軽井沢で2つのホテルを運営する従業員200人ほどの規模でした。当時はチェックイン・アウト以外の業務はすべて紙で行われており、システム化を進める久本氏は現場から「魔法使い」のように慕われる「黄金期」を過ごしました。

写真:星野リゾート 情報システムグループ グループディレクター 久本英司氏

しかし、会社が急成長を遂げ、従業員数が3000人、拠点が20カ所を超える中で、IT部門は大きな壁にぶつかります。特に2013年頃、事業成長に追いつこうと挑戦したインドでのオフショア開発が失敗に終わり、システム品質の低下と納期遅延を招いたことで、IT部門は社内で「事業の足かせ」と揶揄されるほどの信頼失墜を経験しました。久本氏はこの失敗を振り返り、原因はベンダー側にあるのではなく、事業会社としてシステムを構築するための「ビジョン」や「要求力」、「概念化能力」が自分たちに欠如していたことにあると痛感しました。

2014年、久本氏は自身のスキル不足を補うために外部コミュニティや他社のCIOとの交流を通じて徹底的に学び直しました,。そして2015年、単なる計画に留まらない「変化を前提とした組織能力」を身につけるための5カ年IT戦略を策定しました。

この改革の過程で起きた象徴的な出来事が、後に「やるやる詐欺事件」と呼ばれる最重要案件の納期遅延です。これはIT側とマーケティング側のコミュニケーション不足、および経営判断の仕組みの欠如が原因でした。この事件を機に、星野代表自らがIT投資の判断を行う仕組みが作られました。2017年からは、代表と情シスが毎月2時間、全投資案件の業務価値やオペレーションについて議論し、意思決定を行う会議が継続されています。この仕組みにより、経営層がITを深く理解し、スピーディな投資判断が可能となる強固な体制が築かれました。

久本氏は、IT基盤を強化する上で「SaaS」「ノーコード」「プロコード」の3つの選択肢を使い分ける戦略をとっています。3つを使い分ける判断基準は、 業務モデリングを行い、ビジネスに適合すれば「SaaS」、合わなければ「ノーコード(kintoneなど)」、それでも対応できない特殊なオペレーションにのみ「プロコード」で開発を行うといいます。さらに、業界の古い慣習に縛られたパッケージをそのまま導入するのではなく、ビジネスをどうデザインすべきかを考える「概念化能力」を組織の核心的な能力として重視しているといいます。

内製化を進める一方でベンダーとの関係も再定義しました。すべての技術を自前で抱えるのではなく、「技術のグリップ(管理)」は自社で行い、高度な専門スキルを持つ外部パートナーには「社員を育ててもらう」という共創関係を築いています。なお、この組織の力が証明されたのがコロナだったといいます。観光産業が危機に瀕する中、同社のIT部門では8人の内製エンジニアを中心に、新たな顧客ニーズに応えるアプリをわずか数週間から数ヵ月という驚異的なスピードで次々とリリースし、経営の危機を乗り越える大きな力となったといいます。

写真:日本オムニチャネル協会 林雅也氏

久本氏はセッションの締めくくりとして、これからの情報システム部門は、デジタル技術を通じて顧客体験や業務プロセスを根本から変え、「イノベーションを牽引する役割」を担うべきだと語りました。受け身のシステム管理ではなく、変化を前提とした組織として自ら新しい世界を提案し、実装していくことこそが、これからの時代に求められる情シスのあり方であると強調しました。


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