デジタルシフトウェーブは2025年11月5日、定例のセミナーを開催しました。今回のテーマは「シン・キャッシュレス決済で買い物が変わる!~3.0世代の決済DX最前線~」。過渡期を迎えるキャッシュレス決済のこれまでの歴史と今後注目のトレンドを解説しました。
クレジットカード決済やスマホ決済、さらにはPayPay、楽天ペイ、代金後払いサービスなど、現金を使わないキャッシュレス決済は多岐にわたります。しかしそもそも、キャッシュレス決済はどんな仕組みで、導入店舗側にはどんなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
今回のセミナーではキャッシュレス決済にフォーカス。ゲストにリスポ 代表取締役の黍田龍平氏を招き、キャッシュレス決済の現在に至るまでの生い立ちや仕組み、さらにはリスポが提供する積立購入サービスがもたらす可能性についても解説しました。
決済DXが導く買い物革命、未来のトレンドとは?
セミナーでは初めに、決済の定義と進化の歴史を整理。決済とは、取引によって発生した債権・債務を解消することであり、決済システムとは、参加者間で資金移動が行われる一連の手段、手続き、ルールのことを指します。この決済システムは、テクノロジーの発展と共に大きな進化を遂げてきたといいます。
さらに決済の歴史も解説。3つの世代に分け、それぞれの傾向や特徴を紹介しました。1.0世代(2000年代以前)は、クレジットカードの登場が象徴されます。特に小売業界(丸井グループやジャスコなど)が店頭カウンターでのカード発行を通じて、金融化を推進した第一歩でした。

2.0世代(2000年代~2010年代)は、EC(電子商取引)の普及が中心となります。楽天市場やAmazonといったオンラインモールが誕生し、実店舗のカウンターからオンラインでのクレカ発行形態へと移行し始めました。この時期にはまた、SuicaやPASMOに代表される電子マネーが登場し、チャージした金額を即時決済できる仕組み(プリペイド式)により、少額利用や交通分野での決済の回転率を大幅に向上させました。
3.0世代(2010年代以降)は、クラウド環境の整備が進んだことで、リスポのようなスタートアップやベンチャー企業が金融事業に参入しやすくなった時代です。特に2018年にはPayPayに代表されるQRコード決済が登場し、「100億円あげちゃうキャンペーン」などを通じて一気に普及しました。3.0世代では、クレジットカード決済端末の導入や維持管理にかかるコストを、QRコードを置くだけという安価な方法で削減し、効率化やコスト削減が進展しました。
現在、決済の進化は効率性やコスト削減を超え、よりプラスアルファな顧客体験の向上へと力を発揮し始めているといいます。
では、最新のトレンドはどこに向いているのか。とりわけ目を惹くのが、給与が銀行振り込みではなくデジタル決済で振り込まれるデジタル給与の解禁、AIが接客を行う会話型コマース、口座間で直接決済するA2A(アカウント・トゥ・アカウント)決済などが挙げられます。

セミナーでは、未来のシームレスな決済体験として、JCBが開発を進めている先進的な実証実験も紹介されました。これは、顧客がコンビニなどのレジの特定の位置に立つだけで、スマートフォンやアプリを通じて自動で決済が完了するというもの。これにより、店員と一切話さずにその場所に立つだけで決済まで完結できる世界が実現します。
「貯金して買う」新決済サービス、リスポが解決する高額商品の購入課題
セミナーでは、ゲストとして登壇したリスポの黍田龍平氏が、同社の決済サービスの特徴や強みなどを紹介しました。同社では後払い(BNPL)とは逆の発想を持つ、積立購入というサービスを提供します。
このサービスは、消費者が欲しい高額商品を購入するために、計画的に少しずつお金を積み立てていき、目標金額に達した時点で商品が手元に届くという仕組みです。購入プロセスは、ECサイトの商品詳細ページに設置された「積立購入する」ボタンから始まり、期間を設定し、クレジットカード情報を入力することで毎月の自動積立または手動積立が可能となります。この間に公式LINEを通じて、積立の進捗確認や決済の通知が行われる仕組みとなっています。
黍田氏はサービス開発の背景について、「高額商品を買う際に後払いで決済すると借金を負ったように感じかねない。分割払いでは金利を負担することになる。分割を嫌う人は少なくない。こうした課題意識が以前よりあり、解消できないか考えていた」と述べます。積立購入サービスはこうした課題を解決し、事業者側と消費者側の双方に大きなメリットをもたらすと黍田氏は強調します。
黍田氏は積立購入サービスによる事業者側と消費者側のメリットをそれぞれ整理し、紹介しました。主なメリットは次の通りです。
●事業者側のメリット
1. 販売機会の拡大と拡充:価格の高さから購入を見送っていた顧客層の購入率を高められる(購入率が4倍以上に向上した事例あり)。
2.未回収リスクの排除:後払いのように債権を伴わないため、未回収リスクがない。
3. 顧客コミュニケーションチャネルの獲得:積立期間を通じて事業者と顧客との間で継続的なコミュニケーションが可能。ロイヤリティの向上施策に活用できる。
4. 健全なブランディング:後払いが「ユーザーに借金をさせている」というイメージを持たれがちなのに対し、積立購入は顧客のことを第一に考えているという姿勢を全面に出したブランディングを展開できる。
●消費者側のメリット
1. 安心しての購入:借金を伴わないため「安心して買える」という心理が働きやすい。
2. 一段上の商品への手が届く:無理のない計画的な買い物により、これまで諦めていた「ちょっと贅沢な」「背伸びしたお買い物」が可能になる。
3. 継続率の高さ:積立の進捗をゲーム感覚で確認できる管理画面(LINE連携)により、顧客の中断率が1%を切る。高い継続率を実現できる。
セミナーでは、積立購入サービスの事例も紹介。具体的にどんな商品で使われているのかについて黍田氏は、「単価3万円以上の高額商品が多い。具体的には25万~50万円のテントサウナ、20万円程度のマッサージチェア、8万円相当の高級手帳などの商品で利用されている。テントサウナの場合、リスポを通じた購入が全体の10%以上を占め、メーカーの売上に大きく貢献している」と言います。さらに、「後払いサービスが与信の関係で高額商品に対応できないケースが多い。こうした高額商品を扱う企業の課題を解決する手段として、積立購入サービスへの関心は高まっている」(同氏)と述べました。
最後に黍田氏は、今後の決済の動向について言及。「2つの方向性が考えられる。1つは、JCBの実証実験のような決済を意識させないシームレス体験がさらに進むこと。もう1つは、リスポが目指す、体験に価値がある決済、すなわち消費者と事業者の関係値を高める方向へと進むこと。決済に関わる人々がどんな体験を望んでいるのか、どんな価値を新たに生まれようとしているのかに目を向けることが、今後の決済市場を見る上では大切だ」と述べました。
さらにリスポの今後の展開については、「現在のメーカー開拓に加え、旅行や百貨店の友の会など、既存産業のDX支援にも支援を広げていきたい」(黍田氏)と市場拡大に意欲を示します。積立購入サービスについては、「エンタメの要素をより強く打ち出したい。具体的には貯金をクエスト型にし、ゲームのように楽しく貯金ができる体験を提供できるようにしたい。これにより、貯金を苦しいものではなく、より楽しく、インセンティブな体験へと変えたい」(黍田氏)と述べました。
【関連リンク】
株式会社リスポ
https://respo.io/
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