デジタルシフトウェーブは2025年9月3日、定例のセミナーを開催しました。今回のテーマは「顧客の“ホンネ”こそ成功のカギ!~顧客をパートナーに変えるコミュニティ戦略~」。顧客との関係強化を図るコミュニティ運営の重要性と、運営を成功に導くポイントを解説しました。
自社や自社ブランドなどに興味を持つ人が集まる「コミュニティ」。多くの企業が顧客をコミュニティへと誘導し、顧客との関係強化を図る「場」として活用するようになっています。しかし、コミュニティの体制構築や継続的な運営は決して容易ではありません。「思うように顧客が集まらない」「コミュニティ化したものの継続して魅力ある企画を打ち出せない」など、多くの企業がコミュニティの運営に課題を抱えています。
では、コミュニティをどう考え、成功させるためにはどんな取り組みに目を向けるべきか。
今回のセミナーでは、コミュニティの必要性を改めて解説するとともに、コミュニティを駆使して顧客との関係をどう築くのかを考察しました。Asobica 取締役副社長で情報経営イノベーション専門職大学 客員教授の小父内信也氏をゲストに招き、これからのコミュニティの在り方を考えました。
現代の経営には顧客と対等な関係が不可欠に
小父内氏はまず、Asobica社がビジョンとして掲げる「顧客中心の経営をスタンダードにする」という言葉を紹介。社内ではこれを「コキャチュウ」というキャッチーな言葉で浸透させているそうです。では、なぜ今「顧客中心の経営」がこれほどまでに不可欠なのでしょうか。小父内氏はその背景に「量の限界」と「選択の多さ」という2つの大きな環境変化があると指摘します。
「量の限界」とは、人口減少や市場の成熟により、新規顧客の獲得が頭打ちになっている状況を指します。これにより、既存顧客一人ひとりのLTV(顧客生涯価値)を最大化することの重要性が増しています。もう一方の「選択の多さ」は、競合の多様化によって製品やサービスでの差別化が困難になり、情報爆発によって生活者が「誰の声を信じるか」を重視するようになった時代性を表しています。友人や家族、信頼するファンといった身近な存在、いわゆる「Fファクター」の声が購買決定の重要な要因となり、企業と顧客との「信頼関係」がブランド選択における最大の決め手になっているのです。
こうした時代背景から、マーケティングの考え方も大きく転換する必要があると小父内氏は述べます。従来の、認知から購買へと顧客数が先細りしていく「ファネル型」のモデルではなく、ロイヤルカスタマーを頂点に置き、その人たちの口コミによって新たな顧客が広がっていく「ピラミッド型」のモデルへと移行すべきだと強調しました。
その根拠として、少数のロイヤルカスタマーが売上の大部分を支える「パレートの法則」を挙げ、具体的なデータを示しました。「カゴメの熱狂的なファンの方は、上位4%の人が売上の半分(53%)を立てていると聞いた。ヤッホーブルーイングさんでは、上位10%の人が売上の6割を作っているという。このような強力なファン、すなわちロイヤルカスタマーをいかに育成し、関係を深めていくかが事業成長の鍵を握る」(小父内氏)と述べます。

さらに小父内氏は、自身が定義する「顧客中心の経営」について、「顧客を単に取引先と見るのではなく、一緒に会社を育てるパートナーと捉える経営である。そのパートナーと深い信頼関係を築き、意見を交わしながら商品やブランドを築き上げ、事業を成長させていく」と指摘。「顧客を一方的に神様として奉るのではなく、対等な仲間として共に価値を創り上げていく。このパートナーシップこそが、現代における経営の核となるべき思想である」と強調しました。
では、顧客中心の経営を実現するためには何が必要か。同氏は「顧客体験(CX)の最適化」が不可欠だと続けます。「顧客の期待を超える体験を提供するためには、顧客を深く理解すること、すなわち顧客の本音に触れることが重要だ」(小父内氏)と述べます。小父内氏は、顧客から得られる情報を4象限で整理し、特に注目すべきは「人を動かす隠れた本音=インサイト」であると説明。「クレームや要望のように表面化しているニーズだけでなく、顧客自身も意識していないような潜在的な欲求をいかに引き出すかが、企業の競争優位に繋がる」(小父内氏)と分析します。
この「本音」が集まる場所こそがコミュニティであり、そこで得られる顧客が能動的に提供してくれるリッチな情報「ゼロパーティデータ」には、計り知れない価値があると小父内氏は強調します。
こうした情報を活用しやすくするのが、Asobicaが提供するプラットフォーム「coorum(コーラム)」です。本音データを起点に企業の意思決定を変革する仕組みです。コミュニティやリサーチ機能を通じて顧客の本音を「収集」し、独自開発の「本音AI」を用いて「分析」、そして商品開発やプロモーションといった施策への「活用」までをワンストップで支援します。実際にcoorumを活用することで、「売上1.6倍の効果やファン起点の商品開発による売上5倍、リサーチコスト3000万円削減といった具体的な成果が生まれている」(小父内氏)と述べました。

さらに小父内氏は、コミュニティがもたらす見過ごされがちながら非常に重要な効果として「社内エンゲージメントの向上」を挙げました。「ユーザー会でお客様と話をしたら、ものすごい感謝された。『いつもありがとうございます』と。これまではオフラインの場での体験だったが、これをオンラインコミュニティで再現できるようになった。顧客からの感謝や喜びの声が可視化され、全社で共有されることで、社員の会社に対するロイヤルティや仕事への誇りが醸成されるという、強力な副次的効果を見込めるようになる」(小父内氏)と述べました。
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