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急加速するAI活用の最前線【IT勉強会レポート】

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日本オムニチャネル協会は2023年7月11日、定例のIT勉強会をオンライン開催しました。第4回となる今回のテーマは「Chat GPTで急加速したビジネスでのAI活用」。Chat GPTの登場を機にAIの利用が常態化しつつある中、企業はAIをどう使いこなすべきか、AIを活用する上でのポイントとは。IT勉強会では具体的な活用法を考えるとともに、AIを駆使したソリューションを紹介しました。

IT勉強会にはゲストとして、ギブリー オペレーションDX事業部の岡本哲英氏、Cuon Sales & Consulting部 マネージャの伊藤翔氏、日本マイクロソフト 業務執行役員 パートナー事業本部 パートナー技術統括本部長の伊藤信博氏が登壇。各社が提供するAIソリューションの概要や強みを紹介しました。さらに司会兼モデレータとして、日本オムニチャネル協会で専務理事を務める林雅也氏、同協会で顧客体験(CX)部会のリーダーを務める郡司昇氏も登壇。各社のソリューションについて質問しつつ、具体的な活用法などを議論しました。

AIの台頭と人間の新たな役割

写真1:IT勉強会の冒頭に登壇した郡司氏。AI時代に人が何を果たすべきかを解説した

IT勉強会では最初に、日本オムニチャネル協会 CX部会リーダーの郡司昇氏が講演。AIと人の役割について説明しました。

同氏はAIを改めて定義するとともに、AIを使いこなすためのポイントに言及します。「何のためにAIを使うのか。目的を明確にした上で導入することが欠かせない。AIとツールと位置付け、目的を達成する手段として活用することが大切だ。さらに、精度を高めるためにはデータの質や量にも配慮し、目的を達成する最適なAIモデルを探し出すことにも目を向けなければならない」と考察します。その上で、AIが算出した結果を解釈し、ビジネスに応用することが必要だと郡司氏は指摘します。

一方、人が果たす役割にも言及します。「ほんの5年前まで、AIにできることは限られていた。しかし現在、AIは多くの業務をこなせるようになった。人にしかできないと思われていた多くの業務をAIが担う時代になった。Chat GPTの登場により、その勢いはさらに加速している。人が果たすべき役割は以前と比べて小さくなりつつある」(郡司氏)と指摘します。今後は独自のアイデアを描けない人は淘汰されると推察します。

では、AIにはない人ならではの強みはどこにあるのか。郡司氏は、「主観」「抽象」「感情」の3つが強みだと主張します。「AIは『論理』や『具体』、『客観』といった領域に強みを打ち出す。人がこの領域で勝負するのは必ずしも得策ではない。人ならではの強みである『主観』や『抽象』、『感情』に目を向けるべきだ。もっとも、これらはただ語るだけでは意味はない。大切なのはAIを徹底的に活用する姿勢だ。『主観』『抽象』『感情』の人らしさを表現、主張するにもAIを利用することを考慮すべきだ。『主観』をどう膨らませるか、『抽象』をどう理解しやすく説明するか、『感情』をどう表現するかなど、AIを駆使して独自の強みを考えるべきである」(郡司氏)と、AIを最大限活用することが人の強みを引き出せると指摘しました。

Chat GPTを使った法人向け業務支援サービス

写真2:法人用途に特化した生成AIを活用すべきと訴えたギブリーの岡本哲英氏

続いて登壇したのは、ギブリーの岡本哲英氏。「法人におけるChat GPTの活用可能性」というテーマで講演しました。

岡本氏は冒頭、DXや自動化といった言葉の概念がChat GPTによって変わると訴えました。「自動化といえば、これまでならRPAツールやExcelのマクロ機能などが代表格だった。しかしこれらを使いこなすには、時間もコストもかかりがちだ。その点、Chat GPTに代表される生成AIの場合、導入から運用までの敷居は低い。すぐに使い始められるのがメリットだ。質問しさえすれば、ゼロから形作れるのも強みである」(岡本氏)と指摘。DXや自動化といった考え方が、生成AIの登場によってより身近に感じられるようになると推察します。

そんな中、企業は生成AIをどう使いこなすべきか。その答えの1つとして、岡本氏は同社の法人向けサービス「法人GAI」を提案。法人向けに特化したツールを活用する必要性を訴求します。「法人GAI」は、Chat GPTと同じ言語モデルを用いた企業向けチャットサービスです。自然文で質問を投げかければ、チャット経由で適切な答えを導き出します。従業員同士のチャットももちろん可能で、部署や組織ごとの運用にも向きます。チャット上に投稿した内容や、AIが導き出した回答が外部に漏洩しないよう、十分なセキュリティ機能を備えているのも特徴です。

手間がかかりがちな文章の作成を支援できるのが売りです。「法人GAI」は、AIにどう質問すべきかをまとめた例文を多数用意。質問例文を引用し、その内容を修正した上で質問すれば、適切な回答を導き出せます。「生成AIから適切な回答を得るには、質問でどう聞くかが重要となる。『法人GAI』は適切な回答を得やすくする例文をあらかじめ実装し、生成AI初心者でも求める回答を得られるようにしている」(岡本氏)といいます。実際にIT勉強会では「法人GAI」のデモを実施し、広報用のプレスリリースを作成するまでの使い方を紹介しました。

そのほか、長文の議事録を「法人GAI」を使って要約したり、顧客からのメール内容を踏まえた返信用のお礼メールを作成したりすることも可能です。「導入企業の中には、アイデアを得るヒントに使ったり、飲料水のレシピを開発したりするのに利用している。利用者の興味・関心を引くコピーを制作するのに利用する企業もある」(岡本氏)と、汎用性の高さもメリットだと続けました。

大規模言語モデルがWeb業界に与える影響

写真3:LLMを使ってWebの機能を拡充すべきと訴えたCuonの伊藤翔氏

Cuonの伊藤翔氏は、「大規模言語モデル(LLM)がWeb業界に与える影響」をテーマに講演しました。伊藤氏自身がWeb業界に身を置く中、LLMがどんな影響を与えるのか、Web業界がどんな方向に向かうのかなどを推察しました。

伊藤氏は視聴者にLLMを改めて解説するとともに、Chat GPTの可能性に言及しました。「LLMは巨大なデータセットとディープラーニング技術の上に成り立つ。Chat GPTと組み合わせて利用すれば、人に近い自然な会話さえ可能になる」(伊藤氏)と考察。人と会話するような感覚でWebサイトから情報収集できる可能性に触れました。

LLMの可能性にも言及します。「LLMを使えば、テキストを数値化できる。例えば、喜怒哀楽といった感情がどの程度含まれているのかをLLMをもとに算出できる。読書感想文の中に喜怒哀楽の『喜』の表現がどの程度含まれているのかを数値化するといったことが可能だ」(伊藤氏)と指摘。教師が生徒の読書感想文を読んで主観的に評価するのではなく、LLMという客観的な指標を使って生徒全員の読書感想文を評価できるようになると伊藤氏は考察します。

さらに、テキストとテキストの類似度を数値化するといったことも可能です。「似ている人や商品を探すときに使える。例えば、転職希望者の膨大な履歴書・職務経歴書情報の中から、自社の事業やビジョンに合致する人材を抽出するといった用途に使える。ECサイトに掲載する商品情報をもとに、その商品を購入した人がほかにどんな商品を好むのかを割り出せる。商品情報の類似度をもとに、どんな商品をレコメンドすべきかも抽出できる」(伊藤氏)と、LLMをWeb上で活用する可能性を提起します。「当社はWebサイトやWebサービスの受託開発を手掛けるが、今後は生成AIをどう実装するかに目を向ける企業が増えるだろう。当社は今度、こうした企業を支援する取り組みに注力したい」(伊藤氏)。

マイクロソフトが考える「AIテクノロジーが実現すること」

写真4:OpenAIと連携する製品・サービス群を強みに打ち出す日本マイクロソフトの伊藤信博氏

最後に登壇した日本マイクロソフトの伊藤信博氏は、「AIテクノロジーが実現すること」というテーマで講義しました。同氏は冒頭、AIが市場にどれだけのインパクトを与えるかを紹介。2030年までにAIが世界で貢献する経済規模は15.3兆ドルになると試算し、さまざまな業界でAIが使われることに触れました。なお、15.3兆ドルという数字は、中国とインドのGDP(国内総生産)を合わせた額に匹敵すると言います。

そんな中、マイクロソフトもAIに積極的な姿勢を打ち出します。同社のあらゆる製品・サービスに対し、AI機能を実装していくと言います。「マイクロソフトは、Chat GPTを開発するOpenAIと2019年から協議を重ねてきた。その結果、マイクロソフトの製品・サービスにOpenAIが開発した機能を搭載できるようにした」(伊藤氏)と言います。企業が利用することを想定し、セキュアな環境を前提としたAI機能を強みにします。

では、どんな用途での利用を想定するのか。IT勉強会で伊藤氏は、生成AIの得意領域として「社内チャットボット」「コールセンターでの分析」「マーケティングのリサーチ」という3つを指摘します。一部の先進企業で導入が進むものの、今後はこの3つの領域を中心に生成AIは普及が加速すると言います。なお、IT勉強会ではこれら領域での活用事例も紹介。実際にどう使われているのかを製品・サービスの画面例を参考にしながら詳しく解説しました。

AIを搭載する具体的なサービスとして、「Azure OpenAI Service」にも言及しました。「Azure OpenAI Service」は、OpenAI が開発した言語モデルにアクセス可能なサービスです。AI機能を備えるアプリやサービスを構築したい開発者向けのサービスとなります。マイクロソフトでは「Azure OpenAI Service」を使ったアプリ開発を支援するリファレンスアーキテクチャを公開。ベースとなるアーキテクチャを用意することで、業務に適したアプリやサービスを開発しやすくしています。

なおマイクロソフトでは、OffceやTeamsなどに生成AI機能を随時追加していく考えです。検索サービス「Bing」には自然言語処理AIモデルの上位版である「GPT-4」をすでに統合。利用者に対し、スムーズな検索体験を提供できるようにしています。「マイクロソフトは、AIの計り知れない可能性を追求する。これにより、地球上のすべての個人とすべての企業がより多くのことを達成できるよう支援する」(伊藤氏)と、AIを軸に企業活動を支援する姿勢を改めて強調しました。

関連リンク
株式会社ギブリー
株式会社Cuon
日本マイクロソフト株式会社

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