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コア業務拡大に追随する基幹システム、ブラックボックス化を脱却するモダナイゼーションも重要に【IT勉強会レポート】

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日本オムニチャネル協会は2023年12月12日、定例のウェビナー「IT勉強会」を開催しました。特定領域のITの動向や製品・サービスを解説する勉強会で、今回は基幹システムの動向について解説しました。

企業の事業を根底から支える基幹システム。ERPを筆頭に、自社にとっての基幹事業を支援するさまざまなツールが基幹システムとして使われるようになっています。しかし、そもそも「基幹システム」とはどの業務を支援するためのシステムなのか。どんなシステムを「基幹」と呼ぶのか。言葉の定義は必ずしも明確ではありません。

さらに、基幹システムを語る上で外せないのが「ブラックボックス化」です。改修しようにも、どこから手を付ければいいか分からない、どこまで影響が及ぶのかが分からないなどを理由にアップデートできないケースが目立ちます。その結果、古い基幹システムを使い続けるといった悪循環に陥る企業も少なくありません。

では、基幹システムをどう捉え、DXを支えるシステムとして運用できるようにすべきか。次代に合った基幹システムとはどんなシステム像を目指すべきか…。

今回の「IT勉強会」では、基幹システムを開発、提供する企業3社が登壇。基幹システムを取り巻く課題や活用方法、各社の支援ソリューションなどを紹介しました。

拡大する基幹業務の領域を見極めよ

最初に登壇したのは、日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 アソシエイトアドバイザーで、日本オムニチャネル協会のフェローを務める藤野敏広氏。「基幹システムとは」と題し、基幹システムを取り巻く現状について解説しました。

そもそも基幹システムとはどんなシステムを指すのか。藤野氏は“辞書的な説明”と補足しつつ、基幹システムを次のように説明します。

「販売管理」「在庫管理」「会計」など企業がビジネスを遂行するために必須である業務を効率化するためのシステム。1つひとつを基幹システムと呼びます。バックオフィス系、業務系と区別することもあります。重要なシステムであるため、「高い信頼性と可用性」「処理能力」「セキュリティ」などが求められる。

もっとも、基幹システムに当てはまるものは拡大しつつあると藤野氏は指摘します。「自社の業務が拡大すれば、基幹システムの対象も拡大する。さらに、サービスや技術が発展すれば、その対象も拡大することになる。ビジネスを遂行するために必須の業務であるかどうかが、基幹システムであるかどうかの線引きとなる」と説明します。自社にとって何がコア業務なのかを考えることで、自社における基幹システムを定義しやすくなるといいます。

写真:日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 アソシエイトアドバイザーの藤野敏広氏

さらに藤野氏は、代表的な基幹システムとしてERPの役割も解説。その上で、ERPが備える機能をきちんと見極めることが大切だと訴えます。「ERPはこれまで、企業の基幹業務を支える役割を担ってきた。具体的には会計や販売管理、在庫管理、生産管理といった機能を備え、多くの企業にとってのコア業務を支援してきた。しかし、時代とともにその役割は変わりつつある。企業の中には、顧客管理や人事(タレント)管理、SCMなどを基幹業務と考える動きがある。ERPは今後、これらの業務を支援する機能を追加したり、関連システムと連携したりするようになるかもしれない。企業は何が自社にとって重要な業務なのかを見極めた上で、その業務を支援する基幹システムを構築するのが望ましい」(藤野氏)と訴えました。

小売・流通向け機能を拡充するヴィンクスのソリューション

では、基幹システムとなるソリューションはどんな機能を備え、どう進化しているのか。セミナーでは具体的なソリューションも紹介しました。

藤野氏に続いて登壇したのは、ヴィンクス 執行役員、ホロン 取締役、Ui2 取締役の稲葉将氏。「基幹システム(MD、販売管理システム)・量販店(SM)・専門店」というテーマで、ヴィンクスの事業内容や取り扱うソリューションを紹介しました。

ヴィンクスは流通小売業に特化したシステムやサービスなどを開発、提供する企業。タイやベトナムに現地法人を構えるなど、グローバルな展開を加速させています。

そんな同社は、小売業務向けの基幹システム「MDware」を提供しています。特徴について稲葉氏は、「モジュール化し、必要な機能だけ導入するといった使い方が可能だ。基幹システムは一般的に、豊富な機能を備え、大規模なシステムになりやすい。しかしMDwareの場合、マスタ管理や販促、発注などの業務ごとにシステムを構築し、段階的に機能を拡張できる」(稲葉氏)と説明します。なお、MDwareでは、財務や人事、BIなどの外部システムと連携した運用や、在庫情報などのリアルタイム化なども可能にします。全国の量販店などへの豊富な導入実績も強みとします。

写真:ヴィンクス 執行役員、ホロン 取締役、Ui2 取締役の稲葉将氏

さらに、専門店向けの基幹システム「AP-Vision/Cloud」の機能についても紹介しました。販売管理や在庫管理、発注管理など、小売業界で必要な機能を網羅するシステムで、「流通と卸売・小売の両業態のシステム領域をカバーするのが特徴で、MD(品揃え)機能や商品調達(国内仕入・海外仕入・加工調達)機能などを備える。さらに、店頭の品揃えが適正となるようなさまざまな品揃えパターンを用意する。これにより、店舗在庫を適正にコントロールできるようにする」(稲葉氏)といいます。他のシステムで操作するためのインターフェイスを用意し、既存ツールを運用する形で「AP-Vision/Cloud」も使えるようにするなど、柔軟な導入・運用も可能にするといいます。

販売スタッフの接客業務を支援する東芝テックの「ShoP Unify」

次に登壇したのは、東芝テック リテール・ソリューション事業本部 ソリューション開発センター 専門店・SCソリューション商品部 専門店商品担当の松本崇秀氏。「基幹システムの大改修なくOMOを実現できるマイクロサービス」と題し、同社の小売業向けソリューション「ShoP Unify」を紹介しました。

「ShoP Unify」は、店舗のスタッフなどが利用することを想定した接客支援システム。スマートフォンを使って在庫確認や商品の引き当てなどを実施できます。

松本氏は「ShoP Unify」が求められる背景について、「小売業におけるEC化率は年々上昇している。もはやオムニチャネル対応が必須の時代となった。しかし、オムニチャネルを支える基幹システムに目を向けると、改修や開発コストが増大になりかねない。そもそも何から手をつければいいのかさえ分からない企業も多い。こうした小売事業者の課題を解消することを想定して開発したのが『ShoP Unify』である」(松本氏)と説明します。

写真:東芝テック リテール・ソリューション事業本部 ソリューション開発センター 専門店・SCソリューション商品部 専門店商品担当の松本崇秀氏

なお、「Shop Unify」では利用者からのECサイト経由の商品試着予約情報を通知したり、在庫取置作業の進捗を可視化したりし、販売スタッフのメールチェック漏れや作業ミスを防げるようにします。さらに、自店舗の在庫欠品時に他店舗や倉庫に商品を引き当てることも可能。これにより、販売機会の喪失を防ぎ、在庫を最大限に活用できるようにします。在庫効率を高められることから、店舗間の移動コスト削減や店舗業務の効率化なども見込めます。

セミナーでは、実際に「Shop Unify」の画面を見せながら、作業の流れを解説。想定される利用シーンを挙げ、販売スタッフの業務がどう改善されるのかを説明しました。松本氏は「ShoP Unify」を導入するメリットとして、「小売店における基幹システムを大改修なく導入できる。これにより実現が困難だったオムニチャネルもスムーズに進められる。さらに、「ShoP Unify」はマイクロサービス化により、開発コストが従来の半分以下で済むのも利点の1つだ。最短3カ月で導入できる」(松本氏)と強調します。さらに、「オムニチャネル時代では、店舗の販売スタッフを正当に評価することが求められる。『ShoP Unify』を使えば、販売スタッフの業務を可視化し、LTV向上も見込めるようになる。『ShoP Unify』を活用することで、小売店はこうしたバリューを提供できる」(松本氏)とまとめました。

既存環境を見直すモダナイゼーションを支援する“IBMアプローチ”とは

最後に藤野氏が再び登壇し、「基幹システムの歴史と展望」をテーマに講演しました。基幹システムを取り巻く課題を整理するとともに、IBMが打ち出すIT環境を移行する支援サービスの概要を解説しました。

藤野氏は、老朽化する基幹システムを運用し続けることに問題提起します。「経済産業省が2018年に公開したレポートでは、老朽化、複雑化、ブラックボックス化した既存システムがDXの障壁になると警告している。さらに、社会に目を向けると人口構造や社会構造が大きく変わり、こうした動きに追随する業務への転換も求められる。しかし業務を見直したくても、業務を支援する既存システムが手を付けられない状態では業務すら変えられない。企業は、基幹システムを含む既存環境をどうアップデートするか、時代に追随できるようにするかときちんと向き合わなければならない」(藤野氏)と指摘します。

1990年以前に導入が進んだメインフレームについても、「システムを理解する人が減りつつある。社内にはソースコードやドキュメントすらないケースも多い。手作業の処理が今なお多く、運用コストや改修コストも増大しつつある。いくら安定稼働しているとはいえ、今後を見据えた改修に踏み切らなければ時代に追随できなくなる」(藤野氏)と続けます。

こうした現状を打開するため、藤野氏は既存システムを新たな環境へ移行するモダナイゼーションの必要性を訴求します。「現行のIT環境を新たな環境へ移行するには、戦略(目的)と方針を明確に立て、計画に沿ったモダナイゼーションが必要だ。現行ITに関する情報を収集し、アプリケーションやシステムを可視化する。その上で必要な技術やアーキテクチャを検討し、実行計画に基づくモダナイゼーションを進めるのが望ましい」(藤野氏)と、具体的な移行方法を提言します。

さらにIBMとして、こうした移行を包括的に支援する点に言及します。「当社では『IBMアプローチ』と呼ぶ移行支援サービスを提供する。既存環境をどう変えるのかといった戦略・構想策定から、実際にITを移行する設計・開発・テスト・移行、さらには移行後の運用も含め、デジタル変革をトータルに支援する。当社には長年の実績と知見に基づくモダナイゼーション手法やツールを用意する。企業が抱えるシステムの課題に応じた対応策を打ち出せるのが強みだ。モダナイゼーションに限らず、IT基盤を見直すマイグレーションやIT基盤を統廃合するラショナリゼーションなど、さまざまな手法を駆使して理想的なIT環境を構築できるようにする」(藤野氏)と述べました。


関連リンク
日本オムニチャネル協会
日本アイ・ビー・エム株式会社
株式会社ヴィンクス
東芝テック株式会社

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