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D2Cビジネスの根幹は双方向コミュニケーションに基づく商品づくり/日本オムニチャネル協会×DXマガジン共催セミナー

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日本オムニチャネル協会は2021年12月20日、DXマガジンと共催セミナーを開催しました。第3弾となる今回のテーマは「メーカー必見!D2Cとメーカー直販の違いについて」。D2Cの取り組みが注目される一方で、「メーカー直販と何が違うのか」と疑問を抱く人も少なくありません。そこでセミナーでは、D2Cの基本からD2Cビジネスの可能性、具体的な事例などを紹介しました。

双方向コミュニケーションがD2Cの肝

 セミナー前半は、「D2Cとメーカー直販の違いについて」と題した講演を実施。日本オムニチャネル協会の売場分科会リーダーで、ストリートメディアのシニアコンサルタント、店舗のICT活用研究所代表である郡司昇氏が登壇し、D2Cビジネスの生まれた経緯や現状を紹介しました。
そもそも「D2C」とは何か。D2Cは「Direct to Consumer」の略で、生産者が顧客と直接取引を行うビジネスを指します。これに対し「メーカー直販」は、企業が通常の流通機構を通さず、客に直接販売することを指します。似たような意味を持つ言葉ですが、郡司氏は「メーカー直販は、品物を売る『販売』であるのに対し、D2Cは、品物などを交換する『取引』である点が異なる。作り手である生産者と顧客との接点を内包するのがD2Cである。D2Cはメーカー直販に含まれる考え方だが、顧客との接点の有無によって差異化される」と説明します。
これらを理解するための前提条件として、郡司氏は「流通の仕組みを理解することが欠かせない」と指摘します。さらに、「基本的なことだが、流通とは生産と消費を結ぶもの。これらの間に入り、双方の『隔たり』を埋める役割を担うのが小売である」などと流通の仕組みを説明。近年はITやロジスティクスの技術発展に伴い、小売を介さずとも隔たりを埋められるようになっていると続けます。
 D2Cが生まれた経緯も紹介しました。「D2Cはもともと、米国のIT系スタートアップ企業が、SNSを使ったデジタルマーケティングを販売戦略に取り入れたことが起源と言われる。資本力や販路がないスタートアップ企業がデジタルマーケティングを発展させた結果がD2Cである」(郡司氏)と説明。さらにこうした施策を展開する米企業として、マットレスを製造・販売するCasper、コスメ用品を扱うGlossierなどの取り組みも紹介しました。
では日本ではどうか。郡司氏は、「メーカー直販という形のEC通販は古くからあった。しかし大手メーカーの多くが小売企業に配慮し、販促に力を入れられない事業だった。しかし低コストで顧客とつながるメリットやSNSの発展とともに、2010年代にはD2C企業が登場した」と経緯を説明します。顧客接点を育てて成長する中小企業が増え、D2Cが注目されるようになったと言います。
なお、日本オムニチャネル協会でも、D2Cについて議論する機会は少なくないと言います。郡司氏は協会内で議論した内容について、「D2Cのメリットは『顧客接点』を持てること。顧客の声を次の商品開発に活かせる。これにより顧客のファン化も見込める。一方通行の情報発信ではなく、インタラクティブ(双方向)であることがD2Cでは重要だ」と指摘します。さらに、自社で売場をコントロールできるのもメリットと同氏は続けます。「小売企業に任せることなく、自社のアイデアを売場に反映できる。ECサイトに限らず、オフラインの自社店舗やポップアップ店舗でもD2Cを実現できる可能性がある」と、D2Cの強みをまとめました。

消費者ニーズを開発に反映せよ

 セミナー後半は「激論 D2Cビジネス」と題したパネルディスカッションを実施。郡司氏に加え、日本オムニチャネル協会会長でデジタルシフトウェーブ代表取締役である鈴木康弘氏、同協会理事でオムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎氏、同協会フェローでゼロゼロウエスト代表の大西理氏が議論しました。
写真:パネルディスカッションに参加した日本オムニチャネ...

写真:パネルディスカッションに参加した日本オムニチャネル協会会長 デジタルシフトウェーブ代表取締役 鈴木康弘氏(写真左上)、同協会理事 オムニチャネルコンサルタント 逸見光次郎氏(写真右上)、同協会フェロー ゼロゼロウエスト代表 大西理氏(写真左下)、同協会 売場分科会リーダー ストリートメディアのシニアコンサルタント 店舗のICT活用研究所代表 郡司昇氏

 ディスカッションに先立ち、大西氏は双方向コミュニケーションの重要性を指摘します。「D2Cで大事なのは顧客との双方向のコミュニケーションだ。生産者が地道に消費者の声に答える取り組みや姿勢こそ欠かせない。例えば、先ほど紹介されたGlossier。創業当時、創業者が消費者のSNS上のコメントに1件ずつ答えていたと聞く。こうした丁寧な対応が成功要因の1つだ」(大西氏)と分析します。
これに対し逸見氏は、類似する事例としてFABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)を紹介。「オーダースーツを製造するFABRIC TOKYOも顧客の声を大事にする。国内に製造拠点を設け、開発段階から顧客の意見を反映させやすくしている。消費者が今、何を欲しているのかも商品に迅速に反映させられる。アプリを使って顧客との接点を持つ強みを開発に活かしたケースだ」と続けます。
鈴木氏も、「パーソナライズという言葉が使われ出したように、消費者ニーズを商品開発に活かす体制の重要性が増している。小売に限ると、これまでは売場面積や全国展開などの規模が消費者に受け入れられる要素の1つだった。しかし現在は、取得したデータをもとに消費者のニーズを満たせられるかが重視される。D2Cを展開する小規模な企業は、資本力や規模、販売網では大企業にかなわない。だからこそ、徹底して消費者ニーズに目を向けることで成功しているのではないか」と分析します。
大西氏も、データの重要性を指摘します。「D2Cが飛躍した要因の1つがデータの分析環境だ。アプリやECサイトを介し、顧客の行動データを取得できるようになった。購買履歴のみならず、どんな商品に興味を持ったのか、何を探しているのかなども把握できる。CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)を使えば、顧客をさらに深く洞察できる。消費者の潜在的なニーズすら製品開発に反映させられる」(大西氏)と言います。  この指摘について逸見氏は、「ここでも大事なのは『双方向』ではないか。取得データを製品に反映させなければ顧客離れを起こしかねない。取得したデータをダイレクトメールに使っているだけではD2Cとは言い難い。消費者の欲しい商品を届けられるようにすることがD2Cでは大事ではないか」と続けました。
一方、「D2Cは商品には独自性がないと成立しないのか」、というテーマでも議論を展開しました。
大西氏は、自身が携わった以前の調査結果を引き合いに出し、「当時調査したD2Cブランドの4分の1はすでに消滅し、4分の1は在庫過多なのかセール品ばかり扱っている。当然かもしれないが継続するのは難しい。当時はインフルエンサーを積極的に利用したブランドも目立ったが、こうした流行りを取り入れたブランドも生き残るのは難しい」と分析します。
その一方で、「社会課題やパーソナルな悩みを解決することに特化したブランドは生き残っている」(大西氏)と続けます。代表的なケースとして、身長155センチメートル以下の小柄な女性向けのファッションブランド「COHINA(コヒナ)」を例示しました。「当初は毎日のようにインスタライブを実施し、消費者の悩みを解決していた。『小さいサイズ』や『大きいサイズ』といったカテゴリを設けるアパレルは以前からあるが、COHINAが作り出しているのはワクワク感。インターネットでワクワク感を共有できるようにしたのが成功要因の1つではないか」と強調します。
逸見氏も、「機能的に『155センチメートル以下の人向け』と訴求するだけでは共感を得られない。アパレルならば、そこに『かわいさ』や『うれしさ』があるかどうかが求められる。いかに当事者意識で洋服を作れるか。D2Cブランドを展開する企業に不可欠な要素だ」と指摘します。
D2Cブランドを成功させる要因の1つとしてインフルエンサーが大事という声もあります。これに対し大西氏は、「Glossierのように創業者がもともとインフルエンサーというケースもある。しかしこうした企業は稀。日本に限ると、タレントをインフルエンサーにするケースが少なくない。タレントがD2Cブランドに深く関わって事例として、元AKBの小嶋陽菜さんが展開するファッションブランド『Her lip to』がある。インフルエンサーを効果的に活用したD2Cブランドとして数少ない成功事例の1つである」と話します。
一方、逸見氏はインフルエンサーを利用するリスクについて言及します。「ブランドがインフルエンサー色に染まりやすいのがリスク。もしインフルエンサーの嗜好や考え方が変わったら、ブランドイメージを棄損しかねない」(逸見氏)と指摘します。そこで、インフルエンサーを育てるという考え方も大事だと訴求します。「例えば、アウトドアウエアや防寒ウエアなどを展開するワークマンの場合、顧客がインフルエンサーとして有名になってもらうための施策を打ち出します。自社商品を使い、どう思うのか、どう着こなすかを発信させる施策を展開し、多くの顧客をインフルエンサーにしようとしている」(逸見氏)と、強い影響力を持つインフルエンサーに依存しすぎない施策も必要だと指摘しました。さらに商売っ気を漂わさず、自社に近い関係者などを情報発信者として巻き込むことも大事だとまとめました。
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