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一文には一要素だけ

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新規事業を成功させるためには、周囲を巻き込み賛同を得られる企画書や資料のクオリティこそが重要。「意味が分からない」「理解しにくい」という文章を並べるだけでは事業推進すらままなりません。では簡潔で要領を得た文章で「伝える」ためにはどんな工夫が必要か。【DX時代を生き抜く文章術 第4回】は、文章の基本ですが忘れがちな「一文一要素」の考え方を紹介します。なお、本連載は「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」(CCCメディアハウス)の内容をもとに編集しております。

 「伝えたいことを盛り込んだのに、おかしな表現になった」「意図がうまく伝わらない」。そんな人は、語順や言葉の選び方など簡単なポイントを押さえるだけで、「伝わらない」「読みづらい」「不自然な」文章の原因が解消できるはずです。  最初の基本は「一文に入れる要素は1つに絞る」ということ。結果として、「一文は60~100字以内に収める」ことにつながります。  文意を明確にするには、1つの文で1つの要素を述べるのが原則です。一文は60~100文字以内でまとめ、要素が増えたら文を分けます。その際、4~5行で改行をしたり、接続詞をうまく活用したりすれば、話の展開が簡潔でわかりやすくなります。1文を1要素にする工夫は主語と述語を近づけることです。これによって文章のねじれもなくなります。長い文では複数の主語や述語が交錯し、互いが噛み合わない〝ねじれ文〟が生じる場合があります。  例えば「我が社の経営理念は、顧客第一主義を貫き日本一の売上高を上げたい」という文章。主語の「経営理念は」と述語の「日本一の売上高を上げたい」がつながっていません。述語が動詞になっているのが問題です。  この場合、「我が社の経営理念は、日本一の売上高を目指して顧客第一主義を貫くことです」、あるいは「我が社の経営理念は、顧客第一主義を貫き日本一の売上高を目指すことです」と、主語を名詞の述語で受けるのが正しいでしょう。要素を整理して短い文に分解すると、対応すべき主語と述語の距離が近づきます。文意がしっかり通って読みやすくなります。  次の「例文」を比べてみましょう。 ・例文1
 バブル経済崩壊後、百貨店業界は、高額商品の需要が減るなど消費の減退に直面すると同時に、ニトリやユニクロといったSPA(製造小売り)の台頭、郊外のショッピングモールの出店増加があり、地方店の相次ぐ閉鎖を余儀なくされるなど、市場規模はピーク(1991年)の半分以下に落ち込んだ。 ・例文2
 バブル経済崩壊後、百貨店市場は大きく縮小した。高額商品の需要が減る一方で、ニトリやユニクロといったSPA(製造小売り)の台頭、郊外にショッピングモールが出店増加したためだ。この結果、地方店の相次ぐ閉鎖に追い込まれ、市場規模はピーク(1991年)の半分以下に落ち込んだ。  また、2通りの意味に解釈できてしまう文章も避けなければなりません。  例えば「日本企業の多くは、脱炭素技術を欧米企業のように活用していない」。  この文章は、「欧米企業は脱炭素技術を活用している」と「欧米企業は脱炭素技術を活用していない」のどちらの解釈も可能です。 「~のように…ない」というパターンは曖昧な表現の代表的なものです。   「日本企業だけが活用していない」ということを表現したければ、「~と違って」「~とは対照的に」などを使います。「日本企業の多くは、脱炭素技術を欧米企業と違って活用していない」といった具合です。より簡単に直すなら、「~のように」に対比を表す「は」を加えて「~のようには」とすれば、「~と違って」の意味になります(「欧米企業のようには活用していない」)。  一方、「日本企業も欧米企業も活用していない」と言いたいのなら、「~のように」の代わりに「~と同じく」を入れるとよいでしょう(「日本企業の多くは、脱炭素技術を欧米企業と同じく活用していない」)。  ビジネス文章では極力受け身表現を使わないことも大切です。受け身表現は主語を曖昧にしがちだからです。客観性を意図的に持たせる場合はよいのですが、読み手には〝責任逃れ〟な文章と捉えられかねません。  例えば「思われます」や「見られます」は誰がそう思っているのか、そう見ているのかがはっきりしません。主語が明確ならば、「我が社は〇〇だと考えます」「私は△△だと思います」とすべきです。  よくあるのが「が」で文章がつながっている例です。「が」は逆接(but )だけでなく、順接(and)としても使われるのでやっかいです。できるだけ順接では使わないこと。さらに、逆接の多用を避けるために、同じ方向性の内容はまとめて書くことに気を配ります。  逆接を多用する人の中には、よくこんなメールを書く人がいます。  お手数をおかけして大変申し訳ありませんが、弊社までご返送をお願いできれば幸いに存じますが、よろしいでしょうか。  このように一文で一気に書いてしまうと、要点がぼやけた読みづらい文章になってしまいます。一見、表現は丁寧ですが、「お手数をおかけして申し訳ございません。弊社までご返信をお願いできますか」で十分です。読み返してみて、「が」で文章がつながっていたら、文章を分けましょう。逆接なのか順接なのかはっきりした接続詞の使い方を心がけ、どちらか分かりづらい曖昧な接続詞は使わない方がよいでしょう。  接続詞は使うタイミングがよければ、より文章に説得力が増します。ただ、前の文章に要素をつけ加える、添加の接続詞の「そして」は使い勝手が良く、多用しがちです。使いすぎると冗長(間延びした文章)になるので注意しましょう。
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本連載は、CCCメディアハウス刊行の「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」の内容を一部編集したものです。
CCCメディアハウス「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」(白鳥和生著)
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筆者プロフィール
白鳥和生
株式会社日本経済新聞社 編集 総合編集センター 調査グループ次長。
明治学院大学国際学部卒業後、1990年に日本経済新聞社に入社。編集局記者として小売り、卸・物流、外食、食品メーカー、流通政策の取材を担当した。「日経MJ」デスクを経て、2014年調査部次長、2021年から現職。著書(いずれも共著)に「ようこそ小売業の世界へ」(商業界)「2050年 超高齢社会のコミュニティ構想」(岩波書店)「流通と小売経営」(創成社)などがある。日本大学大学院総合社会情報研究科でCSRも研究し、2020年に博士(総合社会文化)の学位を取得。消費生活アドバイザー資格を持つほか、國學院大学経済学部非常勤講師(現代ビジネス、マーケティング)、日本フードサービス学会理事なども務める。

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