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連載

論理と「思い」の合わせ技

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新規事業を成功させるためには、周囲を巻き込み賛同を得られる企画書や資料のクオリティこそが重要。「意味が分からない」「理解しにくい」という文章を並べるだけでは事業推進すらままなりません。では簡潔で要領を得た文章で「伝える」ためにはどんな工夫が必要か。【DX時代を生き抜く文章術 第11回】は、読み手を納得させる文章を作るときに必要な「論理」と「思い」について考えます。なお、本連載は「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」(CCCメディアハウス)の内容をもとに編集しております。

 ファクトやデータを示しつつロジカルに伝えるのと同時に、自分たちの熱い思いを相手に訴えて納得させることも必要です。相手を納得させる文章作成には「論理×思い」の合わせ技が効きます。前提は「相手の立場で考える」ことです。  まずは、相手が抱える課題を発見し、自社商品やサービスで解消できる提案を考えます。そ上で、解決案を採用したくなるような具体的なメリットと、その根拠となる実績を用意します。これまで語ってきた「論理的に伝えて頭で納得させる」手法です。  これに、自分たちの思いを加えて「感情的に伝えて心で納得させる」のです。では、「自社商品やサービスをアピールする」文章を考えてみましょう。 (1)伝えたいことを一方的に書いた文  2021年10月1日、当社はスナック菓子の新商品「ダブルパンチ」を発売いたします。この商品の特長は、消費者庁から特定保健用食品(トクホ)の許可を受け、ポテトチップスに糖分と脂肪分の吸収を抑える機能を持たせたことです。想定店頭売価は250円。ぜひ一度お取り扱いをご検討ください。 (2)課題を見つけて解決策を提案する文((1)の改善例)  コロナ禍の巣ごもり需要で、菓子カテゴリーは堅調な売れ行きを維持しています。ただ、ドラッグストアなどディスカウント業態の台頭で、価格競争が激しく、売り上げ並びに粗利の確保に課題を抱えていると拝察します。当社が2021年10月1日に発売する「ダブルパンチ」は貴社の課題解決にお役立ちできます。新商品はポテトチップス初の特定保健用食品(トクホ)で、想定売価が250円と、既存商品に比べ100円ほど高い設定になっているからです。粗利も十分確保でき、売り場効率の改善につながります。  企画書などに、自社商品・サービスの特長をいくつか列挙して書けば、顧客が自分たちのニーズに合った特長に注目してくれる場合もあります。しかし、顧客自身の中でニーズが顕在化していないこともあります。事前の打ち合わせなどから課題を汲み取り、その課題の解決につながる特長をアピールすれば、顧客の心に響きやすくなります。  次に、「メリット+証拠で理性に訴える」文章を考えてみましょう。 (1)抽象的なメリットの例文  この商品を取り扱っていただくと、高い粗利が確保できます。 (2)具体的なメリットと、それを裏付ける実績を書いた例文((1)の改善例)  この商品を取り扱っていただくと、坪当たりの粗利益率が0.5ポイント改善し、年間にして10万円の利益貢献が想定されます。すでに下記の企業様に実験・導入いただき、喜びの声を頂戴しております。  「この提案を受け入れれば、自社にどんな効果があるのか」を、数字を使って具体的にイメージさせます。さらに、実際にそのメリットを享受している企業事例を列挙するなど、事実や実績を書きます。それが裏付けとなり、説得力が増します。  では、いよいよ思いを伝える文章を考えてみましょう。 (1)この提案(商品)にどんな思い入れがあるかを考えた例文  多くのバイヤー様からのヒアリング、消費者様からのアンケートとグループインタビューで要望を集め、その声を商品に反映させました。消費者庁の許可まで3年をかけ、売り場貢献に加え、消費者様の健康に貢献できる商品が開発できたと自負しております。ぜひ貴社の戦略商品としてお取り扱いいただきたくお願い申し上げます。 (2)改めてどのようなメリットを感じてもらいたいかを追加した例文  新商品は機能性成分を加えるとともに、製法を変更することで、血液中の中性脂肪と血糖値の上昇を緩やかにする効用があります。スナック菓子でありながら、トクホ商品として健康に気を遣いながら食べられる利点があります。 (3)どんな世の中をつくりたいのかを考えた例文  現在、肥満や生活習慣病に悩む方、あるいはその予備軍はかなりの数に上ります。私たちは新商品の提供を通じて、すべての人に健康的で豊かな食生活を実現していただきたいと考えております。  この商品にどんな思い入れがあるか。
 この商品提案を受け入れることで相手にどうなってほしいか。
 どんな世の中をつくっていきたいか(使命感)。
 以上3つの要素を入れることで、相手の感情を揺さぶるのです。特に最近はSDGs(持続可能な開発目標)やサステナビリティが注目されており、3つ目の「使命感の訴求」は避けて通れません。
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本連載は、CCCメディアハウス刊行の「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」の内容を一部編集したものです。
CCCメディアハウス「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」(白鳥和生著)
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筆者プロフィール
白鳥和生
株式会社日本経済新聞社 編集 総合編集センター 調査グループ次長。
明治学院大学国際学部卒業後、1990年に日本経済新聞社に入社。編集局記者として小売り、卸・物流、外食、食品メーカー、流通政策の取材を担当した。「日経MJ」デスクを経て、2014年調査部次長、2021年から現職。著書(いずれも共著)に「ようこそ小売業の世界へ」(商業界)「2050年 超高齢社会のコミュニティ構想」(岩波書店)「流通と小売経営」(創成社)などがある。日本大学大学院総合社会情報研究科でCSRも研究し、2020年に博士(総合社会文化)の学位を取得。消費生活アドバイザー資格を持つほか、國學院大学経済学部非常勤講師(現代ビジネス、マーケティング)、日本フードサービス学会理事なども務める。

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