DXで事業を創出、もしくは事業を拡大した企業はどんな点に気を付け、成功へと突き進んだのか。「DXスタートアップ革命 第8回」は、介護施設向けの 医療サービスを提供するドクターメイト。業界の課題にどう切り込み、DXをどう進めていったのか。同社の取り組みを紹介します。なお、本連載は日本経済新聞出版「DXスタートアップ革命」の内容をもとに編集しております。
介護施設と医療機関の連携強化を支援したい――。こんな思いで高齢化社会の課題解決に乗り出すのがドクターメイトです。同社は、看護師や専門医が、介護施設の 介護士からの相談を24時間体制で受け付けるサービスを提供します。施設入居者の症状に合わせた適切な対処法をアドバイスできるようにし、介護士が常に医師に相談できる体制を強みに打ち出します。
サービスの強みについて、同社の代表取締役 青柳直樹氏は、「当社のサービスを利用すれば、介護士は入居者に対し、いつでも適切な処置を打てる。医療機関も本当に来院の必要がある患者のみ対応でき、限られたリソースを有効活用できる」と指摘します。
介護施設では一般的に、普段は病院や自身の クリニックに勤務する医師が1週間のうち半日だけ滞在するといった非常勤の勤務形態が珍しくありません。そのため、介護施設の入居者の具合が悪くなっても、常に医師の相談を受けられるわけではありません。同社のサービスは、こうした連携不足を解消する役割を担います。さまざまな介護施設で起きた事例や知見が蓄積されることから、より良い対応、アドバイスにつなげられるといったメリットもあります。
看護師は自宅などでも対応できることから、子育て中や休職中の看護師の登録も可能です。普段は研究活動に従事する医師なども登録できるようにすることで、24時間の相談受付を可能にします。介護士からの相談件数は月間300件以上になると言います。
同社は今後、「地域医療」を打破する医療体制構築を目指します。青柳氏は、「施設や地域単位の医療にはリソースを有効活用できない問題がある。全国的な医療リソースをシェアする環境を構築し、包括的なケア体制を構築しなければ日本の医療問題を解決できない。全国の医師や看護師が集まる当社のプラットフォームを活用することで、介護の地域差をなくしたい」と意気込みます。
さらに、「当社のサービスは、2025年までに日本一の介護のDXプラットフォームになる。さらに2030年までに世界一のSX(サスティナブルトランスフォーメーション)を目指す」(青柳氏)と、将来を見据えます。
Information | |
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企業/団体名 | ドクターメイト株式会社 |
所在地 | 東京都港区 |
事業内容 | 介護施設向け医療サービスの提供 |
取り組む課題 | 介護施設と医療機関の連携不足を解消したい |
解決策 | 介護士と専門医・看護師をつなぐ24時間体制の相談受付サービスを提供する |
本連載は、日本経済新聞出版刊行の「DXスタートアップ革命」の内容を一部編集したものです。
日本経済新聞出版「DXスタートアップ革命」(守屋実監修)
日本経済新聞出版「DXスタートアップ革命」(守屋実監修)
筆者プロフィール
守屋実
1992年、ミスミ入社、新規事業開発に従事。2002年、新規事業の専門会社エムアウトをミスミ創業者の田口弘氏と創業、複数事業の立ち上げと売却を実施。2010年、株式会社守屋実事務所を設立。新規事業創出の専門家として活動。ラクスル、ケアプロの立ち上げに参画、副社長を歴任後、ジーンクエスト(ユーグレナグループ)、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会、サウンドファン、ブティックス、SEEDATA(博報堂グループ)、AuB、みらい創造機構、ミーミル(Uzabase グループ)、JCC、テックフィード、キャディ、セルムなど数々の企業の役員、理事などを歴任。JR東日本スタートアップのアドバイザー、JAXA上席プロデューサー、博報堂フェロー、内閣府の有識者委員などを務める。2018年にブティックス、ラクスルを2カ月連続で上場に導く。著書に『新しい一歩を踏み出そう! 』(ダイヤモンド社)。近著は『起業は意志が10 割』(講談社)。