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連載

顧客勘定マーケティングを推進するためのコツ その2

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新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、消費者の「デジタル化」が加速しています。企業はそんな中でも消費者を正しく理解し、消費者のニーズを満たす製品・サービスを提供することが求められます。では、デジタル化によって見えにくくなった消費者の行動をどう把握し、事業や利益拡大に結実させるのか。このとき考える指標の1つが、顧客起点で売り上げや利益を拡大させる「顧客勘定」です。【DX時代に求められる“顧客勘定マーケティング”を極めよ 第5回(最終回)】は前回に続き、顧客勘定マーケティングを実施する際のポイントについて触れます。なお、本連載は日経BPマーケティング「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」の内容をもとに編集しております。

 前回(第4回)は、顧客勘定マーケティングを推進するコツとして、ゴールをイメージすることや物事を多面的に見ること、実行力を高める企業文化を育むことなどを紹介しました。今回も前回に引き続き、顧客勘定マーケティングを推進するコツを紹介します。  今回は大事なポイントとして、推進する担当者の気持ちに触れたいと思います。顧客勘定マーケティングは何より、「明るく進める」ことが大切です。顧客勘定マーケティングを主導する推進リーダーにとって、明るさは「必要条件」です。暗い、辛気臭いリーダーでは、組織のパフォーマンスは上がりません。  ではなぜ「明るさ」が必要なのか。それはリーダーの重要な役割が「メンバーの元気を引き出すこと」だからです。元USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)で、現在は刀 代表取締役CEOである森岡毅氏が著書「マーケティングとは『組織革命』である」の中で、「組織とは一人一人の能力を引き上げる装置」、と書いています。メンバーに前向きな気持ちで、モチベーション高く仕事をしていただく、学んでいただく、成長していただくためには「メンバーが元気である状態」が不可欠です。故に、リーダーの重要な仕事は「メンバーの元気を引き出すこと」であると考えます。  次に、これは言わずもがなですが、組織を単なる「仲良しグループ」にしてもいけません。「仲良しグループ」は必ずしも「成果の出るグループ」とは異なります。では2つのグループは何が違いは何でしょうか? 筆者は次のように考えます。  「仲良しグループ」の場合、構成員は好きなものやことが一緒です。テニスが好き、車が好き、美味しいものが大好き。趣味が一緒ですから一緒にテニスに行く、ドライブに行く、食べ歩きに行く、これが「仲良しグループ」です。  「成果の出るグループ」の場合、嫌いなものやことが一緒です。ただし、ネギが嫌い、某プロ野球球団が嫌いなどの類ではありません。「遅刻をすることはよくない」「朝会って挨拶しないのはよくない」「メールの返事を24時間以上放置するのはよくない」。このように「よくないこと、いけないこと」に関する価値観を共有できる集団が「成果の出るグループ」です。  「仲良しグループ」は「心地よさ」を第一に構成します。「成果の出るグループ」は「目的、目標の合意」「ルールの遵守」を重視します。お互いへのリスペクトをベースとしながらも、「ならんことはならん」という厳しさを持ち合わせないと、チームとしての成果は上がっていきません。  さらに、「おかしいことはおかしい」と言える文化と風土も大切です。発言の内容は「誰が言ったか」ではなくて「何を言ったか」です。「部長のAさんが言ったから正しい」「新入社員のBさんが言ったから後回し」。これでは以前に問題となったスポーツ団体と何ら変わりはありません。  プロジェクトの推進リーダーは「おかしいことはおかしい」と言える文化と風土を醸成することが必要です。意見が衝突したら、しっかりと話し合えばよいのです。これも森岡毅氏の著書で触れていますが、「社長と平社員は役割が違うだけで対等な存在」です。  ここで取り上げた顧客勘定マーケティング推進のコツは、気持ちや姿勢、風土などで、具体的な方法論やテクニックには触れていません。それは筆者自身が、顧客勘定マーケティングはテクニック論ではなく、「経営思想」であると考えていることに起因します。 「心が変われば行動が変わる 行動が変われば習慣が変わる 習慣が変われば人格が変わる 人格が変われば運命が変わる。」  これは心理学者、哲学者として有名なウィリアム・ジェイムズ氏の言葉です。さらにもう1つ、ピーター・ドラッカー氏の 「マネジメント」より以下の言葉を挙げてみたいと思います。 「企業の目的は顧客の創造である。したがって、企業は二つの、ただ二つだけの企業家的な機能をもつ。それがマーケティングとイノベーションである。マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。」  「顧客勘定」は、「マーケティングの要」です。マーケティングはイノベーションと双璧をなす企業の機能です。であれば、顧客勘定マーケティングは経営にとって非常に重要な思想である、と言えます。そして、経営にとっての重要なフレームワークが、顧客の「維持」「育成」「獲得」になるわけです。  顧客のことを考えると同時に、一緒に働いている人たちのことを考えることが重要です。このことが文化・風土の根底にあります。「他者への敬意:感謝の心」「組織の学習意欲」「組織の向上心」。これらをベースにきちんと据えた上で、これからも顧客勘定マーケティングを推進していってもらいたい。そう願います。  全5回の連載になりましたが、今回で最終回となります。全5回をお読みいただいた方、ありがとうございました。また、これまでの前4回につきましてはアーカイブでお読みいただけます。未読の方は、ぜひお読みくださいませ。さらに、拙著「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」を未読の方、ぜひご一読いただければありがたく存じます。本コラムお読みいただきありがとうございました。皆様のビジネスのご発展を心より祈念しております。
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本連載は、日経BPマーケティング刊行の「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」の内容をもとに、筆者が一部編集したものです。
日経BPマーケティング「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」
筆者プロフィール
前田徹哉
慶應義塾大学文学部卒業後、西武百貨店(現そごう・西武)入社。その後PwCコンサルタント(現日本IBM)にて主にB2C領域のマーケティング戦略立案などのコンサルティングに従事した後、スクウェア・エニックスに入社。オンライン事業部長としてECやコミュニティを統括。2011年10月にタワーレコード入社、オンライン事業本部 本部長としてECの統括の任に従事。2019年4月にビービットに入社。SaaSセールスのシニアマネジャーを経て、2021年1月より「QuizKnock」を運営する株式会社batonに参画、マーケティング部 部長。中小企業診断士。

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