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連載

第4回 物流×デジタル(後編)

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 「物流の逆襲・ロジスティクスの未来」の4話目となります。前回は「物流×デジタル」の前編として、これまでの物流技術の変遷について触れ、時代は今まさに、ロボテイクスやIoT、AIなどといった、ロジスティクス4.0へと進んでいることをお伝えしました。今回はその後編として、物流におけるデジタル化の課題と対策についてお伝えします。

標準化の遅れ

 1960年代に、これまでの人手に頼っていた輸送荷物の積込みや積み下ろしにフォークリフトなどにより荷役の自動化が進みます。そこでは、パレットと呼ばれる荷役台に荷物を乗せることで、作業の効率化となります。また海上コンテナに荷物を積み込むことで、短時間での処理が可能となり、そのままトラックや鉄道の貨物として運ぶことで、海陸一貫輸送を実現します。ロジスティクス2.0によって飛躍的に物流が進化します。
 ここで重要なキーワードが「標準化」です。荷物を乗せるパレットやコンテナBOXなどは、そのサイズを規格化することで、別々の会社の、それぞれ異なる荷物をまとめて、運ぶことで効率化を実現しました。コンテナBOXにも、FCLと言われるひとつの企業の荷物だけで占有するタイプと、LCLと言われる複数の企業の荷物を混載するタイプがあります。荷物の運搬に関するルールを規格化・標準化することで、効率的に運ぶことが可能になります。ただ、日本は、標準化が諸外国と比較して遅れています。

石橋を叩いても渡らない日本人

 その理由のひとつが、「日本人の真面目さや対応力の高さ」や、「ゼロリクスをもとめる完璧主義」だと、ロジスティクス4.0の著者でもあるローランドベルガーの小野塚さんも指摘しています。日本の物流は荷主企業の要望にあわせてカスタマイズする対応力が求められます。また、誤出荷や在庫差異などの物流精度を上げるため、過度のチェックを行います。欧米では、もともと労働は苦役であり、物流の生産性や精度もそれほど期待されていないため、誰にでもできるよう標準が重視されています。
 対応力をもとめ、標準化よりカスタマイズ、ゼロリスクでわずかなミスも許されない完璧主義が、物流におけるデジタル化を阻害しています。事前の調査をもとに効率性を重視して石橋をさっと渡るアメリカ人、石橋を叩く前に渡る中国人、そして、石橋を叩いても渡らない日本人・・・と揶揄されることも日本の物流のデジタル化の遅れになっています。 

物流の過小評価

 物流のことを「ロジスティクス」とも呼びますが、物流とはつくったもの、仕入れたものが消費者に届けられるための移動・保管・作業に関わるすべての活動を示します。その物流を効率的な活動にするためのマネジメントのことをロジスティクスと言います。
 ロジスティクスは、調達、生産、販売、回収などの分野を統合して、需要と供給の適正化を図り、適性在庫を維持、欠品の極小化、など、物流コストの最小化を目指すとともに、競争激化の市場において顧客満足を実現するための物流サービス含め、経営戦略の重要課題として取り上げられるようになってきました。
 ただ、日本において物流はコスト部門として低く評価されることも多く、物流が戦略的にロジスティクスとして機能しているところは、一部の企業です。そのひとつの要因が、顧客や社内他部門の制約の中で後処理型物流として、管理・コントロールできる領域が限定されていて、事業における経営課題として捉えられていません。企業としての需要予測からも生産含め、供給体制の重要性を議論する前に、根性論によるコスト削減だけが物流部門の課題となっているところが多いのも、物流への投資含め、デジタル化が進まない理由のひとつです。

物流のデジタル化待ったなし!

 宅配クライシスと言われ、増え続ける宅配便などの小口配送に、トラックドライバー不足が騒がれました。今回のコロナはさらに状況を深刻化させています。トラックドライバーだけでなく、物流倉庫で働く労働人口の減少は、「経済の血流」である物流インフラの破綻にもなりかねないです。その有効的な解決策のひとつが、物流のデジタル化です。物流のデジタル化は、規格化・標準化による自動化や省人化を推し進めることになります。また、IoTと言われるモノのインターネットは荷物の情報がつながることで、データによる荷物の情報を可視化し、より効率的な配送ルートをAIにより割り出します。
 まだまだ人の生産性にロボットが追いついていないとの声や、これまでの物流を支えていた人々の仕事を、ロボットが奪うといった声もありますが、第一次産業革命時、労働者の反乱の「ラッダイト運動」のように、技術の進化は時に残酷に見えますが、時代の流れの中で、成長する産業と衰退する産業があるのも事実で、人としてどう物流に関わるのか?人にしかできない仕事はなにか?まさにパラダイムシフト、物流においてもデジタル化が求められています。 皆さんはどうお考えでしょうか?  今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。 次回は最終回となります。物流で世の中を住みやすく、豊かな世界にする、そんな世界を夢見て、物流の大切さを少しでも多くの方に知っていただければと思います。
株式会社リンクス
代表取締役 小橋 重信
アパレル会社での在職中に上場から倒産までを経験。そこでは、在庫が滞留することの怖さを経験。その後の物流会社で多くの荷主の物流をサポートし、「物流から荷主企業を元気にする」ことを目標に在庫管理の大切さを伝える活動を行う。3年間のIT企業での経験から、ITの知見もあり、「ファッション×IT×物流」トータルでのコンサルティング活動を行う。

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