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連載

第1回 DX時代における現状のシステムの課題

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はじめに

 企業におけるデジタルシフトの必要性が各所で語られていますが、私の担当しているお客様でも、今のシステムのどこに問題があるかわからない、デジタルシフトの必要性を指摘されているが自分には関係ない、自分の業務をどうデジタルシフトしていけばいいか分からない、といった声をよく聞きます。そこで、将来のシステムのあり方を検討していくうえでも、まずは現状のシステムの全体像をつかみ、システムコストは妥当なのか、システム構成は適正なのか、といったシステム全体の健康診断を行う方法を、私自身の経験をもとに説明していきたいと思います。

自己紹介と現在の業務について

 私自身の自己紹介をします。私は現在50歳で、経歴は株式会社オービックで社会人のスタートを切り、システムエンジニアとして業務システムの開発業務に7年間携わりました。その後、2000年のITバブルの真っただ中に、元オービックの先輩に誘われ、今の社長の鈴木がやっていた、ネットで本を注文して、セブン-イレブンで受け取るECサイトを運営していたイー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)に転職しました。以来2017年に現在のデジタルシフトウェーブに転職するまでの17年間、ECサイトのシステム部門の責任者としてシステム開発・運用に携わってきました。現在は鈴木が起業した株式会社デジタルシフトウェーブにおいて、業界の中でもデジタルシフトが遅れているといわれている、小売り・外食のお客様を何社か対応させていただいており、日々奮闘しながら各企業のデジタルシフトのサポートを行っています。

システムがスパゲッティ化

 システム支援という形でお客様に入らせていただき、まず驚いたことは、会社のシステムの全体像を整理できているところがほとんどない、ということです。原因はクラウドのサービスが出てきて以来、システム部門がイニシアチブを取らなくても、業務部門だけで新たなサービスが導入できるようになってきたことが大きいと思います。システム部門も人手不足ですので、基幹システムの面倒を見るのが主な役割となってしまい、現場部門でどのようなサービスを導入しているのかを把握できていません。また、その導入に関わると仕事が増えてしまうため、自分たちの担当しているシステムの全体図はあっても、会社全体のものはない、というのが理由だと思っています。ただ、実際にはそれらクラウドのサービスとデータ連携をしなければいけなかったりするので、会社のシステム全体像を1枚の絵にまとめてみると、スパゲッティ状態になっていることがよくあります。全体の絵を描かずに、それぞれのシステムで部分最適を行ってきたため、全体でみると統一性がなくバラバラになっています。
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システム統合の弊害

 10年ぐらい前に業務システムを統合することが流行った時期がありました。実際に私が担当しているお客様の中にも、POSシステムから基幹システム、バックオフィスとなる管理システムまでシステムを統合している会社があります。一見システムが統合されて効率化しているように見えるのですが、何か新しいサービスを追加開発したい場合に、影響が各システムに及ぶため、通常より開発費がかかったり、納期がかかったりして、結果新しいサービスの開発をあきらめるということがあるそうです。システムを統合することによって、かえって身動きが取れなくなってしまい、保守費や運用費も高価となってしまうため、思っていたような効果が出ていない、というのが実情ではないかと思っています。

古いシステムを使い続けている

 古いシステムを使い続けている会社が多いことも特徴としてあげられます。通常だと5年でシステムを入れ替える会社が多いと思いますが、20年前のクライアントサーバー時代に導入したシステムを、未だに使い続けている会社もまだまだあります。当時はパッケージをベースとしたスクラッチ開発のシステムが多かったため、システムをリプレースしたくても、今の業務を新しいシステムでもできるようにするには、莫大なシステム開発費がかかってしまいます。費用対効果が見込めないため、サーバはリプレースするのですが、アプリケーションは古いシステムをそのまま使い続けているのです。このまま古いシステムを使い続けていることには大きな問題があります。1点目はセキュリティの問題です。現在と当時とはセキュリティの考え方が大きく違っています。最近のシステムではアカウント管理やデータの暗号化は当たり前になっていますが、当時は同じアカウントを複数名で使いまわしていたり、パスワードがIDと同じような簡易なものだったり、データベースも個人情報をそのままデータベースに保存していることは当たり前でした。現在ではセキュリティで問題を起こすとその会社の経営を左右することもあるため、このまま使い続けていると大きな経営リスクを抱えることになります。

 もう1点の問題は技術者の枯渇です。新しい機能を入れたいと思っても、開発者がいないから開発ができない、といったことが今後は増えてくると思います。古い開発言語で開発されたシステムは、開発できるプログラマーも高齢化が進んでいますので、いずれ枯渇してきます。今の若い人はCobolやVBといった古い言語を覚えたがりません。そうすると古い技術にも関わらず、開発者が年輩者しかいなくなるため、開発費や保守費が高額になり、会社の経営を圧迫するようになってきます。私の担当している会社でも、ベンダーに自社のシステムを知っている担当者が一人しかいない、という会社があります。その担当者がやめたり、倒れたりすると、追加サービスの開発ができなくなってしまいます。外部に頼んでいるにも関わらず、その担当者に合わせた開発をせざるをえなくなり、会社の計画に沿ったシステムの開発ができない状況に陥ってしまいます。
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 これらの問題は小売・外食の業種に限らず、様々な企業で起こっていると思っています。これら問題を見える化し、将来のデジタルシフトの時代に対応したシステムを検討するには、どういった手順で進めていくか、次回から詳細を説明していきます。 (つづく)
岡村 克久(Katsuhisa Okamura)

1993年(株)オービックにてSEとしてシステム開発に従事。2000年(株)イーショッピング・ブックスに入社しECサイト開発に携わる。2008年(株)セブンアンドアンドワイ システム開発部部長就任。2015年(株)セブンアンドアイネットメディア執行役員就任。オムニチャネル戦略の開発PMを務める。2017年同社を退社。2017年デジタルシフトウェーブ入社。同社取締役に就任。
■上記の著者へのDX相談・講演等の依頼は、こちらから

株式会社デジタルシフトウェーブ

https://www.digitalshiftwave.co.jp/
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