日本オムニチャネル協会 インタビュー

    2021.08.19

    非対面やコミュニケーション能力といったCSの強みを活かし、チャネルやプロセスを補完するハブとしての役割担う/~日本オムニチャネル協会 CS分科会リーダーに聞く

    オムニチャネルの振興を主たる事業とする日本オムニチャネル協会。「商品」「売場」「販促」「CS」「物流」「管理」の6つの分科会を活動主体とし、会合を定期的に開催するなどして現場の課題解決に取り組みます。ここでは「CS」分科会のリーダーである渡部弘毅氏に、活動内容や主な課題、今後の取り組みなどを聞きました。

    ―CS分科会の主なテーマ、活動内容を教えてください。

     「CS」は「Customer Service」の略として使われるのが一般的だが、オムニチャネルを議論するときには、顧客満足を示す「Customer Satisfaction」の略としても使われます。CS分科会では「Customer Satisfaction」を根底にとらえつつ、「Customer Service」「Customer Support」「Call Center」「Contact Center」と呼ばれる業務や組織のあり方を議論しています。

     一般的にリアル店舗とECを融合するオムニチャネルにおいて、CSが議論の主役になることは少ないでしょう。商品を購入、もしくはサービスを申し込んだ利用者とのコミュニケーションを主とするCS業務は、オムニチャネルでは影を潜める「裏方」の役割になっています。

     しかし半面、CSは顧客のロイヤリティを向上させる重要な組織(チャネル)です。そこで分科会では改めて、小売業が顧客に提供する本当に価値、さらにはオムニチャネルの本質を考えることから始めています。議論すべき内容を体系立てて参加者で共有し、テーマを明確に絞ることで議論がぶれないようにしています。オムニチャネル化による小売業のあるべき姿を描ければ、CSの役割も明確になる。ひいてはCSの存在価値も最大化できるのではと考えます。
    写真:日本オムニチャネル協会 CS分科会リーダー 渡部弘毅氏

    写真:日本オムニチャネル協会 CS分科会リーダー 渡部弘毅氏

    ―オムニチャネルを目指すにあたり、分科会ではどんな課題を議論しているのでしょうか。

     CS分科会は2020年度、「CSオムニチャネルハブ構想」を立案しました。これは、CSの強みである非対面(非接触)とヒューマンタッチなコミュニケーション能力を活かし、顧客のオムニチャネル体験を高めようとする考えです。

     そこでまず、CSのあるべき姿を描くため、4階層のフレームワークを定めて議論しています。1つは最上位レイヤーである「Retail Strategy」。小売業が本来顧客提供する価値は何か。DX時代のマーケティングの潮流も踏まえて、小売業が進むべき方向を議論しています。

     その下に位置するレイヤーが「Omni-Channel Experience」。「Retail Strategy」を支えるオムニチャネルサービス体験を考えます。現在実装するオムニチャネルサービスと本来目指すべきサービスの違いや、オムニチャネルの本質について議論しています。

     さらにその下のレイヤーとなるのが「Omni-Channel CS Experience」。あるべきオムニチャネル体験を支えるCS体験を考えます。オムニチャネルにおけるCSの役割、顧客へ提供する価値について議論し、サービスのモデル化をします。

     最下層のレイヤーが「Omni-Channel Infrastructure」。上位3つのレイヤーの考えや議論を具現化するためのインフラを考えます。あるべきオムニチャネルCS体験を支えるインフラとして、IT、データベース、ネットワーク、組織編成、評価制度、人材育成、KPI、VOC運用などを議論します。オムニチャネルCSサービスが快適に稼働するためのインフラ要件を考えます。

     CS分科会では、CSの業務に限った議論にとどまりません。オムニチャネル化による小売業務そのものにフォーカスし、そこから顧客向けのサービス、顧客体験、それらを支えるCSのあるべき姿を議論します。そのため、議論の内容や課題は広範になりがちです。しかし、1つずつひも解くことで曖昧で不明瞭だった業務の役割や狙い、目的を明確できる。これにより、CSが今後どうあるべきかの理想も追求できるのではと考えています。

    ―課題に対し、分科会ではどんな解決策を模索していますか?

     一例ですが、オムニチャネルの現状とあるべき姿のギャップを議論した結果、オムニチャネルの対象範囲が拡大しているという結論に至りました。例えば、顧客が商品を購入するまでのカスタマージャーニを考えた場合、「ブランド認知体験」「購買体験」「配送体験」「利用体験」「カスタマーサクセス体験」といった流れになる。これまでのオムニチャネルの考え方は、そのうち「購買体験」しかフォーカスしていませんでした。しかし、オムニチャネル化によって個客の満足度を高めるには、購買体験以外の体験の価値向上が欠かせません。CS部門であれば、「カスタマーサクセス体験」の価値をどう向上させるかを考えなければならない。このように、オムニチャネルの対象範囲拡大に伴う組織やプロセスを考えることが、課題を解決するアプローチの1つになると捉えています。

     一方、さきほどの4階層のフレームワークのうち、2020年度は上位の3レイヤーの議論を重ねてきました。2021年度はインフラ群を整理し、必要な要件をまとめていく予定です。日本オムニチャネル協会に加盟するITベンダーの意見やサービスを参考に、具体的なITツールやサービスを要件として入れるようにします。

    ―CS分科会の今後の予定、目指すべきビジョンを教えてください。

     「CSオムニチャネルハブ構想」を推進するのがCS分科会の役割であり、1つのゴールだと考えます。そのためには例えば、実店舗とECのハブとしてECが役割を担うべきだと思います。具体的には、クリック&リザーブのサービスの間にCSが入り、電話やメール、チャットといったヒューマンタッチな対応を加えます。これにより顧客の不安を低減できるし、相談やアドバイスもできるようになります。これからは、こうした役割がCSには求められます。そのほかにも、コンバージョン率向上という短期的効果も狙えます。

     スタッフの働き方改革にも寄与できると思います。例えば、実店舗スタッフの勤務場所にCSを新たな選択肢として加えられれば、働き方のバリエーションを増やせられる。顧客体験を高める手段の1つが、CSによるコミュニケーションであるなら、実店舗のスタッフがCS業務に就くことも十分考えられます。スタッフの多様な働き方を支援する役割をCSが果たせると思います。CSオムニチャネルハブ構想を推進し、顧客体験向上と同時に従業員の働き方改革に寄与したいと思います。

     これまでサポート役だったCSの役割は、オムニチャネル化によって変わります。このときCS部門は何ができるのか。その役割を分科会で考え、オムニチャネルを推進する企業に発信できればと思います。そのためには最新のデジタル技術やサービスを駆使し、CS業務をどう改革できるかを考えることが大切です。
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