業務改革に取り組む上で欠かせない「業務フロー図」。業務の流れを可視化するとともに、業務に潜む課題を洗い出すのに有効です。では、どう描けばいいのか。業務改革を下支えする業務フロー図作成のポイントを紹介します。なお、本連載はプレジデント社「成功=ヒト×DX」の内容をもとに編集しております。
業務フロー図作成の準備
DXは「業務改革」と「システム構築」を両輪で進めることが大切です。前回は両輪の1つ、「業務改革」を進める際のポイントに触れましたが、今回は業務改革を可視化するのに必要な「業務フロー図」の描き方を紹介します。
参考:前回の記事/業務改革を進める際のポイントはこちら
「業務改革の課題解決に役立つ3つの視点、迷走しない進め方とは」 業務フロー図は、「社内の共通プロセスをつくること」が作成の目的です。そのためには対象となる業務を明確化するとともに、業務フローを作成する手順を整備することが必要です。明確なルールに基づき業務フロー図を作成すれば、現在の業務の問題点と解決策を容易に可視化できるようになります。
「業務改革の課題解決に役立つ3つの視点、迷走しない進め方とは」 業務フロー図は、「社内の共通プロセスをつくること」が作成の目的です。そのためには対象となる業務を明確化するとともに、業務フローを作成する手順を整備することが必要です。明確なルールに基づき業務フロー図を作成すれば、現在の業務の問題点と解決策を容易に可視化できるようになります。
対象となる業務を明確化する
まずは現在の業務を明確にします。各業務の担当者にヒアリングして業務を洗い出し、業務フロー図を作成します。
例えば小売業の場合、「発注」「販売」「棚卸」などに業務を大きく分け、それから担当者にヒアリングするのが望ましいでしょう。大切なのは、1つの業務フロー図の作成対象範囲を広げすぎないこと。対象範囲が広すぎると業務フロー図が複雑になり、どこに何を記しているのかが分かりにくくなります。
業務フロー図のフォーマットを統一することも必要です。例えば、横軸や縦軸には何を書くのか、使用するアイコンの種類と意味などです。業務ごとに異なるフォーマットで業務フロー図を作成すると、担当者にしか理解できない業務フロー図が完成してしまいます。業務フロー図に担当者ごとの解釈が反映されると、業務の標準化も図れなくなります。結果として目的の「社内の共通プロセスをつくること」が達成できなくなります。
via 出典:プレジデント社「成功=ヒト×DX」
担当者へのヒアリング前に「仮案」の用意を
業務フロー図の方針とフォーマットを決めたら、各業務の担当者にヒアリングを実施します。ただし、白紙を持って担当者にヒアリングしても意味はありません。まずは業務内容を自分なりに理解し、業務フロー図の仮案を作成すべきです。仮案は想像で構いません。複雑でなくても大丈夫です。一般的な業務の営業や販促などのフローをベースに仮案を作成するとよいでしょう。仮案をもとにヒアリングを実施することで、実際の業務をイメージしやすくなります。
ヒアリング対象者も、自身の業務イメージと仮案の差異を指摘すればいいため、スムーズにヒアリングに対応できるようになります。
担当者へのヒアリングの進め方
ヒアリングには2つのコツがあります。
1つは、他部署や上司・部下の課題などをすべて聞くことです。ヒアリングの目的は、現状の業務における課題をすべて洗い出すことです。大きな課題から小さな課題まで聞き出し、業務フロー図に落とし込むようにします。
この作業を繰り返すことで、業務フロー図から自社の現状業務と課題をすべて可視化できるようになります。
もう1つは、相手が話しやすい雰囲気をつくることです。ヒアリング対象者は何を話せばいいのか分からなくなりがちです。こうした迷いを解くには、話しやすい雰囲気づくりに配慮します。
担当者によっては、話すことで自分の仕事がなくなるのでは、と思ってしまう人もいます。ヒアリングに非協力的な人も少なくありません。そこでヒアリングの目的や業務フロー図を作成するメリットを丁寧に伝えることも大切です。担当者にヒアリングの目的を理解してもらうことで、業務の詳細まで聞き出せるようになります。
業務フロー図は、現在の業務を整理し、よりよい環境を整備するためのツールです。業務のブラックボックス化を解消するのが作成の狙いです。会社全体の業務を平準化したり、属人化のリスクを排除したりするメリットも見込めます。
筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ 代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。 デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任。
前回までの記事はこちら
#1 他人任せの意識がDXを停滞させる
#2 「デジタル格差」が迷走に拍車をかける
#3 社内の人材育成が、DXを成功に導く
#4 「経営者の決意」が変革の第一歩
#5 DX推進に消極的な経営者を説得せよ、経営者タイプに応じた効果的な説得方法とは?
#6 リスクは回避せずに受け入れろ! 弱腰な経営者のもとでDX成功はあり得ない
#7 DXの成否を決める「推進体制」、構築に必要な3つのポイント
#8 優秀なメンバーを集めるだけでは不十分、DXを進める体制構築で最も大切な6つの極意
#9 DXプロジェクト始動時の注意点、抵抗勢力との衝突を想定した対策を
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