新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、消費者の「デジタル化」が加速しています。企業はそんな中でも消費者を正しく理解し、消費者のニーズを満たす製品・サービスを提供することが求められます。では、デジタル化によって見えにくくなった消費者の行動をどう把握し、事業や利益拡大に結実させるのか。このとき考える指標の1つが、顧客起点で売り上げや利益を拡大させる「顧客勘定」です。【DX時代に求められる“顧客勘定マーケティング”を極めよ 第1回】は、顧客起点の考え方、必要性について改めて考えます。なお、本連載は日経BPマーケティング「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」の内容をもとに編集しております。
顧客の消費行動や購買履歴などに基づくマーケティング施策を立案、実施する企業は少なくありません。では、今回紹介する「顧客勘定」は、従来の顧客の行動に基づくマーケティングと何が違うのか、どんな考え方なのかを説明します。
売上高には、商品から積み上げる観点と、顧客から積み上げる観点があります。商品から積み上げる考え方が「商品勘定」。これに対し、顧客から積み上げる考え方が「顧客勘定」です。これは「どの顧客がいくらの何をどれだけ買ったか?」と、顧客を軸に売上高を積み上げる考え方です。商品勘定と顧客勘定のどちらであっても売上高は一致します。 具体的な例で紹介説明しましょう。前年度に10個売れた1000円の商品が、本年度は同じ売価で12個売れたとします。「売り上げ20%増、やった!」。これは商品勘定の考え方です。
では顧客勘定ではどうか。前年度は、Aさんが4個、Bさんが3個、Cさんが2個、Dさんが1個購入して、計10個売れました。本年度は、A・C・D・E・F・Gさんの計6人が各2個購入して、計12個売れました。結果、新規顧客を3人獲得して販売個数が2個増えたのは喜ばしいが、既存顧客が離反した理由が気になる。販売個数で一喜一憂しがちな商品勘定より、顧客を基点に考えることで課題が明確になる。これが顧客勘定の考え方であり、特徴です。 ・たくさん買ってくれる顧客を、そのまま「維持」する
・たくさん買ってくれる顧客に「育成」する
・たくさん買ってくれる顧客になりそうな顧客を「獲得」する 顧客勘定では、この3つを実現することが大切です。そこで、対象層別にさまざまな施策を考案、実行、検証するプロセスである「顧客勘定PDCAサイクル」を回すことが重要で、このPDCAを回していくマーケティング活動を「顧客勘定マーケティング」と呼びます。 従来のマーケティングとの違いは、売上高を「1年間のアクティブユーザー数×1年間の1客単価」に分解し、これを「最重要のKPI」として設定する点です。顧客勘定マーケティングではKPI達成に向け、顧客の「維持」「育成」「獲得」目標を設定し、実行と検証を繰り返すことが重要です。 あえて「勘定」と名づけたのは、「顧客に寄り添ったマーケティング」を単なる“お題目”ではなく、「売り上げを上げるための活動」だと強調して示したかったからです。もちろん「顧客起点」の施策立案と実行がベースではあるものの、「顧客勘定」=「売上高が向上する」という図式を描く取り組みが重要だと考えました。 ではなぜ、顧客勘定マーケティングが求められるのか。コロナ禍の長いトンネルは、企業のデジタルシフトを強制的に進める力になったと言えます。あらゆる企業や団体が、「マーケティング活動のデジタル化」を早急に推進しなければならない状況に追い込まれたとも言えます。 もっとも、新型コロナウイルス感染症の影響に関わらず、テクノロジの進化によって「今まで分からなかったことが分かるようになっている」「できなかったことができるようになっている」という環境変化が生じています。 その一方で、「マーケティング活動のデジタル化」の重要要素である「顧客理解とそれに基づく施策立案、実行」への取り組みは、多くの企業で実は遅れていると感じます。 「顧客理解とそれに基づく施策立案、実行」は、企業や団体の売り上げ&利益を確実に上げます。さらに、その進め方には「定石」があります。 ここではこうした方法を、筆者の失敗や小さな成功体験を踏まえながら伝えられればと考えています。 読者の皆さんに「定石」を理解してもらい、実践してもらいたい。その上で、日本の企業や団体を元気になってほしい。私たちの生活がもっと豊かなになってほしい。「IT後進国」と呼ばれる日本が「IT先進国」となり、もう一度元気になってほしい……。「顧客勘定マーケティング」を実践することとで、こんな未来の企業や社会、日本を描ければと筆者は願っています。 具体的な「顧客勘定マーケティング」の施策方法やPDCAサイクルを回すコツなどは、次回以降の本連載で紹介しますが、顧客勘定マーケティングに基づくフレームワーク通りに施策を進めれば、ほぼ確実に売り上げ&利益を上げられると筆者は考えます。B2Cのビジネスに携わる企業、あるいはこれから携わろうと考える企業の担当者も含め、多くの人に「顧客勘定マーケティング」を知ってもらえればと考えます。
売上高には、商品から積み上げる観点と、顧客から積み上げる観点があります。商品から積み上げる考え方が「商品勘定」。これに対し、顧客から積み上げる考え方が「顧客勘定」です。これは「どの顧客がいくらの何をどれだけ買ったか?」と、顧客を軸に売上高を積み上げる考え方です。商品勘定と顧客勘定のどちらであっても売上高は一致します。 具体的な例で紹介説明しましょう。前年度に10個売れた1000円の商品が、本年度は同じ売価で12個売れたとします。「売り上げ20%増、やった!」。これは商品勘定の考え方です。
では顧客勘定ではどうか。前年度は、Aさんが4個、Bさんが3個、Cさんが2個、Dさんが1個購入して、計10個売れました。本年度は、A・C・D・E・F・Gさんの計6人が各2個購入して、計12個売れました。結果、新規顧客を3人獲得して販売個数が2個増えたのは喜ばしいが、既存顧客が離反した理由が気になる。販売個数で一喜一憂しがちな商品勘定より、顧客を基点に考えることで課題が明確になる。これが顧客勘定の考え方であり、特徴です。 ・たくさん買ってくれる顧客を、そのまま「維持」する
・たくさん買ってくれる顧客に「育成」する
・たくさん買ってくれる顧客になりそうな顧客を「獲得」する 顧客勘定では、この3つを実現することが大切です。そこで、対象層別にさまざまな施策を考案、実行、検証するプロセスである「顧客勘定PDCAサイクル」を回すことが重要で、このPDCAを回していくマーケティング活動を「顧客勘定マーケティング」と呼びます。 従来のマーケティングとの違いは、売上高を「1年間のアクティブユーザー数×1年間の1客単価」に分解し、これを「最重要のKPI」として設定する点です。顧客勘定マーケティングではKPI達成に向け、顧客の「維持」「育成」「獲得」目標を設定し、実行と検証を繰り返すことが重要です。 あえて「勘定」と名づけたのは、「顧客に寄り添ったマーケティング」を単なる“お題目”ではなく、「売り上げを上げるための活動」だと強調して示したかったからです。もちろん「顧客起点」の施策立案と実行がベースではあるものの、「顧客勘定」=「売上高が向上する」という図式を描く取り組みが重要だと考えました。 ではなぜ、顧客勘定マーケティングが求められるのか。コロナ禍の長いトンネルは、企業のデジタルシフトを強制的に進める力になったと言えます。あらゆる企業や団体が、「マーケティング活動のデジタル化」を早急に推進しなければならない状況に追い込まれたとも言えます。 もっとも、新型コロナウイルス感染症の影響に関わらず、テクノロジの進化によって「今まで分からなかったことが分かるようになっている」「できなかったことができるようになっている」という環境変化が生じています。 その一方で、「マーケティング活動のデジタル化」の重要要素である「顧客理解とそれに基づく施策立案、実行」への取り組みは、多くの企業で実は遅れていると感じます。 「顧客理解とそれに基づく施策立案、実行」は、企業や団体の売り上げ&利益を確実に上げます。さらに、その進め方には「定石」があります。 ここではこうした方法を、筆者の失敗や小さな成功体験を踏まえながら伝えられればと考えています。 読者の皆さんに「定石」を理解してもらい、実践してもらいたい。その上で、日本の企業や団体を元気になってほしい。私たちの生活がもっと豊かなになってほしい。「IT後進国」と呼ばれる日本が「IT先進国」となり、もう一度元気になってほしい……。「顧客勘定マーケティング」を実践することとで、こんな未来の企業や社会、日本を描ければと筆者は願っています。 具体的な「顧客勘定マーケティング」の施策方法やPDCAサイクルを回すコツなどは、次回以降の本連載で紹介しますが、顧客勘定マーケティングに基づくフレームワーク通りに施策を進めれば、ほぼ確実に売り上げ&利益を上げられると筆者は考えます。B2Cのビジネスに携わる企業、あるいはこれから携わろうと考える企業の担当者も含め、多くの人に「顧客勘定マーケティング」を知ってもらえればと考えます。
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本連載は、日経BPマーケティング刊行の「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」の内容をもとに、筆者が一部編集したものです。
日経BPマーケティング「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」
本連載は、日経BPマーケティング刊行の「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」の内容をもとに、筆者が一部編集したものです。
日経BPマーケティング「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」
筆者プロフィール
前田徹哉
慶應義塾大学文学部卒業後、西武百貨店(現そごう・西武)入社。その後PwCコンサルタント(現日本IBM)にて主にB2C領域のマーケティング戦略立案などのコンサルティングに従事した後、スクウェア・エニックスに入社。オンライン事業部長としてECやコミュニティを統括。2011年10月にタワーレコード入社、オンライン事業本部 本部長としてECの統括の任に従事。2019年4月にビービットに入社。SaaSセールスのシニアマネジャーを経て、2021年1月より「QuizKnock」を運営する株式会社batonに参画、マーケティング部 部長。中小企業診断士。