デジタルシフトウェーブは2025年9月24日、定例のDX経営セミナーが開催されました。今回のテーマは「企業に活力を与える外国人採用の正しいやり方 ~“人手”から“戦力”へ変える、これからの組織づくり~」。外国人を単なる「人手」としてではなく、組織を活性化させる「戦力」として迎え入れるための具体的な方法や注意点を解説しました。
国内の労働人口が減少の一途をたどる中、優秀な人材の確保は企業の持続的成長における最重要課題の1つです。有効な手立てを打ち出せずにいる企業が多い一方で、解決策の1つとして外国人採用に踏み切る動きも見られます。しかし、「コミュニケーションはうまくいくのか」、「日本の企業文化に馴染めるのか」といった懸念から、採用に舵を切れない企業も少なくありません。
そこで今回のセミナーでは、 外国人の日本企業への就職などを支援するOne Terrace 代表取締役の石中達也氏と、同社非常勤役員でキャリアダイバーシティ 代表取締役の和田海二氏がゲストとして登壇。海外での豊富な経験を持つ両氏が、外国人採用の正攻法と、採用した人材が活躍できる組織づくりのポイントを解説しました。
なぜ今、外国人採用なのか? アジアの若者が持つ「活力」の正体
セミナー冒頭、テーマとして掲げられたのは「活力」というキーワード。このキーワードがなぜ外国人採用と紐づくのか。石中氏は自身がアジア各国で目の当たりにした光景を振り返り、「日本であまり見られなくなった元気さや活力が若者に満ち溢れている。日本から一歩海外に踏み出せば、活力のある若い人材が多くいる。こうした人材こそ、現代の日本企業が求める活力の源泉に他ならない」と指摘します。

アジアの中でも特に目を向けるべきは、インドネシアとバングラデシュだといいます。One Terraceでインドネシア事業を率いる和田氏は、インドネシアのリアルな状況を解説。「インドネシアの人口は約2.8億人、平均年齢は29歳と非常に若い。今後30年は経済成長が続くと予測される。日本の平均年齢が49歳であることを考えると、その人口ピラミッドの違いは歴然である」と、インドネシアと日本の違いを指摘します。
一方、インドネシアの圧倒的な若さと人口の多さは、深刻な社会問題も生み出していると続けます。「インドネシアのZ世代の失業者は1000万人とも言われている。1000万人が仕事がなくて困っているという事態がインドネシアで起きている」(和田氏)と述べ、人口が多すぎて仕事が少ないという、日本とは真逆の現象が起きていると指摘します。その結果、若者たちは仕事を求めて就職フェアに殺到し、履歴書を片手に「面接させてくれ」と必死にアピールしているといいます。

もっとも、こうした若者の多くが「優秀である」(和田氏)といいます。和田氏が日本語教育機関で働いていた際、現地のトップ大学の学生たちが、ひらがなの「あ」から日本語の勉強を始めていた光景を目の当たりにしたそうです。「日本でいえば東京大学や京都大学レベルの、倍率200倍以上という熾烈な競争を勝ち抜いてきたエリートたちが、日本で働くために一から言語を学んでいる。彼らは高いスキルと学習意欲を持ちながらも、国内では輝ける場所を見つけられずにいるのが現状だ」(和田氏)と考察します。
石中氏も、自身が先週訪れたばかりだというバングラデシュの状況を報告。「バングラデシュの人口は約1.8億人、平均年齢は26歳で若さに満ちている。北海道と九州を合わせた程度の面積に、日本の人口を上回る人々が暮らしている。その人口密度と熱量は圧倒的である。首都ダッカでは交通渋滞が社会問題化するほどの活気にあふれ、高速道路や鉄道の建設が急ピッチで進んでいる。ここでもまた、国がダイナミックに変化していくエネルギーを感じることができる」(石中氏)と述べました。
さらにバングラディッシュの教育事情について、「大学進学率は約24%にとどまる。しかし、トップ私立大学の学費は日本の国公立大学と遜色ないレベルで、それを支払える富裕層や中間層が約2000万人ほどいる。教育への投資を惜しまない家庭が増えているのが現状だ。彼らは子供に対し、より良いキャリアを求めて海外で働く経験を積ませたいと考えており、日本もその有力な選択肢の1つとなっている。バングラデシュ政府も国策として、今後3年間で約18万人の若者を日本へ送り出したいという目標を掲げいる」(石中氏)といい、日本への関心は国全体で高まっているといいます。
こうした外国人を積極的に採用、育成し、自社の競争力を高める源泉として活かすことこそ日本企業に求められていると両氏は訴えました。
外国人採用を成功させる「正しいやり方」とは
では、こうした活力あふれる優秀な人材を、企業はどのように迎え入れればよいのでしょうか。セミナーでは、外国人採用を成功させるための「正しいやり方」が具体的に示されました。
まず重要なのは、企業側が持つ固定観念やバイアスを取り払うことです。多くの日本企業は、東南アジアの人材に対して「教育水準は大丈夫か」、「仕事のスキルは十分か」といった漠然とした不安を抱きがちです。しかし、「実際に採用した企業からは、想像以上に優秀でびっくりした。今、日本人でこんな優秀な人は採用できないという声が数多く寄せられている」(石中氏)といいます。

一方、インドネシアなどのイスラム圏の国に対しては、宗教への懸念が壁になることも少なくありません。しかし和田氏は、「知らないから怖い、知らないから身構えてしまうというケースがかなり多い」と指摘します。お祈りの時間や食事(豚肉の禁止)、女性のスカーフ(ヒジャブ)などについて、「なぜそうするのかを丁寧に説明し、会社としてどう対応できるかを一緒に考えることで、ほとんどの懸念は解消できる」(石中氏)といいます。重要なのは、一方的に壁を作るのではなく、対話を通じて相互理解を深める姿勢だと指摘します。
その上で、採用を成功させるための具体的なポイントとして、石中氏は大きく3つの点を挙げました。
第一に、「正しいルートでの採用」です。働く企業の情報を正確に理解した上で来日できる仕組みを整えることが重要だといいます。One Terraceでは、国連機関などが推進する「倫理的採用(エシカルリクルートメント)」という考え方を重視し、候補者に企業の仕事内容、給与、住環境などの情報を透明性高く提供し、ミスマッチを防ぐことを徹底しています。最初の採用でつまずくと、その後の定着や活躍は望めません。正しい情報提供を通じて、候補者と企業の間に信頼関係を築くことが、成功の第一歩となります。
第二に、「受け入れ体制」です。外国人だからといって、特別なことを過剰に準備する必要はありません。むしろ、日本人社員を迎える時と同じように、「当たり前のこと」を丁寧に行うことが重要です。例えば、なぜ自社が外国人を採用するのかという目的やビジョンを社内全体で共有し、合意形成を図ること。さらに、入社した社員に対して、仕事を教える直属の上司、仕事の相談ができるメンター、それ以外の生活面の相談ができる担当者など、役割を明確にしてサポート体制を築くことが有効です。和田氏は「気にしすぎて前に進めないケースは少なくない。そこまで重く考える必要もない」とアドバイスします。大切なのは、一人の新しい仲間として自然に接し、コミュニケーションを密に取ることだといいます。
第三に、「採用基準の明確化と丁寧なマッチング」です。自社がどのようなスキルや人物像を求めているのかを曖昧にせず、具体的に言語化することが求められます。One Terraceでは、企業のためだけに現地の大学などで面接会を実施し、候補者に直接企業の魅力を伝えてもらう場を設けています。「無理にマッチングさせるのではなく、企業と候補者がお互いを深く理解し、納得した上で選び合う「お見合い」のようなプロセスを重視する。言語の壁があるからこそ、こうした丁寧なステップが不可欠だ」と、石中氏は強調します。
こうした採用プロセスと受け入れ体制を整えることで、外国人社員は組織に定着し、大きな戦力となります。気になる定着期間については石中氏は、「企業がどういう考え方の人を採用したいのかによって違う」と前置きした上で、キャリアパスを明確に示し、日々のコミュニケーションを丁寧に行うことで「3年や5年、あるいはそれ以上長く活躍してくれる可能性は十分にある」と述べました。
外国人採用がもたらす効果は、単なる人手不足の解消にとどまりません。最大のメリットは、組織そのものに「活力」がもたらされ、変革が起きることだと石中氏は続けます。「社内に海外の方、外国籍の方がいると、本当に前向きになるというのが正しい表現である」と利点を強調します。さらに、育ってきた文化や価値観が違う人材を受け入れることで、日本の常識が必ずしも世界の常識ではないことに気付かされることも重要だといいます。例えば、仕事のスピード感でも、韓国出身者の「早く早く」という文化に触れることで、既存の業務の進め方を見直すきっかけになるそうです。「各国の常識は固定観念を打破し、多様な視点を取り入れるダイバーシティ経営に他ならない。例えば、介護施設に若い外国人スタッフが入ったことで、職場の雰囲気が格段に明るくなったという事例もある。外国人の持つ若さや明朗さが組織全体にポジティブな影響を与えることに目を向け、採用を前向きに検討することが日本企業の未来を創る」(石中氏)と述べました。






















