DXマガジンは2023年7月5日、定例のセミナーを開催しました。今回のテーマは「健康DXへの挑戦」。Personal Health Tech 代表取締役の新田哲哉氏をゲストに迎え、企業が進める従業員の健康管理施策の課題と具体的な課題解決策について解説しました。
従業員の健康管理に伴う業務負荷を軽減するサービス
労働力不足が深刻化する中、従業員の健康を維持、増進する施策の重要性が増しています。従業員の健康が生産性向上や離職率低下に寄与すると考えられるようになっているからです。そこで多くの企業が、福利厚生の一環でスポーツジムの利用料を補助したり、社員食堂に野菜中心のメニューを揃えたりし、従業員の健康に積極的に関与するようになっています。「従業員の健康」が事業の根幹を支える。こう考える経営者は決して珍しくありません。
とはいえ、具体的に何から取り組めばいいのか分からない企業は少なくありません。不健康な従業員に対し、どう改善を促すべきか、食習慣や運動習慣をどう管理すべきか分からない経営者が散見されます。
そこで今回のDXセミナーでは、従業員の健康管理に悩む経営者や人事担当者向けに、健康増進策を進める際の課題と、有効な健康増進策を取り上げました。ゲストには、Personal Health Tech 代表取締役の新田哲哉氏が登壇。企業の健康管理に精通する同氏が健康管理が求められる背景と、同社が提供する健康管理の支援サービスの特徴を紹介しました。
新田氏は「健康DXへの挑戦」と題したテーマで講演。企業が従業員の健康管理になぜ取り組まなければならないのか、その背景を説明しました。「企業には、従業員が健康に働けるよう配慮する義務がある。健康診断を定期的に実施するのはもとより、症状に応じた措置を講じることも求められる。企業はこうした義務に準じた支援や施策に取り組まなければならない」(新田氏)と指摘。心身の健康を害さないよう労働条件を改善したり、適切な治療や看護を実施したりするのも義務だと言います。
「健康経営」に取り組む機運が高まっていることにも言及します。「経済産業省の認定制度である『健康経営』の取得を目指す企業が増えつつある。2021年の取得企業数は1万5000社を超え、2025年には健康経営に取り組む企業数は10万社に達する見込みだ。健康経営に舵を切り、生産性向上や人材獲得、イメージアップを図る企業は少なくない」(新田氏)と強調します。さらに上場企業などを対象に、有価証券報告書に「人的資本情報の開示」が2023年3月期より義務付けられました。開示するのが望ましい情報として、身体的健康や精神的健康、エンゲージメントなどの項目が含まれるといいます。企業はこれまで以上に、従業員の健康増進策に注力する必要性に迫られていると新田氏は続けます。
従業員の健康管理の重要性が増しつつあるものの、企業には健康管理に踏み切れない課題もあると新田氏は指摘します。「健康情報を収集、分析できるようにし、従業員ごとに応じた健康増進策を打ち出すには、健康に関する情報の一元管理が欠かせない。しかし実際は、健康診断やストレスチェック、労働時間、従業員のエンゲージメントなどの健康情報は散在している。健康診断の結果は約7割が紙の書類として送られており、データ化するには転記の手間がかかる。多くの従業員を抱える企業にとって、転記作業だけでも膨大な時間がかかってしまう」(新田氏)と考察します。
では、こうした課題をどう解消すべきか。その手段の1つとなるのが、同社が提供する健康管理支援サービス「けんさぽ」です。セミナーでは「けんさぽ」の特徴と、企業の課題をどう解消するのかも説明しました。
「けんさぽ」は、健康情報を収集、管理するためのクラウドサービスです。健康診断やストレスチェックの結果を従業員ごとに確認できるようにします。健康診断を受けていない従業員や、結果に所見のあった従業員を抽出する機能も備えます。「誰が有所見者なのかを、アイコンを使って分かりやすく表示する。グラフを活用し、自社の状況を視覚的に把握しやすくもする。従業員の健康を管理する人事担当者の負荷を軽減するUIにこだわった」(新田氏)と強みを説明します。なお、従業員の機微な健康情報を不特定の人に参照されないよう、人事担当者や産業医、保健師などに応じたアクセス権限を付与できるようにしているのも特徴です。
「けんさぽ」の強みはデータの一元化にとどまらないと新田氏は続けます。「最大の強みは、健康診断に関わる業務も代行することだ。健康診断の結果をシステムに転記するのはもとより、健康診断の予約や従業員との日程調整、二次健診や特定保健指導の勧奨まで代行する。健康診断に関わる面倒な業務をアウトソーシングすることで、企業は人事担当者の作業負荷を軽減できる」(新田氏)といいます。多くの企業の課題である健診結果のデータ化も含めて支援できるのが強みだと強調します。
なお、「けんさぽ」の月額使用料は、従業員1人あたり100円。低料金ながら、システムの利用と健康診断に関わる業務の代行をセットで提供するのも売りの1つです。「競合する支援サービスより低料金だと自負する。さらに競合サービスの中には、健康診断の予約代行業務に別途費用がかかるものもあるし、二次健診の勧奨業務を代行しないものもある。『100円』という低料金でも、競合サービスに引けを取らないサービス内容を盛り込んでいるのが『けんさぽ』の強みだ」(新田氏)といいます。なお、従業員向けのヘルスケアアプリや健康経営優良法人認定取得の支援コンサルティングサービスなど、豊富なサービスなどを組み合わせて企業向けにカスタマイズすることも可能です。「従業員の健康管理を始めたい企業はもちろん、自社の健康経営を次のステージへ引き上げたいと考える企業まで支援する。今後はAIを使って従業員一人ひとりの健康状態をスコアリングするサービスの展開も視野に入れる。低料金を武器に、企業の健康管理の一助を担っていきたい」(新田氏)と、今後の展開を述べました。