相手に好意的な印象を与え、良好な関係を築くためには何が必要か。その1つが、興味ある分野に精通すること。つまり、その分野のこれまでの生い立ちや歴史、経緯を理解することで、相手の信頼感を高められるのです。ここでは生い立ちや歴史、経緯を知ることの大切さについて考えます。【週刊SUZUKI #137】
ITの最近の動向だけではなく、30年以上前の1990年代からの変遷を知っている…。こうした人の話には重みがあります。経緯を知っているからこそ、その人の考えには納得感があります。上辺だけの見解にならず、歴史に裏付けされた知識は信頼感さえもたらします。
このように、特定の分野の歴史や経緯を知ることは、相手に良い印象を与えます。その結果、相手の共感をもたらし、良好な関係を築きやすくなるのです。
いろいろな人と良好な関係を構築するなら、興味の対象を広げるとともに、興味の「深さ」にも目を向けます。その分野がどんな変遷をたどってきたのか、どんな歴史の上で成り立っているのかを学び、正しい理解に基づいた見解を述べられるようにすべきです。興味や知識の歴史を語れる知識こそが言葉に説得力と重みを与え、相手からの信頼を勝ち得る上で重要な要素となるのです。
現在の状況がなぜそうなっているのかを説明するためには、その背景にある歴史や変遷を知ることが不可欠です。例えばIT業界において、どんなに優れたエンジニアが出てきても、昔の汎用機やアセンブラの時代を知っていると、会話の深みが全く変わると私は考えます。相手は「あの頃を知っているんですか!」と驚き、あなたの知識の奥行きに感銘を受けるに違いありません。
流通業界でも同様です。単に今の市場トレンドを語るだけでなく、昭和の時代に百貨店が主流で、スーパーが出現した際に「すぐに消える」と言われた歴史、そこからチェーンストア、コンビニ、専門店といった変遷を経て、オムニチャネルに至るまでの流れを語れるかどうか。これにより、相手はあなたの知識に「この人は本質を理解している」と感じ、信頼を寄せるようになります。
興味の深みは、単なる情報の羅列ではありません。それは、あなたがその分野にどれだけの情熱を注ぎ、時間をかけて学んできたかの証です。さらに、「今は必ず過去の連続の結果」であると考えます。この考えに基づけば、歴史への理解は未来を予測し、現在の課題に対する本質的な解決策を見出す力にも繋がります。例えば、日本のIT業界がクラウド化で失敗した経緯を2000年代初頭から語れると、その話は聞く人の心に響き、共感と学びを生み出すでしょう。
興味の深さを追求するためには、単に情報を集めるだけでなく、その情報の「背景」や「関連性」を掘り下げて考えてみてください。1つの事象に対しても、「なぜそうなったのか」、「その前はどうだったのか」。「どのような影響があったのか」といった問いを立て、歴史を紐解くように学ぶのです。
あなたが持つ知識の「深さ」は、相手に「この人と付き合うと学びになるな」という強烈な印象を与えます。それは、相手があなたに興味を感じる大きな要因の1つとなるでしょう。自分の専門分野や興味のある領域を深く掘り下げ、その歴史を語れるようになること。この努力があなたの外交力を格段に高め、深みのある賢人へと導くのです。
【外交の心得 その14】

筆者プロフィール
鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。他に、日本オムニチャネル協会 会長、SBIホールディングス社外役員、東京都市大学特任教授を兼任。






















