東急電鉄は、鉄道事業を中心に街づくり・不動産・デジタル領域を一体で推進し、「沿線共創型DX」の実現を加速させています。近年では、デジタル乗車券サービス「Q SKIP」や、スタートアップ連携プログラム「URBAN HACKS」など、地域と企業、利用者をつなぐ仕組みづくりに注力しています。これらの取り組みは、単なる交通のデジタル化にとどまらず、“都市全体の体験設計”を目指す試みとして注目されています。
Q SKIPがもたらす「街と鉄道の一体体験」
東急電鉄が提供する「Q SKIP(キュースキップ)」は、スマートフォンのQRコードを活用したデジタル乗車券サービスです。専用アプリやウェブサイトから乗車券を購入し、改札機にQRコードをかざすだけでスムーズに入出場が可能となります。公式サイトによると、紙のきっぷを発券する手間がなく、利用履歴やチケットの管理もオンラインで完結できる仕組みです。
2024年以降は、Q SKIPを活用した地域連携型の「企画乗車券」も拡充されています。たとえば、沿線の水族館や美術館、商業施設の入場券・特典とセットになったデジタルチケットが販売されており、鉄道利用を軸にした観光・商業の相乗効果を狙っています。これらの取り組みは、鉄道と地域経済の両面で価値を高めるDXの好例といえます。
また、東急の2025年度設備投資計画では、「QRコード対応改札機の増設」や「クレジットカードタッチ決済の対応強化」など、決済・交通基盤のデジタル化が重点項目として掲げられています。これにより、Q SKIPは交通ICカードを補完する「第三の乗車体験」として定着しつつあります。
URBAN HACKSが推進する「共創エコシステム」
一方で、東急グループのデジタル事業を支えるのが、2023年に発足した「URBAN HACKS」です。同組織は「交通・生活・リテール・不動産など、都市の多様なデータとアプリケーションをつなぐ共創型開発組織」として東急アライアンスプラットフォームを通じて、スタートアップや自治体、企業との共創を推進し、新しい都市サービスの開発に取り組んでいます。
URBAN HACKSでは、住民・企業・鉄道が共に課題を発見し、実証を重ねる“共創サイクル”が重視されています。たとえば、東急線沿線の購買データや移動データを匿名化して利活用することで、駅周辺の商業動線分析や地域施設の最適配置など、街づくりと生活データを結びつける取り組みも始まっています。
鉄道を超えた「都市OS」構想へ
東急のデジタル戦略の根底には、「移動×生活×データ」をつなぐ都市OS的な発想があります。鉄道というリアルインフラを基盤に、アプリやサービスを通じて利用者体験を拡張し、地域施設や商業空間までを含めた一体的なサービス設計を進めているのです。
こうした方向性は、単なる利便性の追求ではなく、「地域が主役のデジタル共創」を重視する姿勢にあります。沿線住民や企業、行政が共にデジタルツールを活用し、街の課題を解決していく。その実践の場が、Q SKIPやURBAN HACKSのような共創DXプロジェクトです。
今後の展望
今後は、Q SKIPを中心に「地域施設との統合チケット」「商業施設とのキャンペーン連携」など、さらなる拡張が予想されます。また、URBAN HACKSを通じて開発された実証サービスが、東急線沿線の他地域や他社鉄道にも展開される可能性も見込まれています。鉄道会社としての東急が、デジタルによって「都市体験の総合デザイン企業」へと進化していく。そのプロセスこそが、東急版DXの本質といえるでしょう。
レポート/DXマガジン編集部 小松






















