第1回では、マーケティングの真のデジタルシフトとは、社会や生活者のデジタルシフトに対してマーケティングを変革することと、解説しました。第2回では、真のデジタルシフトに向けてマーケターは業務をどう変革するかについて解説していきます。
マーケティング4.0のカスタマージャーニー
具体的なイメージをつかむために、第1回目で解説したコトラーが提唱しているマーケティング4.0時代のカスタマージャーニーで説明します。以下の図に要点をまとめました。
コトラーは、まず、カスタマージャーニーのプロセスを5A、つまり、認知(Aware)、訴求(Appeal)、調査(Ask)、行動(Act)、推奨(Advocate)の5つに定義しました。これはマーケティングの世界でよく使われるAIDMA、すなわち、注目(Attention)、興味(Interest)、欲求(Desire)、記憶(Memory)、行動(Action)、の発展版として考えることができます。
AIDMAにおけるプロセスの最終ゴールが購買行動(Action)であることに対して、5Aでの最終ゴールは推奨(Advocate)となり、購買行動は4つめのプロセスである行動(Act)に含まれました。また行動(Act)の中には、購買した商品の利用やカスタマーサービス、再購買も含まれます。つまり、マーケティングの対象プロセスは購買がゴールではなく、購買後の推奨に至るまでの様々な行動を含んだプロセスとして再構成されました。
さらに、コトラーは5Aにおける重要な測定指標として、購買行動率とブランド推奨率をあげており、とくにブランド推奨率はマーケティングの最重要な指標としています。
つまり、マーケティング4.0では、カスタマージャーニーのゴールを購買に置くのではなく、ブランド推奨、すなわちロイヤルティをゴールにするべきとの考えが明確に打ち出されました。
また、購買と推奨に影響を及ぼす三つの源があることを述べています。一つ目は、企業からの広告やプロモーション等の外的要因(Outer)、二つ目は、友人や家族といった身近な人々のクチコミである他者への影響(Others)、三つ目は、消費者自身の購買体験や使用体験から生じる自分自身への影響(Own)です。各々の影響を高める施策が、外的な影響を高めるマーケティング・コミュニケーション施策、他者への影響を高めるコミュニティ・マーケティング施策、自分自身への影響を高める顧客体験向上の施策です。
インターネットやSNSが普及し、企業と顧客や顧客同士が常時接続しているオンラインの時代では、購買は他者からの影響、推奨は自分自身の体験がもっとも強く関与しています。これを論理的に考察すると、購買に最大の影響を与える他者になる人は、自分自身の体験で推奨者になった人にほかなりません。したがって、購買や推奨という目標を達成するためのもっとも重要な施策は、顧客体験向上の施策であるということになります。
コトラーのマーケティング4.0時代のカスタマージャーニーでは、従来のマーケティングの最大の焦点であったマーケティング・コミュニケーション施策は、それほど重要でなく顧客体験向上の施策に注力すべきことが分かります。
AIDMAにおけるプロセスの最終ゴールが購買行動(Action)であることに対して、5Aでの最終ゴールは推奨(Advocate)となり、購買行動は4つめのプロセスである行動(Act)に含まれました。また行動(Act)の中には、購買した商品の利用やカスタマーサービス、再購買も含まれます。つまり、マーケティングの対象プロセスは購買がゴールではなく、購買後の推奨に至るまでの様々な行動を含んだプロセスとして再構成されました。
さらに、コトラーは5Aにおける重要な測定指標として、購買行動率とブランド推奨率をあげており、とくにブランド推奨率はマーケティングの最重要な指標としています。
つまり、マーケティング4.0では、カスタマージャーニーのゴールを購買に置くのではなく、ブランド推奨、すなわちロイヤルティをゴールにするべきとの考えが明確に打ち出されました。
また、購買と推奨に影響を及ぼす三つの源があることを述べています。一つ目は、企業からの広告やプロモーション等の外的要因(Outer)、二つ目は、友人や家族といった身近な人々のクチコミである他者への影響(Others)、三つ目は、消費者自身の購買体験や使用体験から生じる自分自身への影響(Own)です。各々の影響を高める施策が、外的な影響を高めるマーケティング・コミュニケーション施策、他者への影響を高めるコミュニティ・マーケティング施策、自分自身への影響を高める顧客体験向上の施策です。
インターネットやSNSが普及し、企業と顧客や顧客同士が常時接続しているオンラインの時代では、購買は他者からの影響、推奨は自分自身の体験がもっとも強く関与しています。これを論理的に考察すると、購買に最大の影響を与える他者になる人は、自分自身の体験で推奨者になった人にほかなりません。したがって、購買や推奨という目標を達成するためのもっとも重要な施策は、顧客体験向上の施策であるということになります。
コトラーのマーケティング4.0時代のカスタマージャーニーでは、従来のマーケティングの最大の焦点であったマーケティング・コミュニケーション施策は、それほど重要でなく顧客体験向上の施策に注力すべきことが分かります。
マーケターの仕事は「購買者づくり」から「ファンづくり」に変わる
コトラーの、カスタマージャーニーに対するメッセージは、マーケターの仕事の変革を示唆しています。カスタマージャーニーの目的は、購買だけではなく、むしろ購買後の推奨というロイヤルティの向上であり、そのための施策は従来のマーケティングの焦点であるマーケティング・コミュニケーション施策ではなく、購買や購買後の使用時の顧客体験向上の施策であることが分かります。そしてマーケターは狩猟型施策による「購買者づくり」から顧客体験向上施策による「ファンづくり」への仕事に転換する必要性があります。
以下に、従来のマーケティングとマーケティング4.0時代のマーケターの業務を比較しました。
以下に、従来のマーケティングとマーケティング4.0時代のマーケターの業務を比較しました。
マーケターは従来型の購買者づくりを目的としたファネルマネジメント型から、マーケティング4.0時代、すなわちデジタルシフト時代においては、ファンづくりを目的としたロイヤルティマネジメント型へと移行すべきということです。
3つのロイヤルティ
つぎに、ロイヤルティの定義です。ロイヤルティという言葉は、近年頻繁に使われるようになりました。そしてロイヤルティを語る視点が大きく3つあることに気づきました。
一つ目が、「経済ロイヤルティ」です。顧客がどれだけ経済的に自社に貢献しているかという視点です。平たくいえば、どれくらい自社の商品を購入しているかが基準となります。「経済ロイヤルティ」は企業収益に直結して、分かりやすい定義ですが、極めて企業目線なものです。自社にとってありがたいお客様がロイヤルティの高い顧客という視点は、顧客目線ではありません。
二つ目が、「行動ロイヤルティ」です。経済ロイヤルティが顧客の購買金額に注目することに対し、行動ロイヤルティは顧客の企業に対するアクションに注目します。具体的には、来店頻度、自社ホームページへのアクセス頻度や滞留時間、イベントへの参加回数、自社商品やサービスの利用頻度等が基準となります。この視点も経済ロイヤルティほどではありませんが、企業目線と考えられます。
小売業の世界ではRFM分析という手法で離反しそうな顧客やロイヤルティを測ることが通常に行われています。RとはRecencyのことで、直近いつ来店したかを表します。FはFrequencyの略で、一定期間で何回来店したかを、そしてMはMonetaryを意味し、一定期間での購入金額のことです。このRFM分析は前述の定義に当てはめると、RとFは行動ロイヤルティ、Mは経済ロイヤルティの位置づけとなります。すなわち、RFM分析も企業目線でのロイヤルティの定義といえます。
では、顧客目線のロイヤルティの定義とはどういうものでしょうか。それは、三つ目の視点である「心理ロイヤルティ」です。顧客の自社に対する感情を指標にしたものです。お客様の自社あるいは自社商品に対する愛着度合いで判断します。
そして、この「心理ロイヤルティ」こそ、デジタルシフト時代にマーケターがマネジメントするべきロイヤルティになります。 次回からはこの心理ロイヤルティの見える化手法について解説していきます。
二つ目が、「行動ロイヤルティ」です。経済ロイヤルティが顧客の購買金額に注目することに対し、行動ロイヤルティは顧客の企業に対するアクションに注目します。具体的には、来店頻度、自社ホームページへのアクセス頻度や滞留時間、イベントへの参加回数、自社商品やサービスの利用頻度等が基準となります。この視点も経済ロイヤルティほどではありませんが、企業目線と考えられます。
小売業の世界ではRFM分析という手法で離反しそうな顧客やロイヤルティを測ることが通常に行われています。RとはRecencyのことで、直近いつ来店したかを表します。FはFrequencyの略で、一定期間で何回来店したかを、そしてMはMonetaryを意味し、一定期間での購入金額のことです。このRFM分析は前述の定義に当てはめると、RとFは行動ロイヤルティ、Mは経済ロイヤルティの位置づけとなります。すなわち、RFM分析も企業目線でのロイヤルティの定義といえます。
では、顧客目線のロイヤルティの定義とはどういうものでしょうか。それは、三つ目の視点である「心理ロイヤルティ」です。顧客の自社に対する感情を指標にしたものです。お客様の自社あるいは自社商品に対する愛着度合いで判断します。
そして、この「心理ロイヤルティ」こそ、デジタルシフト時代にマーケターがマネジメントするべきロイヤルティになります。 次回からはこの心理ロイヤルティの見える化手法について解説していきます。
渡部 弘毅 (わたなべ ひろき)
ISラボ 代表
1985年日本ユニシス入社、2000年日本IBM、2005年日本テレネットを経て、2012年にISラボ設立。一貫してCRM分野に関わり、プロダクトマーケティング、業務改革コンサルタント、事業企画を経験。現在はロイヤルティマネジメントのコンサルティング活動中。日本オムニチャネル協会、情報処理学会、コールセンタージャパン等、複数の研究会のリーダーを務め、定期的に数多くのセミナーの講師を担当している。
著書:『お客様の心をつかむ心理ロイヤルティマーケティング 「心の満足」と「頭の満足」を測り、科学的にロイヤルティを高める手法』
https://www.amazon.co.jp//dp/B083J3P3PD/