中小企業の業務効率化や競争力強化を目的としたDXは広がりつつありますが、現場の負担軽減につながらない事例が少なくありません。株式会社SMBが実施した「中小企業におけるDX推進の実態と課題」調査では、進捗が限定的で、導入後に作業増を感じる層が多数派である実態が明らかになりました。結果からは、部分的なツール導入に偏り、全体設計や運用定着が不足している構図が見て取れます。DXの必要性は共有されながらも、実行体制や現場適合でつまずく現状が浮き彫りになりました。ここでは調査データに沿って、停滞の要因と現場に寄り添う設計の重要性を整理します。
調査の位置づけと全体像。

本調査はPRIZMAによるインターネット調査で、期間は2025年12月20日から23日、回答者は1,008人です。対象は中小企業の経営者・役員・管理職で、業種は製造業、建設業、運輸業などのブルーカラー領域に限定されています。進捗状況は、かなり進んでいるが11.5パーセント、ある程度進んでいるが33.6パーセント、あまり進んでいないが28.7パーセント、まったく進んでいないが26.2パーセントでした。十分に進んでいる層は限定的で、多くが道半ばで足踏みしている状況です。部分的なシステム導入にとどまり、業務全体の変革に至っていない可能性が示されます。導入後の運用や現場定着の設計が追いつかず、成果実感が弱まる点も読み取れます。
進まない理由はIT人材不足が最多。着手指針とコストが障壁に

DXが進まない理由は、社内にIT人材がいないが36.3パーセントで最多でした。次いで、何から始めればよいかわからないが21.3パーセント、DXにかけられるコストがないが20.9パーセントです。専門人材の不足は企画段階からの停滞を招き、着手の指針の不足は選定や導入の迷いを生みます。コスト制約も相まって、必要性を認識しながらも実行体制の構築に踏み出しにくい状況が確認できます。こうした制約が複合化することで、現場への実装と定着が遅れ、成果の伸び悩みにつながっています。導入後の教育や運用支援まで含む計画性の不足が、価値発揮を阻んでいるといえます。
導入領域は基幹周辺に集中。数を増やしても進捗差は限定的

導入済みツールは、給与や勤怠管理が43.2パーセントで最多、会計が34.0パーセント、顧客管理が27.2パーセントでした。法令対応や必須業務に直結する領域が優先されています。進捗度別の導入項目数の平均は、かなり進んでいるが2.7項目、ある程度進んでいるが2.2項目、あまり進んでいないが1.9項目で、数の差は大きくありません。ツール数の積み増しだけでは進展に直結せず、全体設計と連携を前提にした構成が不可欠であることがうかがえます。成果満足度は、とても満足が15.2パーセント、ある程度満足が46.5パーセントで、一定の効果はありつつも期待水準に届かない評価が中心です。
ツール併用が再入力と手作業を増やす。紙や表計算への回帰も継続

複数ツールの併用課題では、システム間の再入力が41.5パーセントで最多、アカウントやパスワード管理の煩雑さが35.0パーセント、表計算ソフトでの再集計が33.6パーセントでした。データ分断が手作業を誘発し、期待した効率化を相殺しています。DXで逆に作業が増えた経験は、とてもあるが26.2パーセント、ややあるが56.3パーセントで、8割超が負担増を実感しています。紙や表計算ソフトに戻ったまたは併用する理由は、入力に時間がかかるが30.1パーセント、ツールが業務に合っていないが28.6パーセント、対応できない業務があるが28.5パーセントでした。要件定義や業務整理の不足が、アナログ回帰の背景にあることが明確です。
現場が求めるのは直感操作と柔軟適合。画一設計のミスマッチが障害に
中小企業に合うツールが不足する理由は、同じ業種でも会社ごとに業務フローが異なるが33.7パーセント、業務内容が会社ごとに異なり標準化しづらいが33.5パーセント、「人がシステムに合わせる」前提で作られているが32.3パーセントでした。必要な要素としては、操作が直感的でITに詳しくない人でも使いやすいが27.8パーセント、現場ごとの業務フローに柔軟に対応できるが22.3パーセント、自社業務に合わせて柔軟にカスタマイズできるが22.0パーセントです。高機能であること以上に、日常業務に無理なく溶け込み、継続利用されることが重要である点が示されました。現場のスキルを前提としない設計と、導入後の支援体制の整備が定着の鍵になります。
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