2022年は「メタバース元年」と呼ばれ、多くの企業が仮想空間ビジネスへの参入を発表しました。SNS、ゲーム、EC、イベントなどさまざまな領域でメタバース活用が話題となり、企業の新たなデジタル戦略として大きな期待が寄せられました。しかしその後、「メタバースブームは終わった」という声も増えています。大規模投資を行っていた企業が事業戦略を見直したり、日本企業の中にはメタバースプロジェクトから撤退するケースも出てきたりしています。では、メタバースは本当に終わったのでしょうか。結論から言えば、「消えた」のではなく、活用の形が変化していると言えます。特に近年は、BtoCのエンタメ領域から、BtoB領域での実用的な活用へとシフトが進んでいます。
巨額投資を続ける企業もある
メタバースを巡る動きの象徴的な企業が、Meta Platformsです。同社は2021年に社名を変更し、メタバースを次世代のコンピューティング基盤と位置づけて大規模投資を行ってきました。ただし、同社のXR(拡張現実)部門「Reality Labs」は2020年以降で累計600億ドル以上の損失を計上しており、投資の負担が課題として指摘されています。
近年はAI分野への投資を強化するなど戦略の見直しも進めていますが、VRやARを含む没入型技術への取り組み自体は継続しています。つまり、メタバース構想そのものが完全に消えたわけではなく、技術とビジネスの現実を踏まえた調整段階に入ったと見ることができます。
日本企業では撤退と実用化が同時進行
日本では、2022年前後に多くの企業がメタバースへの参入を発表しました。しかし、期待ほどユーザーが増えなかったことや収益化の難しさから、事業を縮小・撤退する企業も増えています。一方で、メタバースを実務用途で活用する企業も登場しています。ここで注目されているのが、マーケティングや採用、企業コミュニケーションといったBtoB領域です。
例えば、富士フイルムは、コミュニティマーケティングの取り組みとしてメタバースを活用しています。ユーザーが仮想空間で交流できる仕組みを構築し、ブランドとの接点を強化する施策として利用されています。また、酒井化学工業は、メタバースを活用したバーチャル工場見学を導入しました。オンライン上で工場設備や製造工程を体験できる仕組みを提供することで、企業理解の促進や採用活動への活用を進めています。こうした事例は、メタバースが単なるエンターテインメントではなく、企業の情報発信やコミュニケーション基盤として活用され始めていることを示しています。
BtoB活用が広がるメタバース
現在、企業のメタバース活用は主に次の3分野で広がっています。
1. 採用・会社説明会
遠隔でも企業文化や職場環境を体験できる場として活用されています。
2. マーケティング・コミュニティ形成
ブランドファンとの交流やイベント開催の場として活用されています。
3. 工場見学・製品説明
設備や製造工程を仮想空間で再現し、顧客や学生に理解を深めてもらう用途です。
リアル空間では難しい体験を提供できる点が、企業用途として評価されています。
「メタバースは終わった」は誤解
2022年の過熱したブームが落ち着いたことで、「メタバースは失敗した」という見方も広がりました。しかし実際には、企業の取り組みは続いており、むしろ実用的な用途へと進化している段階と言えます。テクノロジーの歴史を見ると、新しい概念はブームの後に現実的な用途へと収れんしていく傾向があります。メタバースも同様に、エンタメ中心の話題から、企業のDXやコミュニケーション基盤としての活用へとシフトしつつあります。「メタバースは終わった」のではなく、ブームから実装フェーズへ移行した。企業の取り組みを見ると、その現在地が少しずつ見えてきています。
レポート/DXマガジン編集部






















