基幹業務システムの標準化を契機に、東京都中野区が「書かない窓口」の実現に踏み出しました。入庁4年目の若手職員の気づきとベテラン職員の技術力が掛け合わさり、開発費ゼロ・着手から3か月という異例のスピードで生まれたMKシステムは、全国11自治体が参加した発表会で最優秀賞を受賞し、今や全国への横展開が期待されるモデル事例となっています。
課題は「待ち時間」と「書く負担」——窓口現場から生まれた着眼点
中野区は2024年5月に新庁舎へ移転した際、転入時に必要な手続を一か所で完結できるようフロアを統合しました。区民の移動負担を軽減する狙いでしたが、待合スペースのコンパクト化により、繁忙期には2〜3時間の待ち時間が発生するようになりました。戸籍住民課管理運営係の岸田知樹主事によると、2024年度には約2万6,000人が転入手続を行っており、一人暮らしの外国籍の方も多く、日本語での申請書記入に時間がかかるケースも課題となっていました。
こうした現場の実態を日々目の当たりにしていた岸田主事が着目したのが、基幹業務システムの標準化によって転出証明書に新たに記載されるようになった二次元コードでした。このコードを読み取ることで申請書への記入を自動化できないかと考え、「DXなんでも相談」へ持ち込んだことが、MKシステム誕生のきっかけとなりました。
若手とベテランのタッグ——Excelマクロで実現した完全内製開発
岸田主事のアイデアを形にしたのが、デジタル政策課の森本直樹主査です。二人は要件定義から開発まで協力し、Excelのマクロを活用した完全内製開発で、外部への開発費用をかけることなくシステムを完成させました。
MKシステムの操作は3ステップで完結します。転出証明書の二次元コードをスキャナーで読み取り、氏名・住所等の情報を自動取り込みして申請書を印刷し、区民はサインをするだけで受付が完了します。操作は二次元コードの読み取りとタッチペンのみに絞られており、ITに不慣れな職員でも使いやすい設計としました。システム名は発案者の森本主査と岸田主事の名字の頭文字から命名されています。
区民も職員も負担が激減——待ち時間は2〜3時間から18分へ
MKシステムの導入効果は数字にも明確に表れています。窓口での受付にかかる時間は約5分から半減し、さまざまな改善の取組と合わせて、繁忙期に2〜3時間かかっていた待ち時間は18分にまで短縮されました。区民からは「名前しか書かずに済んだため、とても楽だった」との声が寄せられており、職員側も申請書が印字された状態で出てくるため、筆跡を読み解く手間がなくなり審査スピードが大幅に向上しています。
標準化がもたらす全国への波及——「やってみる」文化が鍵
デジタル庁デジタル社会共通機能グループの橘清司参事官は、中野区の取組について「標準化によって新たに追加された機能を活用した業務改善は、システムが標準化されたからこそ全国の自治体で取り組むことが可能」と述べており、2026年度以降に多くの自治体で標準準拠システムが稼働する中で同様の業務改善が広がることへの期待を示しています。
基幹業務システムの標準化はシステム移行がゴールではありません。そこから生み出された余力を住民サービスの向上に活かす、中野区のMKシステムは、現場の職員が主体となって変化を生み出す自治体DXの可能性を示しています。
レポート/DXマガジン編集部 權






















