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コラム

「同意すればOK」は限界? AI時代に変わる個人情報保護のルール

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個人情報保護法を巡るルールが、AI時代に合わせて見直されようとしています。
個人情報保護委員会は2026年4月7日、「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」が閣議決定されたと発表しました。今回の改正法案では、個人データの利活用を進めるための規律の見直しと、違反行為に対する実効性のある対応の両方が論点になっています。

特に注目されているのが、本人同意に関するルールの見直しです。これまで個人情報保護は、本人に利用目的を示し、同意を得るという考え方を中心に設計されてきました。しかし、生成AIやデータ分析の活用が広がる中で、すべての場面を従来の同意取得だけで整理することは難しくなりつつあります。

今回の改正法案では、統計作成等であると整理できるAI開発などについて、一定条件のもとで本人同意なしに個人データ等を取り扱えるようにする方向性が示されています。ただし、これは「AI開発なら個人情報を自由に使える」という意味ではありません。本人の権利利益を不当に害しないことや、利用目的、管理体制、透明性などが重要になります。

つまり今回の法改正は、「個人情報を守るか、活用するか」という単純な二択ではありません。AI時代において、個人情報の保護とデータ利活用をどう両立させるのか。そのバランスを再設計する動きだと言えます。

「同意」だけでは対応しにくい場面が増えている

これまでの個人情報保護では、本人同意が重要な役割を担ってきました。企業が個人情報を取得し、利用する際には、利用目的を明らかにし、本人が理解したうえで同意する。この仕組みは、利用者の権利を守るために必要なものです。

しかし、AIやデータ分析の時代になると、データの使われ方はより複雑になります。ひとつのサービスで集められたデータが、統計分析やサービス改善、AI開発などに活用されることがあります。利用時点では想定しきれなかった形で、後から分析や学習に使われる場面も増えています。

そのたびに個別同意を取り直す運用は、企業にとっても利用者にとっても現実的に難しい場合があります。だからこそ、今回の改正法案では、本人同意を必要としない例外の範囲や条件をどう定めるかが重要な論点になっています。

ただし、同意を取らなくてもよい場面が広がるということは、企業の責任が軽くなるという意味ではありません。むしろ、同意だけに頼らないからこそ、企業にはより高い説明責任と管理責任が求められます。

課徴金制度の導入で、違反への対応も強まる

今回の改正法案では、データ利活用を進める一方で、違反行為への対応強化も盛り込まれています。

注目されているのが、課徴金制度の導入です。重大な違反行為により個人の権利利益が侵害された場合などに、違反行為によって得た財産的利益などを踏まえた課徴金の納付を命じる仕組みが検討されています。

これは、個人情報の利活用を広げる代わりに、ルール違反には実効性のある対応を取るという考え方です。企業にとっては、個人情報保護を単なる法務部門の確認事項として扱うのではなく、経営リスクとして捉える必要が高まります。

AI活用やデータ分析を進める企業ほど、どのデータを、どの目的で、誰が、どの範囲で使うのかを明確に管理する必要があります。データ活用の自由度が高まるほど、ガバナンスの重要性も高まるのです。

企業に求められるのは“使わない守り”ではなく“信頼される活用”

今回の改正議論から見えてくるのは、個人情報保護の考え方が変わり始めているということです。これまでは、「個人情報を使うことはリスクだから、できるだけ使わない」という発想になりがちでした。もちろん、慎重な管理は必要です。しかしAI時代において、データをまったく使わないことは、サービス改善や社会課題の解決を遅らせる可能性もあります。

重要なのは、個人情報を使うか使わないかではありません。どのように使えば、生活者の権利を守りながら、社会や企業にとって価値を生み出せるのかです。

企業に求められるのは、“使わないことで守る”姿勢だけではなく、“信頼される形で活用する”姿勢です。そのためには、利用目的を分かりやすく伝え、データ管理体制を整え、利用者が不安を感じない透明性を確保する必要があります。

DXの本質は、データを扱う信頼の設計にある

DXは、単に紙の手続きをデジタル化することではありません。データを活用して、業務やサービス、意思決定のあり方を変えることです。

その意味で、個人情報保護法の改正は、DXを進める企業にとって避けて通れないテーマです。AIやデータ分析を活用するほど、企業は生活者の情報に触れる機会が増えます。そのとき、ルールを守るだけでなく、「この企業なら安心してデータを預けられる」と思ってもらえるかどうかが、競争力になります。AI時代には、データを多く持つ企業が強いのではありません。信頼される形でデータを扱える企業が強くなります。

今回の改正法案は、日本社会が「個人情報を守る時代」から、「個人情報を守りながら活用する時代」へ移ろうとしていることを示しています。

個人情報の常識は、いま変わり始めています。これからの企業に問われるのは、データを集める力ではなく、データを扱う信頼を設計する力です。

レポート/DXマガジン編集部

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