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コラム

なぜ今、日本の流通業界はアメリカではなく“イギリス”を見るべきなのか

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日本の流通業界は、長年アメリカを先進事例として学んできました。大型ショッピングモール、郊外型店舗、巨大ECプラットフォーム、ポイントマーケティング、データ活用。流通の成功モデルの多くはアメリカから生まれ、日本企業もそれを参考に成長してきました。実際、多くの企業が今もなお、 Walmart や Amazon 、 Costco 、 Target などを研究対象としています。しかし今、その前提が少しずつ変わり始めています。

日本社会は大きな構造変化の中にある

現在の日本では、人口減少・高齢化・人手不足・都市集中・EC利用拡大・物価上昇といった変化が同時に進行しています。特に労働人口の減少は深刻です。OECDによると、日本の生産年齢人口は1995年の8730万人から2024年には7370万人まで減少しています。さらに高齢化も進み、流通・小売業界では人手不足や物流課題への対応が大きなテーマになっています。

また、経済産業省の調査によると、日本の物販系BtoC EC化率は2024年時点で9.78%となっています。オンライン購入はすでに生活の一部となりつつあります。こうした変化によって、従来の「大量消費・大量販売」を前提とした流通モデルだけでは対応しにくい局面に入り始めています。

今の日本は、“アメリカ型社会”より“イギリス型社会”に近づいているのではないか

郊外型大型店舗、車社会、巨大商圏、大量消費など、これまで日本の流通業界は、アメリカの成功モデルを参考にしてきました。しかし現在の日本は、人口増加時代のアメリカとは社会構造が異なり始めています。

むしろ、都市型生活、EC浸透、人手不足、高齢化、小商圏化といった点では、イギリスのような都市国家型の流通構造に近づきつつあるとも考えられます。実際、イギリスではEC利用率が高く、英国議会図書館のデータによると、2026年3月時点で小売売上に占めるオンライン販売比率は28.7%となっています。これは、日本の物販系EC化率(9.78%)と比べても非常に高い水準です。もちろん、単純比較はできません。統計定義も異なります。しかし、「ECが生活インフラ化している社会」が現実に存在していることは、日本企業にとって重要な示唆になるはずです。

イギリスではClick&Collectやキャッシュレスが広く浸透

イギリスでは、オンライン注文した商品を店舗で受け取る「Click&Collect」が広く普及しています。例えば、 Tesco や Sainsbury’s 、 John Lewis など、多くの主要小売企業がClick&Collectを提供しています。利用者はオンラインで注文し、自宅配送ではなく、近隣店舗で商品を受け取ることができます。また、ロンドンでは地下鉄やバスにおいて、クレジットカードやスマートフォンによるタッチ決済が一般的に利用されています。こうした仕組みは、単なるデジタル化ではなく、「生活導線そのもの」にデジタルが組み込まれている状態とも言えます。

EC時代に、リアル店舗の役割は変わり始めている

かつては、「ECが伸びれば店舗は不要になる」と考えられていました。しかし現在は、少し違う変化が起きています。イギリスでは、店舗が単なる“販売の場”ではなく、商品受け取り拠点、ブランド体験の場、顧客接点、都市生活の接点として機能し始めているようにも見えます。つまり、デジタル化によってリアル店舗が消えるのではなく、“リアルの役割そのもの”が変化しているのです。

これは小売業だけの話ではありません。メーカー、サービス業、IT企業など、「顧客接点」を持つすべての企業に関係する変化です。DXとは、単なる効率化ではなく、「社会構造の変化に合わせて、企業の存在価値をどう再定義するか」という問いに近づき始めているのかもしれません。

「5〜10年後の日本」を、イギリスから考える

では実際に、イギリスでは何が起きているのでしょうか。なぜClick&Collectがここまで広がったのか。なぜキャッシュレスが日常化したのか。なぜEC時代に、リアル店舗の役割が変わっているのか。こうした変化について、DXマガジンでは「イギリス流通」をテーマにしたDX経営セミナーを開催します。

2026年4月に実施したロンドン・マンチェスター視察をもとに、現地で見えてきた最新の流通変化や、日本企業がこれから向き合うべき変化について考えていきます。単なる海外事例紹介ではなく、「日本企業はこれから何を変える必要があるのか」そのヒントを探る内容です。

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