株式会社リコーは2026年10月15日、日本語の文書や図表を理解し、高速かつ省リソースで動作するマルチモーダル大規模言語モデル「リコーLMM_35B-A3B」を開発したと発表しました。
今回のモデルは、必要な処理に応じてAIの一部だけを動かす「MoE(Mixture of Experts)」と呼ばれる構造を採用しています。総パラメータ数は約350億ですが、推論時に稼働するのは約30億に抑えられており、計算負荷を低減しながら高い処理性能を目指した設計です。
2026年11月から順次「RICOH オンプレLLMスターターキット」に搭載し、リコージャパンを通じて提供する予定です。
日本語の図表読解性能が向上、AIエージェントの正答率も77.7%に
新モデルは、アリババクラウドの「Qwen3.6-35B-A3B」をベースに、リコー独自の強化学習やカリキュラム学習を加えて開発されました。
リコー独自の日本語文書読解ベンチマークでは、評価スコアがベースモデルの0.816から0.841に向上。同社の評価条件では、商用クラウドAIモデル「GPT-5.6 Sol」の0.821を上回りました。
また、AIが外部ツールを使いながら業務を遂行する能力を測る日本語ベンチマークでは、通信事業者のカスタマーサービスを想定した課題の正答率が62.4%から77.7%へと15.3ポイント向上しています。
さらに、最大256Kトークンの長文入力に対応し、画像や動画の理解、外部ツールの呼び出しにも対応します。
小型AIサーバー1台で動作、機密文書を扱う企業での活用を想定
リコーは、AIモデルのデータ量を削減する「量子化」技術を用いたバージョンも開発しました。
このモデルは、小型AIサーバー「NVIDIA DGX Spark」1台で動作し、同社の評価では、量子化前のBF16版と比べて1問あたりの応答時間を約3分の1に短縮。追加の高速化技術を併用した場合は、約4分の1になったとしています。
想定する活用先は、製造業の設計図書の確認、金融・保険業界の約款の読解、自治体の申請書類の処理などです。
外部のクラウドに依存せず、自社内のサーバーで生成AIを運用する「オンプレミス」環境に対応することで、機密性の高い文書を扱う企業や組織での利用を想定しています。
見解として、企業の生成AI導入では、回答精度だけでなく、処理速度や運用コスト、情報管理も重要な判断材料になります。今回のモデルは、必要な部分だけを動かす仕組みによって計算負荷を抑えながら、日本語の業務文書を扱う性能の向上を図った点が特徴です。今後は、実際の業務環境でどの程度の処理効率や運用上の効果を得られるかが注目されます。
詳しくは、リコー公式技術ページをご確認ください。レポート/DXマガジン編集部





















