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インタビュー

イノベーションは“わからない”から始まる、大久保氏が語る挑戦する人の条件

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日本オムニチャネル協会の活動を支える「フェロー」。各分野の第一線で活躍する実務家が集い、それぞれの専門知識や経験を持ち寄りながら、業界や企業の枠を越えた学びと共創を推進しています。

今回お話を伺ったのは、ベンチャーキャピタル業界で数多くのスタートアップ支援に携わり、現在は新規事業創出やオープンイノベーションの分野で幅広く活動する、日本オムニチャネル協会監事の大久保氏です。気象学を学んだ学生時代から、インターネット黎明期のヤフーでの経験、YJキャピタルでの投資活動、そして独立後の挑戦まで、一貫して「新しい価値を生み出す人や組織」と向き合い続けてきました。

現在は、日本オムニチャネル協会の監事としても活動し、自身のキャリアで培った知見を活かしながら、新規事業創出やイノベーション人材の育成に取り組んでいます。今回DXマガジン編集部では、大久保氏にインタビューを実施。これまでのキャリアで培った経験や価値観、イノベーションを生み出すために必要な考え方、そしてイノベーションアカデミーにかける想いについて伺いました。

「ECはインターネットビジネスの総合格闘技」――ヤフー時代に学んだこと

――まず、ご経歴について教えてください。

大学は東京工業大学に進学し、大学院では気象学を専攻していました。研究テーマはゲリラ豪雨の予測です。ただ、もともと天気そのものに強い興味があったわけではありません。私が関心を持っていたのは「仕組み」です。天気予報のように、誰もが日常的に触れているものがどのように成り立っているのか。その構造を知りたいという思いがありました。

研究を進める中で、自然現象だけでなく、人工物やビジネスの仕組みにも興味が広がっていきました。そこで、理系版MBAとも呼ばれるマネジメントオブテクノロジーを学び、技術だけでなく経営についても学ぶようになりました。

学生時代から明確な目標があったわけではありません。むしろ私は、「これになりたい」というタイプではなく、「面白そうだからやってみる」という積み上げ型の人間です。勉強も好きでしたし、大学院へ進学した理由の一つも、社会人になる前に自由に学べる時間をもう少し持ちたいと思ったからです。振り返ると、子どもの頃から新しいことに挑戦するのが好きだったのだと思います。

――その後、ヤフーへ入社されますね。

2015年にヤフー株式会社へ入社し、ヤフーショッピング事業に配属されました。当時は「eコマース革命」を掲げ、出店料や手数料を無料化しながら楽天やAmazonをはじめとする競合と競争していた時期です。私はECを「インターネットビジネスの総合格闘技」だと考えています。広告であれば認知やクリックが一つのゴールになりますが、ECはその先があります。商品を見てもらい、購入してもらい、その後も継続的に利用してもらうところまで関わります。インターネット上のビジネスの中でも、お客様との接点が非常に広い領域です。その面白さに強く惹かれました。

営業として出店企業の売上支援を担当した後は、広告企画部門へ異動しました。現在でいうリテールメディアの領域で、広告商品の企画や開発にも携わりました。ヤフーには社内異動の文化があり、一つの会社にいながらさまざまな挑戦ができます。今振り返ると、それも自分に合っていたのだと思います。同じことを続けるより、新しいことに挑戦し続けたいという価値観があったからです。

「面白い人に囲まれていたい」――YJキャピタルへの挑戦

――どのようなきっかけでVC(ベンチャーキャピタル)の世界に入られたのでしょうか。

実はヤフーにいた頃、転職も考えていました。理由は非常にシンプルで、「経営者と働きたい」「面白い人に囲まれたい」「わからないことに囲まれたい」という三つの思いがあったからです。そんな中で、社内にベンチャーキャピタル部門があることを知りました。話を聞いてみると、自分が求めていた環境と非常に近いと感じました。

実際に異動してみると、本当に面白い仕事でした。起業家は皆、世の中を良くしたい、難しい課題を解決したいという強い思いを持っていると思います。そうした人たちと会い、議論し、挑戦を支援すること自体が刺激的でした。仕事という感覚よりも、面白い人たちと一緒に新しいことを考えている感覚に近かったかもしれません。今後、仮に働く必要がなくなったとしても、この仕事は続けたいと思うほど魅力を感じています。

――その後、独立されたのですね。

独立した最大の理由は、「主語を上げたい」と考えたことです。CVC(Corporate Venture Capital)の場合、当然ながら自社のために投資を行います。それは当たり前のことです。一方で私は、流通・小売業界全体を主語にして考えたいと思うようになりました。スタートアップにとっては、一社だけとつながるよりも、さまざまな企業とつながれた方が成長につながります。また、多くの事業会社はスタートアップとの連携に関心があっても、どのように進めればよいのかわからないケースも少なくありません。その両者をつなぐ存在が必要ではないかと考えました。

スタートアップと事業会社の間に立ち、業界全体のイノベーションを増やしていく。その役割を担いたいと思い、独立を決断しました。現在は流通・小売業界に特化したベンチャーキャピタルとして活動しながら、投資だけでなく、スタートアップ支援やオープンイノベーション支援にも取り組んでいます。

イノベーションアカデミーが目指すもの

――オムニチャネル協会に参加されたきっかけを教えてください。

きっかけは、理事を務める林さんからお声がけいただいたことでした。協会としてスタートアップとの取り組みを強化していきたいという話があり、その中で参画することになりました。私自身、独立した背景に「業界を主語にしたい」という思いがありましたので、とても面白そうだと感じました。また、会長の鈴木さんや理事の逸見さんをはじめ、業界の第一線で活躍されている方々と継続的に議論できることも大きな魅力でした。

協会の活動は、自社の利益を追求する場ではなく、業界全体の未来を考える場です。その考え方は自分の価値観とも非常に近いと感じています。

――最後に、現在取り組まれているイノベーションアカデミーについて教えてください。

イノベーションアカデミーは、新しいことに挑戦したい人たちが学び、つながる場だと考えています。リーダーである鈴木さんは起業家としても大企業の経営者としても経験がありますし、サブリーダーである川邊さんは事業会社での経験があります。私はVCとして、多くの成功事例や失敗事例を見てきました。

それぞれ立場や経験は異なりますが、だからこそ面白いと思っています。先日開催した第1回イノベーションアカデミーでも、同じテーマについて議論しているにもかかわらず、三人の講師はそれぞれ異なる視点から意見を述べていました。さらに参加者からの質問も加わることで、多様な価値観が交わる非常に刺激的な場になったと感じています。また、印象的だったのは交流会です。イノベーションは一人で生まれるものではありません。異なる経験や立場の人たちが出会い、対話することで生まれるものです。だからこそ、講義だけでなく、参加者同士がつながる場も大切にしたいと考えています。

スタートアップの方も、大企業で新規事業に挑戦している方も、本質的には同じです。新しい価値を生み出そうとしている人たちが集まり、学び合い、刺激を受ける。そんな場をつくっていきたいと思っています。成長曲線でいうと、できなかったことができるようになる最初の立ち上がりの部分が一番面白い。だから同じことをやり続けるよりも、新しいことに挑戦している状態が好きなのだと思います。

協会やイノベーションアカデミーを通じて、業界の中に挑戦する人が増え、その挑戦同士がつながっていく。そうした環境づくりに今後も取り組んでいきたいと考えています。

編集後記:今回のインタビューで印象的だったのは、大久保さんが何度も語られていた「面白い人に囲まれたい」「わからないことに囲まれたい」という言葉でした。キャリアを振り返ると、気象学の研究からヤフー、ベンチャーキャピタル、そして独立へと、一見すると一貫性のない挑戦にも見えます。しかし、その根底には常に「新しいことに挑戦したい」という姿勢がありました。

多くの人は、わからないことを避けようとします。失敗したくない、不安だから現状維持を選ぶ。けれど大久保さんは、むしろわからないことの中に飛び込み、そこで学び、成長することを楽しんでいるように感じました。

インタビューの中で、「できなかったことができるようになる最初の立ち上がりが一番面白い」という言葉がありました。イノベーションというと特別な才能や大きな発明を思い浮かべがちですが、その本質は新しいことに挑戦し続ける姿勢にあるのかもしれません。変化の激しい時代だからこそ、答えのある場所ではなく、まだ答えのない場所に価値が生まれる。今回のお話は、そんなことを改めて考えさせてくれる時間でした。

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