米SAS Institute Inc.は2024年11月14日、アジア太平洋地域(APAC)におけるAIの導入状況とトレンドを分析するための調査を実施し、その結果を発表しました。この調査はIDCに委託され、2024年6月にAPACの8か国(オーストラリア、中国、インド、日本、韓国、マレーシア、シンガポール、タイ)の509の企業幹部を対象に実施されました。調査は銀行・金融、製造業、政府、ヘルスケアなど複数の業界を対象とし、AIへの投資意思決定、期待される役割、導入時の課題、信頼できるAIの実現に向けたプロセス管理などが評価されています。
調査によると、APAC地域ではAIへの投資が急速に拡大しており、回答者の43%が今後12か月以内にAI投資を20%以上増加させる計画を立てています。しかし、AI先駆者(AI Pioneers)とフォロワー(AI Followers)間のギャップが顕著であり、AI先駆者が長期的な変革を重視する一方、フォロワーは短期的な成果に焦点を当てる傾向があることが明らかになりました。AI先駆者の18%は新たな収益の創出(32%)、運用効率の向上(31%)、利益増加(26%)を主な成果として挙げています。一方でフォロワーは顧客サービスの改善(27%)、市場シェア拡大(25%)、迅速な市場投入(25%)を目標としていることが調査で示されています。
APAC全体で、AI投資の効果に対する期待が過剰であることも課題として挙げられています。調査対象企業の40%が少なくとも3倍の投資対効果を期待していますが、計画や基盤の整備が不十分なまま導入が進むことで、失望感が生まれるリスクもあります。生成AIの分野では、2023年にはAI全体の投資割合の19%を占めていましたが、2024年には34%に増加すると予測されています。また、企業の多くが既存のインフラやアプリケーション刷新の予算を生成AIへ再配分する計画を立てており、AI技術のバランスの取れた発展が期待されています。
日本においては、AIガバナンスを重視する慎重な姿勢が見られますが、2024年には46%の企業がAI投資を拡大する計画を持っています。一方で、AIに特化した人材不足(42%)や、ソリューションの評価基準の欠如(30%)、包括的なAIガバナンスの不足(29%)が導入の課題として挙げられています。日本企業はAIの運用効率向上や革新推進を目的とした導入を進めていますが、ガバナンスとスキル不足の課題を克服することが必要です。
調査結果は、AIの導入と実用化を進める上での障壁を明確にし、企業が効果的な投資を行うための重要な洞察を提供しています。特に、AI基盤の整備、戦略的なユースケースの構築、人材のスキル向上が鍵となります。SASはこの調査結果をもとに、APAC地域の企業がAIの潜在能力を最大限に引き出し、持続可能な成長を実現するための支援を進めていきます。
【関連リンク】
SAS Institute Japan株式会社
https://www.sas.com/ja_jp/home.html
プレスリリース
https://www.sas.com/ja_jp/news/press-releases/2024/november/data-and-ai-pulse-asia-pacific.html
執筆:DXマガジン編集部