寄稿・連載

    2021.09.08

    【DXスタートアップ革命 第5回】花屋と生産者をマッチングするプラットフォームで、鮮度ある花を直接仕入れられる流通網を構築

    DXで事業を創出、もしくは事業を拡大した企業はどんな点に気を付け、成功へと突き進んだのか。第5回は、花を流通させるプラットフォームを展開するCAVIN。業界の課題にどう切り込み、DXをどう進めていったのか。同社の取り組みを紹介します。なお、本連載は日本経済新聞出版「DXスタートアップ革命」の内容をもとに編集しております。

     花の生産者の想いを花屋に運びたい――。こうした思いのもと、花屋が花を直接仕入れられるプラットフォームの運営に乗り出したのがCAVINです。福岡を中心にサービスを展開する同社は、新たな花き流通のあり方を提起し、業界に根付く課題解消を目指します。

     これまでの花きの流通にはさまざまな問題がありました。例えば、生産者と花屋の中間には市場と卸があり、そこがブラックボックス化しています。寒い中、雪を落として育てた花が、競りで1本20円の値がついて売れて終わりという世界。生産者は自分が育てた花がどう評価されたのかを聞く機会もありません。経済損失が年間1200億円 にもなるフラワーロスの問題もあります。店頭で花が枯れれば廃棄になるものの、具体的な対策を講じられない問題もあります。

     そこでCAVINは、これらの課題を解決するプラットフォームを提供します。仕組みはシンプルで、花屋がCAVINのサイトで「田中さんのユリを10本」と注文するだけ。あとはCAVINと提携する物流業者が生産者に花を引き取りに行き、注文主である花屋に直接届けます。代表取締役社長 CEOのYuya Roy Komatsu氏は、「生産者の名前が花の価値を裏付ける花業界で、有名な生産者の花でなければ仕入れないという花屋のニーズを満たせる。加えて直接配送なので花の鮮度も良い」とメリットを強調します。

     プラットフォームを利用すると、花屋は欲しい花を直接仕入れることができます。生産者から花屋に花が届く日数も、従来より最短でも3日間短縮します。従来の流通構造であれば、さらにここに中間業者が冷蔵庫で保管する期間も加わるため、鮮度はどうしても低下しがちでした。しかし産直仕入れの場合、その保管日数も削減できます。

     同社では、花屋の声を生産者に届けることにも取り組みます。生産者は、育てた花がどう評価されているのかを知ることで、花屋のニーズに応じた花の開発・生産に注力できるようになります。生産者側が販売価格を自由に決められるため、ニーズを取り込むことが売上アップにもつながります。

     同社は今後、海外展開も視野に入れます。国内外を問わずエリアを拡大する計画を模索し、香港やシンガポールでの展開を進めます。Yuya Roy Komatsu氏は、「花は説明なしに喜ばれるプロダクト。今のデジタルまみれの子供たちに夢を与えたい」とビジョンを描きます。
    Information
    企業/団体名 株式会社CAVIN
    所在地 福岡県福岡市
    事業内容 花き生産者と花屋をつなぐプラットフォームの運営
    取り組む課題 世界中の花業界をアップデートし、花によって運ばれる“気持ち”を増やしたい
    解決策 花屋が生産者から花を直接仕入れられるプラットフォームを開発・提供する
    本連載は、日本経済新聞出版刊行の「DXスタートアップ革命」の内容を一部編集したものです。
    日本経済新聞出版「DXスタートアップ革命」(守屋実監修)
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    筆者プロフィール
    守屋実
    1992年、ミスミ入社、新規事業開発に従事。2002年、新規事業の専門会社エムアウトをミスミ創業者の田口弘氏と創業、複数事業の立ち上げと売却を実施。2010年、株式会社守屋実事務所を設立。新規事業創出の専門家として活動。ラクスル、ケアプロの立ち上げに参画、副社長を歴任後、ジーンクエスト(ユーグレナグループ)、プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会、サウンドファン、ブティックス、SEEDATA(博報堂グループ)、AuB、みらい創造機構、ミーミル(Uzabase グループ)、JCC、テックフィード、キャディ、セルムなど数々の企業の役員、理事などを歴任。JR東日本スタートアップのアドバイザー、JAXA上席プロデューサー、博報堂フェロー、内閣府の有識者委員などを務める。2018年にブティックス、ラクスルを2カ月連続で上場に導く。著書に『新しい一歩を踏み出そう! 』(ダイヤモンド社)。近著は『起業は意志が10 割』(講談社)。
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