寄稿・連載

    2021.09.27

    【DX時代を生き抜く文章術 第6回】ファクトと数字の大切さ(1)…ファクトとは

    新規事業を成功させるためには、周囲を巻き込み賛同を得られる企画書や資料のクオリティこそが重要。「意味が分からない」「理解しにくい」という文章を並べるだけでは事業推進すらままなりません。では簡潔で要領を得た文章で「伝える」ためにはどんな工夫が必要か。本連載ではビジネスの基本である「文章」で伝えるためのポイントを紹介します。なお、本連載は「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」(CCCメディアハウス)の内容をもとに編集しております。

     読んで決断してもらうための文章の代表例が企画書や提案書です。決断してもらうために説得力や納得感を高める手法としては、これまで述べてきた簡潔さが第一。伝えたいことを盛り込みすぎると内容が伝わりにくくなるので、まずは整理が必要です。絶えずゴールを明確に意識しましょう。

     どのビジネス文章も、基本的には「誰かに何かをしてもらう」ために書かれます。読む人の具体的なアクションを引き出すのが目的です。それを意識せずになんとなく書いたり、書くこと自体が目的になっていたりすると、誰にも響かない文章になってしまいます。

     「誰に何をしてもらうのか」を常に自問自答しながら書くことが大切です。

     共感してもらうための前提になるのが納得感です。文章やプレゼンテーションの内容に納得のいく情報が入っているかどうか。それがカギを握ります。

     納得がいく情報とは、「ファクト(客観的事実、事実関係)」にほかなりません。ファクトとデータ(数字)は切り離せないものです。「人出が多い」という場合、1000人とか300人とか具体的な数字を挙げ、前の年に比べて50%増えたなどと表現した方が、読者もイメージがつかめます。

     コロナ禍で急速に普及したテレワーク環境にあって、より重要になっているのが、数字を用いた資料です。リモート会議において口頭で長々と話をしても納得感は醸成できません。短時間で、客観的な数字を含めて相手の心に刺さる説明ができるかがポイントです。

     ファクト(Fact)とは、「実際にあったこと、事実」という意味です。理想や噂、作り話ではなく、事実に基づいたもの。合理的で主観が入り込む余地がなく、「データ」にほかならないという研究者もいます。

     ビジネスの世界では、業務上で扱われる事象やデータにおいて、事実に基づいているか確証がとれたものがファクトになります。

     どんな人にも、その人なりの価値観が存在します。けれども客観的事実は個々の考えの違いに左右されにくいといえます。事実関係や問題点を認識する上で共通の基盤になるのがファクト。それがあるから議論ができるのです。

     ファクトに基づいた資料とは「根拠のある資料」です。取引先や上司などから資料を求められた際は「根拠のある事実」を用意しなければなりません。一般に、強い根拠=ファクトとは、数字やデータ、出所がはっきりした調査結果、公的機関や専門家が保証した資料や発言など。こうした確かな根拠を提示できれば、自説に説得力を持たせることができます。

     論理的な思考には、ファクトが必要不可欠です。先入観や主観を捨てて、事実を見つめて判断する習慣をつけたいものです。

     一般的な言葉としても浸透しつつある「ファクト」は、物事を伝える上で重要な要素です。

     文章で大切なのは、まずは「主張(結論)」があるかです。何を伝えたいのかわからない企画書は意味をなしません。ただし、「こうしたい」「こうするべきだ」と主張しても、それを支えるファクトがなければ信頼性に欠けるものになってしまいます。ファクトとは客観的事実です。誰もが納得する事例やデータのことです。誰もが納得し、説得材料となるファクトとしては、政府や国際機関の統計データ、一定の母数が確保されたアンケート調査、識者らの論文・コメントなどが代表的です。

     当然、それを探してくるリテラシー(能力)やノウハウが必要になるわけです。ただ、インターネット時代はわざわざ国会図書館など大きな図書館や資料センターに行く手間をなくしてくれました。
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    本連載は、CCCメディアハウス刊行の「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」の内容を一部編集したものです。
    CCCメディアハウス「即!ビジネスで使える 新聞記者式伝わる文章術」(白鳥和生著)
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    筆者プロフィール
    白鳥和生
    株式会社日本経済新聞社 編集 総合編集センター 調査グループ次長。
    明治学院大学国際学部卒業後、1990年に日本経済新聞社に入社。編集局記者として小売り、卸・物流、外食、食品メーカー、流通政策の取材を担当した。「日経MJ」デスクを経て、2014年調査部次長、2021年から現職。著書(いずれも共著)に「ようこそ小売業の世界へ」(商業界)「2050年 超高齢社会のコミュニティ構想」(岩波書店)「流通と小売経営」(創成社)などがある。日本大学大学院総合社会情報研究科でCSRも研究し、2020年に博士(総合社会文化)の学位を取得。消費生活アドバイザー資格を持つほか、國學院大学経済学部非常勤講師(現代ビジネス、マーケティング)、日本フードサービス学会理事なども務める。
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