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新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、消費者の「デジタル化」が加速しています。企業はそんな中でも消費者を正しく理解し、消費者のニーズを満たす製品・サービスを提供することが求められます。では、デジタル化によって見えにくくなった消費者の行動をどう把握し、事業や利益拡大に結実させるのか。このとき考える指標の1つが、顧客起点で売り上げや利益を拡大させる「顧客勘定」です。【DX時代に求められる“顧客勘定マーケティング”を極めよ 第4回】は、顧客勘定マーケティングを実践するときの考え方、ポイントを紹介します。なお、本連載は日経BPマーケティング「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」の内容をもとに編集しております。

 第1回、第2回、第3回と続けてきた本連載。これまで「顧客勘定マーケティング」が生まれた背景や必要性について触れてきました。第4回となる今回は、「顧客勘定マーケティング」を進めるためのコツを紹介します。   まず前提として、あらゆるプロジェクトにおいて重要なことは「ゴールの明確化」と「ゴールのメンバー周知」です。顧客勘定マーケティングでも当然、これらが重要です。 例えば、本連載を読む読者の皆様が、自社で「よし! うちの会社でも“顧客勘定マーケティング”を推進しよう!」と「言い出しっぺ」になったとします。その際は最初に次のことを必ず宣言してください。 売上高をいくら達成するためには、1客単価いくらのお客様が何人必要であるか  これがゴールです。次にゴールにたどり着くための具体策として、「どんなお客様を何人“維持”するのか」、「どんなお客様を何人“育成”するのか」、「どんなお客様を何人“獲得”するのか」などを考えます。これらを「数式」と「イメージ」の双方で示せるようにしてください。これがゴールを他のスタッフなどと共有するための「共通言語」になります。  顧客勘定マーケティングでは、ゴールを目指すための具体策を、多くの関係者が理解できるようにすることが大切です。そのためには「数式」を使って必要な人数や売上などを示せるようにするとともに、その数式がどんな意味を持つのかを「イメージ」しておくようにします。  物事を多面的に見ることも重要です。例えば、売上高を商品だけで見ようとすると、「昨年100個売れたものを本年は120個売ろう」などと考えてしまいがちです。これで売れれば問題ありませんが、これでは“10トンの石を1本のクレーンで持ち上げようとしている”ようなものです。  「商品」に限らず、売上高を多面的に見ることが大切です。特に顧客の維持、育成、獲得という視点で見ることが必要です。これらは売上高を構築していく上でクレーンの数を増やすことに似ています。達成したい数字を多面的に分解していくことでゴールの達成度は格段に上がります。  また、大きな成果を生み出すためには「文化と風土」の構築も不可欠です。  ちなみに「文化と風土」とは何でしょうか。筆者はこれを「ある特定の時間と場所に共通する考え方と行動様式」と定義しています。「当事者意識を持つ」「小さなリスクを取り続ける」「他者に敬意を持つ」など。組織としての実行力を上げるためには「文化と風土」の構築が非常に重要です。  変革を進めるやり方として「変革移行管理」という手法があります。「変革移行管理」は英語で「チェンジマネジメント」と言います。筆者が在籍していたプライスウォーターハウスで学んだ理論ですが、他のコンサルティングファームでもほぼ同様のコンセプトで方法論を展開していると思います。簡単に要約すると、ヒトが動く順番は「頭での理解」「心での納得」その後で「身体が動く」というものです。  「頭での理解」とは「必要性については理解している」という状態です。個別の論理より「会社全体」「組織全体」として、その変革を推進した方がよいのだろう、と論理的に「理解」した状態です。しかしながらこの状態だけでは、まだ人は動いてくれません。  一方、「心での納得」とは「自分にとってよいことなのか、という観点で受け入れている」という状態です。全体の論理より「自分という個の存在」にとってよいことなのか、もっと言えば「得なこと」なのか。これをエモーショナルな部分も含めて許容する段階です。全体にとっての得策と、個人にとっての得策を、極力矛盾のない状態まで持っていくことが変革にとって重要です。  「頭の理解」「心での納得」の段階を通過すると、勉強する、練習する、実行する、という段階に移ることができます。これによって「身体が動く」という状態を構築できるわけです。「頭」「心」「身体」、この3つに矛盾がない状態を構築していくことが「変革移行管理(チェンジマネジメント)」の理想形です。  「顧客勘定マーケティング」の推進は、多くの企業にとって新しい概念を持ち込んだプロジェクトになります。このプロジェクトを推進するためには、他の関係者にその意義を頭で理解していただき、心で納得していただき、実際に企画立案、実行に動いてくれる、このような文化、風土を構築する必要があります。
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本連載は、日経BPマーケティング刊行の「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」の内容をもとに、筆者が一部編集したものです。
日経BPマーケティング「売り上げを倍増させる“顧客勘定”マーケティング “赤字顧客”を黒字に変える実践手法」
筆者プロフィール
前田徹哉
慶應義塾大学文学部卒業後、西武百貨店(現そごう・西武)入社。その後PwCコンサルタント(現日本IBM)にて主にB2C領域のマーケティング戦略立案などのコンサルティングに従事した後、スクウェア・エニックスに入社。オンライン事業部長としてECやコミュニティを統括。2011年10月にタワーレコード入社、オンライン事業本部 本部長としてECの統括の任に従事。2019年4月にビービットに入社。SaaSセールスのシニアマネジャーを経て、2021年1月より「QuizKnock」を運営する株式会社batonに参画、マーケティング部 部長。中小企業診断士。

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