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コラム

日本の国際競争力が下がり続ける真の理由は何か?

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日本の国際競争力は必ずしも高くない。こう結論づける調査結果が先日、発表されました。国際競争力が弱まり続ける理由は何か。さらに、日本企業が国際競争力を養うには何に目を向けるべきか。日本企業が効率性を高められない要因と、国際競争力を養うための従業員の姿勢について考えます。【週刊SUZUKI #22】

 日本の国際競争力は64カ国中35位――。スイスのビジネススクール「IMD(国際経営開発研究所)」は2023年6月20日、こんな調査結果を発表しました。日本の35位は調査を開始して以来、過去最低の順位です。1位のデンマークのスコアを100.00とすると日本のスコアは67.84で、大きく引き離される結果となりました。

本調査は、「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」といった4項目をもとに各国の国際競争力をスコア化しています。日本は4年前の2019年と比べると、すべての項目で順位を下げています(図1)。

図1:日本の国際競争力ランキング(直近5年)

図1:日本の国際競争力ランキング(直近5年)

 特に「ビジネスの効率性」は64カ国中47位。2020年(55位)や2022年(51位)と比べれば回復の兆しが見られるものの、状況は大きく改善していません。中でも「生産性・効率性」や「経営プラクティス」といった項目の順位がとりわけ低く、日本企業の事業の効率性は低いと言わざるを得ません。

ビジネスの効率性がなぜ向上しないのでしょうか。一番の理由は、DXの「X」、つまり変革に取り組めずにいる点です。日本企業の多くがDXの必要性を認識しています。にもかかわらず、実際に取り組むのはシステム導入ばかり。DXの「D」にとどまっているのです。「システムを導入するのがDX」と誤認するケースは今なお多く、DXの本質を正しく理解しないことが、ビジネスを非効率のままにしていると考えられます。

IT製品やサービスを提供する事業者側にも問題があります。システムを開発する必要性のみを提案し、システムを使って事業をどう変革させるのかといった価値まで提案できずにいます。DXの「X」の必要性に踏み込むことなく、「D」の必要性のみを訴求し続けているのです。その結果、システムを導入すること自体を目的とする企業が増えているのです。

変革まで踏み込むために必要なのは、人の意識です。システムを活用して事業を見直そう、新たしい事業を創出しよう、などと追求する姿勢が不可欠です。さらに、全従業員がこうした意識を持たなくてはなりません。「誰かがやるだろう」と他人事に捉えず、自分事として変革に向き合うべきです。全員が一歩を踏み出すことが、自社の風土を変えるのです。自社を変革という未踏の領域へ導くきっかけとなるのです。

システムに限れば、全従業員が一歩を踏み出す素地が整いつつあります。ITが苦手だった人でも、システムを容易に使えるようになっています。システムを駆使し、誰でも作業や業務を効率化できるようになっているのです。こうした素地を育んでいるのが「ノーコード」です。プログラミングの知識なしにアプリケーションを開発できる環境は、業務に携わる現場主導のシステム開発を可能にします。誰よりも業務に精通する現場のスタッフが、自身の業務を支援するアプリケーションを開発できるのです。こうしたトレンドを積極的に取り入れることで、効率性を追求しやすくなります。「他人事」だったシステム開発も、「自分事」として受け入れられるようになるのです。

旧来の業務のあり方を見直して生産性や効率性を高めるのは、情報システム部の役割ではありません。経営企画部でもありません。業務を隅々まで理解する現場のスタッフ一人ひとりに課せられた役割です。多くの企業が経営者主導でDXに取り組んでいます。しかし、「自分がやらなければ」という現場一人ひとりの使命感なしにDXは成功しません。この一体感が自社に変革をもたらし、引いては競争力を高めるのです。従業員一人ひとりが変革への意識を強く持つことこそが、自社の競争力の源泉となるのです。

筆者プロフィール

筆者プロフィール

鈴木 康弘
株式会社デジタルシフトウェーブ
代表取締役社長
1987年富士通に入社。SEとしてシステム開発・顧客サポートに従事。96年ソフトバンクに移り、営業、新規事業企画に携わる。 99年ネット書籍販売会社、イー・ショッピング・ブックス(現セブンネットショッピング)を設立し、代表取締役社長就任。 2006年セブン&アイHLDGS.グループ傘下に入る。14年セブン&アイHLDGS.執行役員CIO就任。 グループオムニチャネル戦略のリーダーを務める。15年同社取締役執行役員CIO就任。 16年同社を退社し、17年デジタルシフトウェーブを設立。同社代表取締役社長に就任。 デジタルシフトを目指す企業の支援を実施している。SBIホールディングス社外役員、日本オムニチャネル協会 会長、学校法人電子学園 情報経営イノベーション専門職大学 客員教授を兼任
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